トイレによくある、こんな注意書きの賛否両論
これは男子トイレの「一歩前へ」の注意書き。ここでもムダにカッコいい背中にお礼されてます。
トイレに入ったとき、個室の壁にはられた、こんな注意書きにハッとすることはないだろうか。
「いつもきれいにお使いいただき、ありがとうございます」

初めて入ったトイレの場合、当然自分が「いつもきれいに」してるわけではなく、とりわけ自分個人に対するメッセージのはずもない。

また、何も言われなくとも、きれいに使うのは当然のことであっても、先手を打って「ありがとうございます」と言われてしまうと、ますます適当な使い方はできないな、と思う。

なるほど、「きれいにお使いください」と直接的に指示するより、丁寧な言い方だと思うし、先に「ありがとう」と言ってしまうほうが、やんわりと相手にプレッシャーを与え、効果的な気もする。だから、個人的には「うまい言い方だな」と思っていた。
ところが、コレ、身のまわりの人たちに聞いてみると、「遠回しに強制されるようで、むしろイヤ」「ちょっと嫌味な感じがする」「きれいに使ってと言われるより、威圧的(高圧的)」なんていう意見もあり、ネットなどで調べてみても、こうした表現を嫌う声はけっこう見られた。

では、この先手を打つ「ありがとうございます」手法を用いている側の心理や、効果はどうなのか。
まずこの張り紙をトイレにしている、近所のコンビニに聞いてみると、
「きれいにお使いくださいと言うよりも、丁寧な言い方として、そうしています。
実際、効果に違いがあるかはわかりません」
とのこと。

また、都営新宿線のある駅では、
「日ごろご利用いただいている皆さんに、感謝としてそう記しています。強制とか、そういった意味合いはないですよ(苦笑)」
と、駅員さんが説明してくれた。
案外、計算があっての言葉選びではないのか……。

だが、JRのある駅ビル清掃の人に聞いてみると、
「やはり『ありがとうございます』と書かれていると、それなりに意識してくださる方が多いのか、汚れ方は少ない気がしますね。はっきりと効果とは言えませんけど」
と言っていた。

もし、言い方一つで、注意の仕方がかわってくることがあるとしたら、やってみる価値はありそうだ。

ただし、買い物をしないのに、店を出る際、「ありがとうございました」と大きな声で言われると、どことなく気まずい思いをするのと同じで、「ありがとうございました」に対して、感情的な部分で賛否両論があるのは、仕方のないこと。感じ方は人それぞれ、単純にどちらが良いとは言い切れないと思いました。
(田幸和歌子)