第21回 『このミステリーがすごい!』大賞の受賞作が決定した。
小西マサテル氏
★大賞:小西マサテル 『物語は紫煙の彼方に(仮)』 2023年1月 刊行予定
応募総数447作品の中から、1次選考(19作品通過)、2次選考(8作品通過)を経て、第21回『このミステリーがすごい!』大賞(株式会社宝島社主催)は、小西マサテル(こにし・まさてる)氏の『物語は紫煙(しえん)の彼方に』が受賞した。
~「認知症の老人」は「名探偵」たりうるのか? 孫娘の持ち込むさまざまな「謎」に挑む老人。日々の出来事の果てにある真相とは~
【あらすじ】
楓(かえで)は、小学校教師をしている27歳の女性。彼女の祖父は素晴らしく頭の切れる人物だったが、71歳となった現在、認知症を患い介護を受けていた。「レビー小体型認知症」だったため、幼児退行するようなことはなかったものの、「青い虎が見える」といった幻視や記憶障害などの症状が現れていた。
【著者プロフィール】
小西マサテル(こにし・まさてる)
香川県高松市出身。東京都在住。明治大学在学中より放送作家として活躍。
ミステリを書くというのは少年期からの夢だったのですが、本作を執筆する直接的なきっかけは、長らくレビー小体型認知症を患っていた父の存在でした。5年以上に及び妻と共に介護を続けるうち、世間にこの認知症への誤解があまねく広がっていることに気がつきました。この病気への理解を深めたい、せめて興味を持ってもらいたい──そう強く思ったうえでのアプローチのかたちが、私にとってはミステリでした。自分の場合は亡父への想いをこの作品に仮託していて、どうしてもこの作品でデビューしたいという強いこだわりがありました。
<選評>
●レビー小体型認知症を患う老人が安楽椅子探偵をつとめる“日常の謎”系の本格ミステリー連作で、ラストがきれいに決まっている。(大森 望/翻訳家・書評家)
●マニア心をそそられる趣向が凝らされており、古典作品へのオマージュも好印象。
●キャラクターが非常に魅力的。彼らの会話がとっても楽しい! 全体を通しての空気感、安定感が秀逸でした。魅力的な物語を書き続けていける方だと確信しました。(瀧井朝世/ライター)