
ロート製薬は、 妊活に対する知識・理解の普及を目指した最新の意識調査「妊活白書 2024」を、3月4日に発表した。
7年目となる同調査では、子どもを望まない若年未婚男女が過半数を超え過去最高となる一方、既婚男女の妊活実施率の増加や妊活に主体的な若年男性の存在が明らかになった。
本記事では、「妊活白書 2024」の調査結果とともに、ロート製薬に勤務する30代の男性一般社員(Aさん)に取材した妊活エピソードも紹介する。Aさんは、2022年9月から1年8カ月の不妊治療を経て、2025年1月に第一子が誕生している。
「将来、子どもがほしいか」という質問に対して、「ほしくない」と答えた若年未婚男女(18~29歳)は、同調査で過去最高の56.6%に。男女別では、男性が59.9%、女性が53.1%だった。過去5年間で「子どもがほしくない」と考える若年未婚男女は年々増加していることも明らかとなった。
将来、子どもがほしくない若年未婚男女は年々増えている(ロート製薬提供、以下同)ただ、子どもがほしくないと回答した未婚男女のうち、約4人に1人は「将来考えが変わったときに子どもを授かれるよう、身体的に妊娠が可能な状態を維持しておきたい」と回答。去年との比較では、こうした「妊活備え派」は微増している。
今は子どもがほしくないが、約4人に1人は「子どもを授かれる可能性を残しておきたい」と回答子どもを望まない若年層が増加する一方で、「その考えが将来的に変化しやすい」という調査結果もでている。妊活を経て、現在は「子どもを持つのもいいことだ」と思っている人のうち、「以前は子どもがほしいか分からなかった」「以前は子どもがほしいと思っていなかった」と回答した人は合計で49.6%だった。
「子どもを持ちたい」という気持ちは移ろいやすいことも分かった
「夫婦で家族設計について話をする」「排卵日に合わせて夫婦生活を行う」「婦人科、クリニックなどで検査を行う/一般不妊治療を行う」などの妊活を実施する人が増加。
既婚男女の妊活実施率は増加しているさらに、妊活経験男性のうち25~29歳の若年男性は、パートナーの体調を気遣ったり、積極的にパートナーとコミュニケーションを取ったり、妊娠や妊活についての情報を一緒に学んだりといった妊活行動に主体的なことが分かった。
妊活経験男性のうち、25~29歳の若年男性は妊活行動に主体的
ロート製薬が分類した現代の妊活5タイプ各タイプによって妊活に対する知識量やライフプランに対する考え方に大きな差があり、不安内容もそれぞれ異なっていた。ロート製薬の公式ホームページでは、妊活タイプの診断チャートや各タイプの特徴、タイプ別の「おすすめのはじめの一歩」も紹介している。
「初期は、当社で販売している排卵日予測検査薬『ドゥーテスト』を使い、最も妊娠しやすい日を予測して夫婦生活を行う妊活をしていました。ただ、何度使用しても判定ラインが出ず、妻の生理周期が不規則なことで、排卵のタイミングもずれていると気づいたんです。そこで婦人科を受診しました」(Aさん)
排卵日予測検査薬のイメージ 2022年9月に初めて婦人科を訪れ、ブライダルチェックを実施。すると、妻の卵管が狭いため受精しても受精卵が子宮にたどり着きづらい、つまり着床しづらいのではないかと指摘を受けた。ただ、手術は高額のため、まずは排卵日を正確に予測し、最も妊娠しやすいタイミングで性交渉を行う「タイミング法」から始めることに。
生理が始まってから次の生理までを1クールとし、Aさん夫婦の場合、1クールに3~4回通院した。生理が始まったタイミングでまず通院し、処方された薬を数日間服用。その後、排卵日を予測するために2~3回通院する。妻に対する治療だが、Aさんは3分の2ほどの割合で一緒に通院していたという。2人ともフルタイム勤務のため、通院の日は仕事を早めに切り上げて通った。
「数カ月実施しても成果が得られず、妻が卵管を拡張する『卵管鏡下卵管形成術』を受けました。費用は健康保険の3割負担で片側約14万円、両側約28万円ですが、高額療養費制度の対象であり、負担額は抑えられました。その後、トータル約1年間のタイミング法を実施しましたが、成果が出ませんでした」(Aさん)
この結果を受けて、人工授精へのステップアップを決断。高度生殖補助医療(ART)が可能な近隣の婦人科へ転院し、2023年11月から治療を再開した。
