<LPGAツアーチャンピオンシップ リコーカップ 最終日◇1日◇宮崎CC(宮崎県)◇6535ヤード・パー72>
鈴木愛の勝率がすごい。2度目の賞金女王を決めた鈴木は、11月に入り怒濤の3連勝を決めるなど、最後の最後まで貫禄を見せつけた。

平均パット1位に輝いた鈴木愛のパッティング練習【動画】
開幕戦でまさかの予選落ち。万全の体調で2017年以来の女王奪還に闘志を燃やしていた矢先のできごとだった。年間5勝を目標に掲げた鈴木は、この時人知れず泣いた。流した涙のぶん、いいことだってある。翌週は地元四国で行われた「ヨコハマタイヤPRGRカップ」で見事に優勝。カムバックを果たすと、6月には連勝、そして8月には日本屈指の難コース小樽を制して早くも4勝目を飾った。

勢いに乗っていたはずだった。どこまで記録を伸ばすか注目が集まるなか、9月半ばに突如として戦線離脱。ゴルファーに多い左手首、親指の故障だった。この時点で、世間の目は全英でセンセーショナルな優勝を果たした渋野日向子に注がれていた。国内最高峰の「日本女子オープン」の会場に、絶対女王のはずの鈴木がいない。体調面、そしてこの時点ではモチベーションが下がっていたと後に明かすことになり、鈴木はメンタル面でも“やられていた”。

「何をやってもうまくいかない」が口癖のようになり、泣き言を吐く。誰よりも練習をしている自負があるからこその言葉だが、そんな危機を脱したのは1カ月間の休養だった。「休むのがこわい」から「ゴルフができることのありがたみが分かった」。そして体も心も、気力も全てが充実してツアーに復帰。初戦は予選落ちとなったが、その後は米ツアーの「TOTOジャパンクラシック」を含む3連勝。当初目標にたてた5勝を大きく上回る年間7勝まで伸ばし、そのまま逃げ切って頂点に立った。

海外メジャー3試合に出場し、思いも寄らぬ長期離脱を余儀なくされた19年。それを表すように鈴木は今季25試合にしか出場していない。全39試合のおよそ64%。そのなかで7勝は、3.5試合に1回は勝っているという計算。これについては、「そんなに優勝している実感はない」としたが、これは驚異的な数字だ。
過去10年を見ても、賞金女王に輝いている選手の出場試合数に対する勝利数の割合は平均で16.18%。
対して鈴木の今季は28%だ。いかに鈴木の今季の成績がすさまじいものだったか、そして休みがなかったらどうなっていたのだろうと思えるほどの勝率だった。
17年の女王戴冠時は29試合に出場し2勝。ともに高額賞金大会での優勝だったが、今回は当初掲げた5勝をクリア。04年の不動裕理が達成した30.4%という勝率に迫る勢いだった。紆余曲折を経て勝ち取った栄冠。
来年はさらなる記録更新に挑む女王に期待がかかる。
来年は東京五輪出場を視野に入れながら、海外メジャーや海外大会にも今まで以上に目を向けると話す。必然的に国内ツアーの出場は減ることになるが、今年の確率でいけば来年にはツアー通算20勝を軽々とクリアする計算。現時点で16勝の鈴木だが、30勝の永久シードも見えてくるシーズンになる可能性は十分にある。(文・高桑均)
【2000年以降の賞金女王勝率】
2019年 鈴木愛 25試合 7勝(28%)
2018年 アン・ソンジュ 27試合 5勝(18.5%)
2017年 鈴木愛 29試合 2勝(6.9%)
2016年 イ・ボミ 28試合 5勝(17.8%)
2015年 イ・ボミ 32試合 7勝(21.9%)
2014年 アン・ソンジュ 25試合 5勝(20%)
2013年 森田理香子 35試合 4勝(11.4%)
2012年 全美貞 30試合 4勝(13.3%)
2011年 アン・ソンジュ 21試合 4勝(19%)
2010年 アン・ソンジュ 27試合 4勝(14.8%)
2009年 横峯さくら 33試合 6勝(18.2%)
2008年 古閑美保 33試合 4勝(12.1%)
2007年 上田桃子 29試合 5勝(17.2%)
2006年 大山志保 35試合 5勝(14.3%)
2005年 不動裕理 24試合 6勝(25%)
2004年 不動裕理 23試合 7勝(30.4%)
2003年 不動裕理 24試合 10勝(41.7%)
2002年 不動裕理 26試合 4勝(15.4%)
2001年 不動裕理 25試合 4勝(16%)
2000年 不動裕理 27試合 6勝(22.2%)

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