<マンシングウェアレディース東海クラシック 最終日◇16日◇新南愛知カントリークラブ 美浜コース(6446ヤード・パー72)>
3打差を逆転し、トータル15アンダーでツアー初優勝を挙げた香妻琴乃。プレーオフに備えて練習していたパッティング練習場で、優勝決定の一報を受けた瞬間、その端正な顔を大きく崩し号泣した。

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その瞬間、娘のゴルフを幼少から見守り、この日会場に駆けつけていた父・尚樹さんの目にも光るものが。「スランプに陥ってから、2年半はかかりましたけど…。でも、こんなに早く…」。そう言って、言葉をつまらせた。
1打リードの単独トップでホールアウトした香妻だったが、後続の選手はアン・ソンジュ、イ・ミニョン(ともに韓国)、岡山絵里新垣比菜と強敵ぞろい。「プレーオフを覚悟というより、プレーオフならいいね」という気持ちで父は戦況をみつめていた。

岡山、ミニョン、新垣が次々とトータル14アンダーでホールアウト。残すは18番をプレーしていたソンジュだけだった。ここでバーディを奪えばプレーオフという場面で、ソンジュのセカンドショットはピン3mの位置に落ちた。結果的に、これを外して香妻の優勝が決まったのだが、「(18番グリーンからの)歓声を聞いた時に最初は、バーディを獲ったと思いました」と今季4勝の実力者との直接対決を覚悟した。しかし直後に外したことを知り、涙がこみあげた。
2014年には優勝争いに度々加わり、初シードを獲得した香妻。
しかしその年の10月に患った腰痛の影響や、同年のスタッツで1位に輝いたパットの不振に襲われたことなどから、その後は成績を落とし続けた。二人三脚、復活の道を模索する日々。ともに飲み明かした日も1日、2日じゃきかないと父は明かす。もっぱら口にするのは「ハイボール」。ようやく美酒を味わう日が訪れた。「私は飲まなくても、父のお酒に付き合うと長いので…」とこぼす香妻も、父との日を思い返し笑みを浮かべた。

また、戦況を鹿児島で見ていたのが母・かおりさん。「もうドキドキでした。『(後続の選手は)みんな1勝しているんだから、今回はうちの娘にお願いします』という心境でした」と手に汗を握りながらの観戦だった。「よかったね。おめでとう、その一言だけです」。今、娘に伝えたい言葉を聞くと、そう答えた。

試合終了後には、弟の陣一朗から母のもとに連絡があったという。来週の国内男子ツアー「アジアパシフィック ダイヤモンドカップゴルフ」出場のため、飛行機で会場入りする際に姉の優勝を知った陣一朗は、到着後電話で母に「よかったねー。うれしくて泣いているよ」と喜びを伝えた。また「姉のことは、戦いの場が違うので特にライバルと意識したことはありません。でも、いざ優勝したと聞かされると、次は自分の番だと、一層やる気にさせられました」とその後コメントも発表。大きな刺激となったようだ。

母は地元で居酒屋を切り盛りしているが、「優勝してから、いつも応援してくださる方達からたくさん連絡が来て、席が埋まりました」と、今夜は主役不在の“祝勝会”が行われることになった。子供2人にさまざまな縁が訪れるようにと『琴陣縁(きんじんえん)』と名付けられた店に、今日は遅くまで明かりが灯ることになりそうだ。(文・間宮輝憲)

■マンシングウェアレディース東海クラシック 最終結果
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