「人工授精も、通院頻度はタイミング法とほぼ同様です。ひとつ異なるのは、人工授精の日を決めて通院すること。これまでの通院は僕が少し遅れて到着しても問題ありませんでしたが、人工授精の場合は遅刻できないので、仕事との両立のハードルは上がりました」(Aさん)
「生理がくるたびに、『またダメだった』と妻が落ち込むんです。すると、『体外受精にステップアップしようか』と迷いが出てくるのですが、そうすると妻の体の負担も費用も増える。早く子どもがほしいけれど、負担もかけたくないという気持ちの揺れが度々あり、それが一番ツラかったですね」(Aさん)
一方で、さまざまな好条件が重なったことからトータルの費用は数万円で、Aさんの場合は金銭的な負担はそれほど感じなかったという。
「2022年4月から不妊治療の保険適用が開始され、自治体の補助金も適用されました。通院・投薬に排卵日予測検査薬やサプリメント、通院の交通費などを合計しても10万円未満でした」(Aさん)
Aさんは第一子の誕生後、5週間の育休を取得した(Photo by:Unsplash Fé Ngô)第一子の誕生後、Aさんは「産後パパ育休(出生時育児休業)制度」(※)と1週間の有給を併用して、5週間の育休を取得。その間、授乳と夜間の世話を除く家事と育児を担当したという。
自身の不妊治療の経験を通して、これから妊活を開始する男性への助言を求めると、「一番負担がかかるのは奥さんだと思うので、奥さんに寄り添ってあげてください」と話した。Aさん夫婦は第二子の希望があるが、子育てをしながらの妊活はよりハードルが上がるため、いざ始めるとなれば検討事項が増えるという。
不妊治療は、婦人科やクリニックによって方針や体制、費用が異なると言われ、経験しなければ分からないことも多い。だからこそ2人が等しい熱量で妊活に向き合い、互いをサポートしようとする心がけが求められるはずだ。
サムネイル写真提供:Unsplash Juan Encalada
取材協力:ロート製薬
妊活白書ホームページ:https://jp.rohto.com/dotest/committee/hakusyo/
取材・文:小林香織
(※)産後8週間以内に4週間(28日)を限度として2回に分けて取得できる休業で、1歳までの育児休業とは別に取得できる制度。2021年の法改正で創設
7年目となる同調査では、子どもを望まない若年未婚男女が過半数を超え過去最高となる一方、既婚男女の妊活実施率の増加や妊活に主体的な若年男性の存在が明らかになった。
また、以前は子どもを持つことに消極的だったが、年齢を重ねるなかで積極的に変わる人が約50%いることも分かった。
本記事では、「妊活白書 2024」の調査結果とともに、ロート製薬に勤務する30代の男性一般社員(Aさん)に取材した妊活エピソードも紹介する。Aさんは、2022年9月から1年8カ月の不妊治療を経て、2025年1月に第一子が誕生している。
「今も将来も子どもがほしくない」若年未婚男女は56.6%
ロート製薬では、妊活をサポートする製品の研究開発や妊娠に関する情報発信などに取り組んでいる。「妊活白書」はその一環で、最新調査は2024年11月22日~12月2日に、全国に住む18~44歳の男女(未婚・既婚、子どもの有無は問わない)37,231名にインターネットで調査した。「将来、子どもがほしいか」という質問に対して、「ほしくない」と答えた若年未婚男女(18~29歳)は、同調査で過去最高の56.6%に。男女別では、男性が59.9%、女性が53.1%だった。過去5年間で「子どもがほしくない」と考える若年未婚男女は年々増加していることも明らかとなった。
将来、子どもがほしくない若年未婚男女は年々増えている(ロート製薬提供、以下同)ただ、子どもがほしくないと回答した未婚男女のうち、約4人に1人は「将来考えが変わったときに子どもを授かれるよう、身体的に妊娠が可能な状態を維持しておきたい」と回答。去年との比較では、こうした「妊活備え派」は微増している。


20代後半の男性は妊活に主体的な傾向
次に、既婚男女に対して「妊活として取り組んでいること」を聞くと、過去3年間の比較で妊活実施率の増加が見られた。「夫婦で家族設計について話をする」「排卵日に合わせて夫婦生活を行う」「婦人科、クリニックなどで検査を行う/一般不妊治療を行う」などの妊活を実施する人が増加。
