<富士通レディース 最終日◇20日◇東急セブンハンドレッドクラブ(千葉県)◇6675ヤード・パー72>
クールな表情から最後に流した涙が、印象的な優勝劇となった。1打差の2位からスタートしたアマチュアの古江彩佳は、最終日最終組という状況にもラウンド前から「緊張していなかった」と平常心でプレー。
6バーディ・1ボギーの「67」をマークし、トータル17アンダーで、昨年7月「センチュリー21レディス」のクリスティン・ギルマン(米国)以来となるアマチュアでのツアー制覇を果たした。
ラウンド中はクールに、優勝後は笑顔に そして…
最終18番で、ボギーパットを沈め優勝を決めた瞬間。古江はそれまでの淡々とした表情を崩すことなく、ギャラリーからの大歓声にもキャップのつばをチョコンと触って応えるだけ。 「3日間通してボギーなしでいきたかった」と、54ホール目で喫した初ボギーの悔しさもあったが、その姿は堂々としたものでプロと渡り合ったラウンド中の姿そのものだった。
首位スタートの三ヶ島かなに1打ビハインドで始まったラウンドは、まさに “アマチュアらしからぬ”もの。三ヶ島が1番でバーディを奪い、すぐにその差が2打に広がったが、直後の2番ですぐさま10mのバーディパットを沈め、食らいついた。
さらに2オンに成功した7番パー5でもスコアを1つ伸ばすと、伸ばしあぐねていた三ヶ島に追いつき、トップタイに並んだ。
その後も10番のバーディで単独トップに立つと、13番の2m、14番の4mを沈めて、一気に突き放しにかかった。「ここまでの2日間だったら10番のバーディの後、パーが並んでいた気がします。間に連続バーディを獲れたのは、これまでと違ったし、大きかったですね」。17番のパーで、2位と3打差を維持したまま最終ホールに入る時には「普通にいけば優勝できるかな」と勝利を意識したが、そこまでは「(優勝するという)感覚はなかった」と常に冷静さを失わなかった。
最後はグリーン脇で待ち構えていた同級生で、ともにナショナルチームメンバーだった吉田優利、西村優菜、そして1つ下の西郷真央と抱き合ったが、そこでも笑顔。
だが、表情が変わったのはその後の優勝インタビューで、「両親の支えのおかげで…」と感謝を口にした瞬間、涙で言葉を詰まらせた。ここまでゴルフを教えてくれた父・芳浩さん。試合会場に自らがハンドルを握り送ってくれるなどサポートしてくれた母・ひとみさん。その表情を思い浮かべた時、ようやく19歳らしい一面をのぞかせた。
会場に居た母は、ラウンド中には「淡々とプレーしているのに、伝わってしまったら申し訳ない」と込み上げる涙をガマンしながら娘のプレーを見届けたが、このインタビューを聞き「感動しました」と、ついに目頭を拭った。今回、父は会場で優勝を見届けることはなかったが、その思いはきっと伝わったはずだ。

これでプロテストは受けずとも、プロ転向の資格を得た古江。もちろん行使するつもりで、2週後の「樋口久子 三菱電機レディスゴルフトーナメント」が“プロデビュー戦”の舞台となる可能性が高い。「賞金がかかってくるので、まずは予選通過はしたいと思います」。その表情は、すでにプロの自覚が芽生えたキリッとしたものだった。(文・間宮輝憲)


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