
中堅の工作機械メーカーである高松機械工業<6155>は、自動車部品加工事業から撤退する。採算が厳しく、将来の成長性も見込めないため、早期の撤退を決断した。
タイの子会社を解散
2025年5月2日に発表した2028年3月期を最終年とする3カ年の中期経営計画「中期計画2027」に撤退方針を明記した。同中期計画期間中の実現を目指すとしている。
同社は1948年に高松鉄工所として創業し、1960年に旋盤で工作機械分野に進出した。自動車部品加工を始めたのは2001年で、現在はエンジン部品であるスタータハウジング(エンジンを始動させるためのスターターモーターを装着する箱型の部品)やエンドフレーム(車両のフロントやリアの構造を構成する部品)、エアコンの圧力センサー部品などの加工を行っている。
同社によると縮小が見込まれる分野にある特定顧客に依存した事業体制であり、売上高が減少傾向にあったとしている。
自動車部品加工事業の2025年3月期の売上高は1億8200万円(前年度比35.4%減、売上高構成比1.3%)、営業利益は800万円(前年度は1900万円の赤字)だった。
海外自動車メーカー向けの販売が振るわず大幅な減収となったものの、タイの子会社TP MACHINE PARTSを解散したことや、不採算案件の取引を停止したことなどから、営業黒字を確保した。
TP MACHINE PARTSは、タイで自動車部品加工事業を行うことを目的に2015年に設立したが、計画していた生産量を確保することができず、営業赤字が続いていたため、2023年12月から清算手続きを行っていた。
非自動車分野の開拓を推進
高松機械は工作機械事業、自動車部品加工事業のほか、液晶や半導体用の製造装置などを手がけるIT関連製造装置事業の3部門で事業を構成する。
CNC(コンピューター数値制御)旋盤(加工物を回転させ、固定した工具で切削する機械)を中心とする工作機械事業では、旋盤だけでなく自動化ニーズに対応した搬送装置なども手がけており、機械の加工精度を維持しながら自由なカスタマイズ(使用者の要求に応じた仕様の変更)を実現できるといった強みを持つ。
これら製品は多くの自動車メーカーへの販売実績がある半面、自動車関連業界への依存度が高いことから同業界の設備投資の動向に業績が左右されるという課題もある。
このため工作機械事業では、既存事業で工程集約促進に向けた複合加工機の開発やカスタマイズのモジュール(いくつかの部品を集め機能を持たせた複合部品)化などに取り組むとともに、新市場の開拓にも力を注ぎ、非自動車分野の開拓を進める方針だ。
またIT関連製造装置事業でも、新たな市場として医療分野などに事業領域を拡大するほか、2024年に販売を始めた、びんの色選別を自動化する資源ごみAI(人工知能)自動選別機「AI・B-sort」でも拡販に取り組むとともに、リサイクル業界向けの新たな製品開発を検討する。

3期ぶりの黒字転換へ
これら計画を実現するため、今後3年間(2026年3月期~2028年3月期)にDX(デジタル・トランスフォーメーション=デジタル技術で生活やビジネスを変革する取り組み)投資や成長投資に10億円の枠を設け「事業成長スピードを加速するための成長投資を積極的に推進する」としている。
M&Aについては言及していないが、自動車分野以外の新規事業の開拓や、医療分野などへの進出、さらにはリサイクル業界向けの新製品の開発などを進める中で、一つの選択肢としてM&Aを活用する場面もありそうだ。
過去には2008年に、板金部品の内製化を目的にコバヤシエムエフジーから金属板金加工事業を譲り受けた実績がある。
同社の2025年3月期は、工作機械事業が自動車関連業界の設備投資需要の回復の遅れで振るわず、売上高は138億9300万円(前年度比2.1%減)、営業損益は1億6000万円の赤字(前年度は3億8600万円の赤字)となった。
中期経営計画の初年度に当たる2026年3月期に3期ぶりの営業損益の黒字転換(1億3800万円)を見込み、最終年の2028年3月期には営業利益率5.0%、ROE(自己資本利益率)4.3%を目指す。この間にM&Aに出番は回ってくるだろうか。

文:M&A Online記者 松本亮一
【M&A Online 無料会員登録のご案内】
6000本超のM&A関連コラム読み放題!! M&Aデータベースが使い放題!!
登録無料、会員登録はここをクリック