正しいことを言って相手を負かせば、自分の主張は通るかもしれません。しかし、その勝ち負けと引き換えに、大切な人間関係を失ってしまうとしたら――。


『「まだ働かなきゃダメなんですか?」60歳からでもバリバリできる仕事力: 『島耕作』シリーズ作者が実践する、いつまでも楽しく働くコツ』(弘兼憲史著)は、『課長 島耕作』の作者が自身の経験をもとに、人生100年時代を楽しく働き続けるための心構えや仕事術、健康法を説いた一冊です。

今回は本書から一部を抜粋し、60歳を過ぎて周囲から嫌われないために避けたい「論破」と、相手との関係を良好に保つコミュニケーションについて紹介します。

■「論破」で勝っても人間関係にはわだかまりが残る
60歳以上になると、嫌われる人と好かれる人がはっきり分かれてきます。

嫌われる人の特徴は前述しましたが、「プライドが高い、思い込みが激しい、成功体験をひけらかす」、いわゆる頑固な人です。

成功体験やプライドが高いとやりがちなのが「論破」。最近は論破が流行っていますが、それをあえてしないことで長期的な利益が得られます。論破する人は他人を叩くことで気持ちよくなっているだけなので、周りから見ればただの「うざい人」になります。そうなってしまうと、人間関係もこじれてしまいます。

もっといえば、相手を追いつめるような質問もNG行動になります。政治家の記者会見などでも見られますが、相手を窮地に追い込んで言質を引き出そうとするやり方は、嫌われる原因のひとつです。自分が言われる立場ではなくても、見ていても気分のいいものではありません。

論破したがるのは男性に多いような気がしますが、それは、自分は頭がいいと勘違いして、ほかの人を下に見ており、自分の思うように動かしたいと思っている人が多いからではないでしょうか。


その場では言い負かして気分がいいかもしれませんが、論破しても相手とわだかまりを残してしまうことになってしまいますので、その後、関係修復が難しくなるでしょう。

たとえ筋の通った理屈で論破したとしても、一文の得にもなりません。

論破することは相手のプライドを傷つけ、さらに激しい反発を生み、「みんなの前で恥をかかされた」とあなたのことを尊敬するどころか、嫌いになるのです。

■相手を否定せず「同じ目線」で話すことが大切
ですから論破するというやり方よりも、共感力を身につけて、「なるほどね。ここをこうしたらもう少し効率がいいかもね」 「こうしたほうがきっと良くなると思うんだ」と、柔らかい言い方で、相手を傷つけないように少しだけ意見するように心がけましょう。そうすると相手も意見に反対されているとは思わないでしょう。

「それはやったらダメだよ」「でも」「しかし」のように否定をしてしまうと、人間関係がうまくいかなくなる可能性があります。

僕の場合、スタッフが失敗したときは「よくあることだよ。ドンマイ!」と声をかけるようにしています。するとその人も気が楽になり、「すみません」と言いやすくなります。

とある海外の著名人が「これをやると明日はもっと良くなる」のようなことをよく言っていますが、こういった言葉もいいと思います。人心を掌握するには、会話する相手と同じ目線で話をすることが一番です。
上から目線で命令口調だと話を聞く気が失せます。

「負けるが勝ち」という言葉があります。自分のほうが正しいと主張したくても、そこはぐっと我慢してあえて譲ることで、得られるものがたくさんあるのです。

著者:弘兼 憲史(漫画家)
1947年山口県岩国市生まれ。早稲田大学卒業。松下電器産業に勤務の後、74年漫画家デビュー。85年『人間交差点』(原作 矢島正雄)で第30回小学館漫画賞青年一般部門、91年『課長 島耕作』 で第15回講談社漫画賞一般部門、2000年『黄昏流星群』 で第4回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、03年同作で第32回日本漫画家協会賞大賞を受賞。07年には紫綬褒章を受章している。主な作品はほかに、『ハロー張りネズミ』 『加治隆介の議』 など多数。現在は『社外取締役 島耕作』(「モーニング」)、『黄昏流星群』(「ビッグコミックオリジナル」)を連載中。
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