『ポールのミラクル大作戦』がいま静かなブーム!?
今見ると、けっこう「刺激的な」名作です。
伝説的アニメ『ヤッターマン』の復活が話題になっているが、当時のこれの前番組、同じくタツノコプロの『タイムボカン』(1975年)とほぼ同時期の作品で、いま一部で静かなブームを呼んでいる作品がある。
『ポールのミラクル大作戦』(1976年)だ。


自分などは、未就学児の頃に観たせいもあり、『ガンバの冒険』(1975年)の白イタチ・ノロイとともに、後々にトラウマになるほどの恐怖・衝撃を受けた作品なのだが、近年、カートゥーンネットワークで放送されたり、DVDになって、一部で静かなブームを巻き起こしているらしい。

何が怖いって、異世界への扉が開くときの、デレレレデレレレ〜♪という半音ずつ下がっていく不気味な音楽と、タイムボカンシリーズで取り入れられたグニャグニャの映像「スキャニメイト」。
なぜか少女・ニーナを自分の世界に連れ去って、全然かえしてくれない、真っ赤な目に青い巨体の「魔王・ベルトサタン」の存在。
主人公・ポールが飛び込む不思議な世界の数々は、色とりどりの鮮やかな景色でありながら、ポールの住むまちは「世界名作劇場」を思わせるのどかな景色とゆるやかな音楽に包まれているというギャップ感がある。
シリアスとコミカル、恐怖とのどかさが混沌としているのだ。

というわけで、DVD全6巻を借りて、娘や姪・甥などのいまどきの小学生たちに見せてみたところ、これが意外にも大ウケだった。
まず、彼らのツボに入ったのは、ポールの仲間の犬・ドッペが、顔も声も(目玉おやじの声!)あまりにおじさんくさくて、可愛くないこと! 
さらに、不思議な世界の妖精・パックンの道具の名前がオープニングで歌われるが、それは「オカルトオカルトハンマー♪」というキョーレツさ。
ちなみに、主人公・ポールの声は、「サザエさん」の中島くんというのも、子ども的には大ウケのポイントだった。

さらに、いま冷静に観てみると、眠れないほど怖かったベルトサタンが、ニーナを連れ去った目的がまったくわからない。
特に愛でるでも、大切にするでもなく、岩穴に放置したりという扱い。なのに、ポールが近くに来たことだけはいつでもどこでも敏感に察知し、「ポールめ〜!」と嬉々として襲ってくるのである。
もしかして、ニーナをとらえたのは、ポールをおびき寄せるためだけ? と穿った見方すらしたくなるほどに。


基本、ポールが不思議な世界に行く→ニーナを連れ戻そうとするが失敗、という繰り返しを延々と続けるこの作品。だが、17話で、ベルトサタンが弱点の角をヨーヨーで折られ、ニーナをポールに連れ戻された後は、力が出ないらしく、その後、ずっと座りっぱなしだったという「しょんぼり」っぷりも、泣けてくる。

ところで、作品そのものも実におおらかなのだが、さらにおおらかなのは、DVDの作り方! 予告と内容が合ってなかったり、3巻で完結してしまった後、フツウに4〜6巻で過去の話に戻っていたり……。

敵キャラの濃い独特なデザインも、タツノコプロならではで、味わい深い。
『ヤッターマン』に夢中の方、ぜひ『ポール』のほうも、チェックしてみてください。
(田幸和歌子)

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