【規格外野菜を買う】消費者と生産者が歩み寄る社会へ|トマト男のサステナブック
日々の暮らしのなかにあるサステナビリティを紹介する特集「サステナブック」。第30回に登場するのは、トマトの廃棄ゼロを目指して“トマト男”を名乗り活動する中村優貴さん。
友人の「もったいない」という一言をきっかけに、廃棄されるトマトの削減に挑むトマト男さんが、規格外野菜の購入について紹介。

【プロフィール】トマト男|中村優貴さん農園とフォーク青果店代表。トマト栽培を行うなかで、熊本県八代市だけでも年間約1,000トン廃棄されている現状に違和感を抱き、その削減に取り組む。奮闘する様子をインスタグラム(@tomato_nouentofork)にて発信している。

正規品と変わらぬ味。規格外野菜の購入

——今回ご紹介いただく商品・サービスについてお聞かせください。

商品やサービスとは異なりますが、なるべく「規格外野菜を買う」という選択肢をご紹介したいです。

私が住む熊本県八代市は農業が盛んな地域なので、農家さんから直接規格外野菜を頂く機会も多いのですが、もちろん自分で購入することもあります。形は正規品と異なりますが、食べ比べても味に違いはほとんどありません。しかも、規格外であることで比較的安く購入できるのも大きな魅力です。

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——トマト男さんは、農家さんから直接頂く以外に、どのようにして規格外野菜を手にしていますか?

ふるさと納税の返礼品として規格外野菜を選ぶことが多いです。ジャガイモなどの野菜のほかに、梨やマスカットといった果物も美味しくいただいています。


そして、農家さん自身が運営するECサイトも便利です。収穫してから店頭に並ぶまで、長いと一週間くらいかかる野菜もありますが、ECサイトから購入すると、収穫から比較的早く届きます。

ECサイトを運営している農家さんは多くいらっしゃいますが、販売が週に1~2件程度だと、運営コストの方が高くついてしまう問題は無視できません。規格外野菜をECサイトで購入することは、農家さんの支援になるだけでなく、価格高騰が続くなかで、消費者の皆さんにもお得に野菜を届けられるというメリットがあります。日々のお買い物の選択肢として、ECサイトでの直接購入も取り入れてもらえたら嬉しいです。

私なりのサステナビリティ

——トマトを廃棄する場面を見た友人の「もったいない」という一言がきっかけで、廃棄トマトの削減に挑戦しているようですが、その言葉がなかったら状況は異なっていたと思いますか?

規格外トマトを廃棄するのは当たり前のことだったので、友人のあの一言がなければ、今のような活動はしていなかったと思います。もちろん「もったいない」という気持ちがまったくなかったわけではありませんが、日常的に捨てることに慣れていた私と、消費者である友人とでは、感覚が大きく異なっていることに気づかされました。

現在はECサイトのほか、こども食堂や飲食店、動物園などと連携し、規格外のトマトをお届けしています。そして、トマトの廃棄を限りなくゼロに近づけるためには、加工品への展開も欠かせません。先ごろ、“世界一青臭くないトマトジュース”が完成したばかりです。

——普段の生活から食品ロスをはじめとした「もったいない」を気にかけていますか?

まず、食卓には廃棄予定だったトマトがたくさん並び、ほぼ毎日のように食べています。おすすめは水を使わずに作るトマトカレー。
市販のルーを使わず、トマトとスパイスのみで仕上げるので、カロリーや脂質も抑えられてヘルシーです!

また、服や身の回りの物も新しい物はほとんど買わず、ボロボロになるまで大切に使い込んでいます。

振り返ってみると、幼い頃から祖母に「物は大事に使いなさい」と言われて育ってきたが、今の暮らし方の土台になっているように思います。だからこそ、友人に廃棄トマトを「もったいない」と言われた時の衝撃が大きく、今の活動につながっているのだと思います。

【規格外野菜を買う】消費者と生産者が歩み寄る社会へ|トマト男のサステナブック
——今後、私たちは食のサステナビリティとどのように向き合うべきだと思いますか?

昨今のお米の問題もそうですが、物価高や気候変動の影響もあり、食べたい物を食べたい時に食べることが難しい時代になってきていると感じます。とはいえ、食品の価格が高騰していても、農家さんの手取りが増えているわけではありません。生産・流通・消費の仕組みそのものを見直す必要があるのではないでしょうか。

実際、食べたい物が買えない消費者と、収入に困る農家さん、両方の姿があります。規格外野菜の流通は非効率かもしれませんが、私はそこに課題解決の糸口があると信じて、トマトの「もったいない」を減らすべく奮闘しているところです。

まず必要なのは、自分たちが口にしている農作物の背景を知ってもらうこと。そのために、私も情報発信には力を入れています。消費者と生産者がお互いの立場を理解し、歩み寄れる世の中になれたらとても嬉しいです。
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