キビシイ冬の寒さが生んだ郷土食、「氷餅」って?
(上)氷餅。意外にそのまま食べてもイケる。<br>(下)お湯で戻して食べる場合、甘みがないと少し物足りない
先日、長野を訪れたとき「氷餅」なるものを見つけた。実はこれ、安曇野・松本・諏訪あたりを中心とした信州の名物らしいのだが、私も目にしたのは初めて。


氷餅とは、冬のあいだ水をかけた餅を外につるして凍らせ、カラカラになるまで乾燥させたもの。できあがるまでの期間は冬の寒さによって異なるが、お正月明けから春のお彼岸前後までつるしておくことが多いよう。

地元のお土産屋さんでも、3月終わりごろから氷餅を販売するところがある。ただし数も限られており、なくなり次第終了なので、お目にかかる機会は少ない。民宿などでは郷土食として出しているところもあるそうだ。

以前は田舎の家の軒先に餅が並ぶ光景も珍しいものではなかったが、最近ではあまり見かけない。氷餅を売っていたお土産屋さんいわく、
「自分の家で作る人は減りましたね。地元の人も氷餅を買いに来ますよ」
もともとは保存食としてつくられたものだけに、時代と共に状況が変わっていくのも仕方がないことなのだろう。

ところでこのカラカラのお餅、いったいどうやって食べるのか?
「そのままお茶請けとして食べてもよいですが、通常はお湯で戻します」
もちろん餅本来の形に戻るわけではなく、ドロッとした感じになるので、
「砂糖やハチミチで甘さを加えると美味しい」
とのこと。離乳食としても食べられるそうだ。ちなみに味は当然ながらお餅の味そのもの。そのまま食べると、パサパサ口のなかで崩れる食感は昔懐かしいお菓子のよう。


氷餅は「凍み餅(しみもち)」とも呼ばれ、信州だけでなく東北地方など寒い地域で広く作られている。また同様の製法のものに「凍み大根」や「凍み豆腐」などもあり、信州でもこちらの方が知名度が高い。長野市出身の旦那も氷餅こそ知らなかったが、凍み大根はよく食べていたそうだ。

おやき、蕎麦、野沢菜など、素朴な味わいが多い信州名物。それらに比べるとなかなか手に入りにくいものの、みつけたらぜひ一度おためしあれ。
(古屋江美子)
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