やっぱりホテルのタオルは持ち帰ってはいけないのだ
魅惑のホテルロゴ付きタオルとバスローブ。持ち帰らないよう注意書きが……
以前日本に遊びに来た外国人の友人を日本旅館に泊まらせた際、タオルは持ち帰っていいのだよと教えてあげたら、すごく喜んでいた。
旅館の名前が印刷されているのが格好いいんだそうだ。


基本的に日本だろうとアメリカだろうと、ホテルの消耗品以外は持ち帰ってはいけない。時々使い捨てのスリッパをくれる所があるが、タオルやバスローブはもちろん、備え付けの寝具や目覚まし時計、コーヒーメーカー、テレビもアンタッチャブルだ。

最近はフロントでクレジットカードの提示を求められるので、ほんのいたずら心で失敬しても、後で莫大な請求がチャージされかねないので、ご注意。

しかしそれでも、タオルくらい……って、持ち帰る人は結構いるらしい。
まだ旅行が庶民の夢だった時代、旅先で泊まったホテルのロゴの入ったタオルは、一種のエンブレムのように思われていたそうだ。未だにその庶民感覚が引き継がれているのだろう。アメリカでは、ホテルのタオルの持ち帰りを「borrow 借りる」と言い訳する。

そのことで、あるアメリカ人の友人は、とんでもない経験をしたことがある。

20年くらい前、スペインに旅行中、アメリカ人旅行者がよく泊まるホテルに滞在した時の話。

「いよいよ帰国する日、チェックアウトを済ませて、ロビーでコーヒーを飲んでいたら、突然、ホテル中に響き渡るような大音響で、たどたどしい英語のスピーチが流れ出した」

「『うちのホテルは、ホリデイ・インではありません。鞄の中のタオルを直ちにお返しください。さもないと警察を呼びます。
うちはホリデイ・インではありません!』」

「すると本当に警官が表れ、次々とアメリカ人旅行者たちのスーツケースを開けさせ、その中からタオルを引っ張りだしていった。タオルはみるみる間にうずたかく積まれ、人の高さくらいの真っ白な山がいくつも出来上がっていった」

「あの時初めて知ったよ。タオルは持ち帰ってはいけないんだってこと」

アメリカの最大手ホテルチェーンの一つ、ホリデイ・インの過去52年の調査では、実に宿泊客の内5人に1人が、ホテルのロゴの入ったタオルを「借りて」いたらしい。その数や、すごいもんだろうね。

ところがさすが老舗の貫禄、そんなことでごちゃごちゃ言わない。ホリデイ・インは、数年前こんな広告を出した。

「タオルをお持ち帰りのお客様、我々はそれを責めません」

そしてホリデイ・インのタオルにまつわる話を募集して本にし、その売り上げを病気の子供たちをサポートするNPO団体に寄付した。言うまでもなく、ホテルの好感度は上がった。

でもやっぱり借りてっちゃだめですよ。
(チン・ペーペー)
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