既婚男女における妊活への関心の高まりがうかがえた。


令和の妊活は5タイプに分けられる
ロート製薬では、調査を通じて子どもがいない男女における妊活やプレコンセプションケア(将来の妊娠を踏まえて生活や健康に向き合うこと)の実践度、子どもを持つことへの意識の強さによって、以下の5タイプに類型化した。
ロート製薬で働く30代男性の不妊治療エピソード
さらに、ロート製薬で働く30代・一般社員の男性(Aさん)の妊活を取材した。Aさんは2021年に30代・会社員の女性と結婚、2022年2月に妊活を始めた。結果的に2つの婦人科に通い、約1年間の「タイミング法」と約6カ月間の「人工授精」を経て妊娠。2025年1月に第一子が誕生した。「初期は、当社で販売している排卵日予測検査薬『ドゥーテスト』を使い、最も妊娠しやすい日を予測して夫婦生活を行う妊活をしていました。ただ、何度使用しても判定ラインが出ず、妻の生理周期が不規則なことで、排卵のタイミングもずれていると気づいたんです。そこで婦人科を受診しました」(Aさん)

生理が始まってから次の生理までを1クールとし、Aさん夫婦の場合、1クールに3~4回通院した。生理が始まったタイミングでまず通院し、処方された薬を数日間服用。その後、排卵日を予測するために2~3回通院する。妻に対する治療だが、Aさんは3分の2ほどの割合で一緒に通院していたという。2人ともフルタイム勤務のため、通院の日は仕事を早めに切り上げて通った。
「数カ月実施しても成果が得られず、妻が卵管を拡張する『卵管鏡下卵管形成術』を受けました。費用は健康保険の3割負担で片側約14万円、両側約28万円ですが、高額療養費制度の対象であり、負担額は抑えられました。その後、トータル約1年間のタイミング法を実施しましたが、成果が出ませんでした」(Aさん)
この結果を受けて、人工授精へのステップアップを決断。高度生殖補助医療(ART)が可能な近隣の婦人科へ転院し、2023年11月から治療を再開した。
「人工授精も、通院頻度はタイミング法とほぼ同様です。ひとつ異なるのは、人工授精の日を決めて通院すること。これまでの通院は僕が少し遅れて到着しても問題ありませんでしたが、人工授精の場合は遅刻できないので、仕事との両立のハードルは上がりました」(Aさん)
約1年6カ月の不妊治療 「費用」や「苦労」は?
そして、約6カ月後の2024年5月に妊娠。2025年1月に第一子が誕生した。約1年6カ月の不妊治療を経験したAさんにとって、何が最大の苦労だったのか。
「生理がくるたびに、『またダメだった』と妻が落ち込むんです。すると、『体外受精にステップアップしようか』と迷いが出てくるのですが、そうすると妻の体の負担も費用も増える。早く子どもがほしいけれど、負担もかけたくないという気持ちの揺れが度々あり、それが一番ツラかったですね」(Aさん)
一方で、さまざまな好条件が重なったことからトータルの費用は数万円で、Aさんの場合は金銭的な負担はそれほど感じなかったという。
「2022年4月から不妊治療の保険適用が開始され、自治体の補助金も適用されました。通院・投薬に排卵日予測検査薬やサプリメント、通院の交通費などを合計しても10万円未満でした」(Aさん)

自身の不妊治療の経験を通して、これから妊活を開始する男性への助言を求めると、「一番負担がかかるのは奥さんだと思うので、奥さんに寄り添ってあげてください」と話した。Aさん夫婦は第二子の希望があるが、子育てをしながらの妊活はよりハードルが上がるため、いざ始めるとなれば検討事項が増えるという。
不妊治療は、婦人科やクリニックによって方針や体制、費用が異なると言われ、経験しなければ分からないことも多い。だからこそ2人が等しい熱量で妊活に向き合い、互いをサポートしようとする心がけが求められるはずだ。
サムネイル写真提供:Unsplash Juan Encalada
取材協力:ロート製薬
妊活白書ホームページ:https://jp.rohto.com/dotest/committee/hakusyo/
取材・文:小林香織
(※)産後8週間以内に4週間(28日)を限度として2回に分けて取得できる休業で、1歳までの育児休業とは別に取得できる制度。2021年の法改正で創設
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