小林有吾が「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館刊)で連載中の大人気サッカーマンガを原作に、NHK Eテレで現在放送中のテレビアニメ『アオアシ』がいよいよ第2クールに突入した。

Jリーグ有数のクラブ「東京シティ・エスペリオンFC」のユースチームの監督・福田達也に声を掛けられ、上京してきた青井葦人(アシト)は、ユースのセレクションに見事合格してチームに合流。
やる気はあるものの基礎が身についていないことから他の選手たちと協調出来ずにいたアシトだったが、やがてその才能は少しずつ覚醒していくことになる――。
今回は福田監督役の小林親弘さん、そしてヘッドコーチ・伊達望役の安元洋貴さんに、各キャラを演じてみての印象や作品の魅力などについて語っていただこう。
『アオアシ』小林親弘と安元洋貴が支えるブレない二人の指導者像
▲(左から)伊達望役/安元洋貴さん、福田達也役/小林親弘さん

>>>苦悩するアシト、福田&伊達たちを描く『アオアシ』場面カットを見る(写真16点)

──まず、アニメ『アオアシ』第1クールを終えての感想からお聞かせください。

小林 面白い展開が続いていて、本当にあっという間の1クールでした。NHKさんなのでCMがないからかもしれないんですが、毎回「時間が短いな」と感じながら観ています。

安元 面白いだけでなく出てくるキャラがみんなキラキラしていて、ちょいちょい泣いてしまったりと、僕が想定していたよりもずっと心を揺さぶられる作品でした。


──福田と伊達ですが、お二人はどのような思いで演じられていますか?

小林 福田は「東京シティ・エスペリオンFC」ユースチームを率いる監督として、伊達と協力しながら選手の育成を指導者としてサポートしていく感じです。いつも飄々としているんですが、一貫して「世界と戦えるチームにしたい」という目標をもっていますし、オーディションの時からその部分はブレないように演じるようにしています。
『アオアシ』小林親弘と安元洋貴が支えるブレない二人の指導者像

安元 僕自身原作コミックをずっと読んでましたので、自分の中に「こういう感じだったらいいな」という伊達像をオーディションで作りまして、それをそのままアフレコでやらせてもらっています。伊達は選手たちにとって超えるべき壁ともいうべき存在ということもあって、演じていていろいろ辛い役回りも多かったりします。でも、そんな部分が表に出てはいけないキャラでもありますので、いい意味で「変えない」「変わらない」を大事にやらせてもらっています。
『アオアシ』小林親弘と安元洋貴が支えるブレない二人の指導者像

──では、各キャラを演じることについての難しさ、面白さはどんなところにありますか。


小林 福田は本当に自分のキャリア史上の中でも上位に入る難しいキャラクターとなりました。その場その場で天才肌の部分や、おちゃらけているところを演じるのは面白いんですけれど、収録したずっと後になって実は福田がその時本当は何を考えていたかが分かる、みたいな展開が多いんですね。原作コミックでもまだまだ描かれていない部分がたくさんありますので、そうした彼が内に秘めた部分が今後どうなっていくのかと、毎回悩みながら演じさせてもらっています。

安元 福田や伊達といった大人組は「見られている側である」ということを大事に演じる必要があると思っています。自分たちを「怖く見せる」とか「何を考えているか分からない」と選手たちに思わせる必要があるので、そこをブレずに演じていくのは大切なんですが、なかなか難しいところではあります。あとは福田との絡みでちょっとだけ感情を吐露するシーンがあるんですけど、そこでの匙加減の調節は難しいけど面白かったです。


(C)小林有吾・小学館/「アオアシ」製作委員会

──小林さんから見た伊達、また安元さんから見た福田はどういう人物に見えますか。

小林 福田は伊達をメチャメチャ信頼していると思います。自分の気づいていない視点を補ってくれる存在ですし、福田が最も重要だと思ってるサブの選手を育成するポジションを任せてもいるわけですので。よく相談してるシーンなんかもありますし、ホント二人三脚といった感じのパートナーだと思っています。

安元 監督である福田の考えをしっかりと理解しながら、選手たちとの相互理解をスムーズにつなげていくハードコア中間管理職みたいな存在が伊達だと思っていて(笑)。それってやっぱり福田への信頼と信用、さらには尊敬の思いがあるからこそ出来ることなんじゃないかなっていうのはありますね。


──二人が指揮するエスペリオンユースというチームの印象は?

小林 「スゲエな」っていう印象ですね(笑)。サッカーはあまり詳しくないんですが、20年前の学生時代の時の自分と比較して、「高校生なのに、こんなこと出来るのか!」っていう、そんな驚きのあるチームです。

安元 まだまだもっと強くなるし、もっと強くなってもらわないといけないし、もっと強くしたいと思える、いい意味で「発展途上のチーム」だと思っています。

──エスペリオンユースに新たに加わった主人公・アシトについては、どんな風に見られていますか。

小林 「異端児、来たな!」って感じですね。エリートの中に雑草魂が入ってきた、みたいな(笑)。
阿久津(渚)という選手なんかもそうなんですが、エリート集団とは違う要素がアシトにはあるんですよね。最初は「まともなパスも出来ない選手をなんで獲ってくる?」って思ったりもしていたんですが、今では福田について「どれだけ先を見据えてるんだ」と驚きを感じています。

安元 自分が中心になって動くつもりがなくても、何かしらの「うねり」みたいなのを生み出す選手だなって思います。彼に巻き込まれてどんどんチームが一つになっていき、やがてアシト自身も自分の立ち位置が見えるようになっていくみたいな、そんな成長をちゃんと感じさせてくれる。まさに主人公だ、と思いました。

──作中で、個人的に注目しているキャラクターはいますか。


安元 (一条)花ちゃんですね。あんないい子いないです、拗ねたりもして可愛いなって。
『アオアシ』小林親弘と安元洋貴が支えるブレない二人の指導者像

小林 俺も花ちゃんです。可愛いですよ、自分も健康管理してほしいと思います(笑)。花ちゃん以外だと、選手なら大友(栄作)ですね。虚勢を張らない人間らしさがすごく魅力的で、チームに絶対必要な選手だと思います。やがてコーチや監督になっても、すごく有能なんだろうなって気がしていますね。

安元 あと、冨樫(慶司)も気になりますね。気のいい不良キャラがすごく好きなので。八代拓君の不良芝居も大好きで、「冨樫、メッチャいい!」と思ってます。
『アオアシ』小林親弘と安元洋貴が支えるブレない二人の指導者像

──本作はユースサッカーという、今まであまりない視点からサッカーを描いていますが、その点についてどう思われますか。

小林 プロを見据えた育成機関を描く作品って、確かになかなかないと思うんですよ。でも成長していく選手を見てるととても勉強になるし、監督たちが選手たちをどう導いていくかの過程もすごく面白い。そんな描写の一つ一つが『アオアシ』の魅力になっているのでは、と思っています。

安元 トップチームは「優勝」という明確な目標がありますけれど、ユースのチームは「強くなる」「トップチームに成長させた選手を上げる」っていう、ただ単に勝つのとは違った目的がある。でも、一方の選手たちは試合に勝ちたいと考えているわけです。そうしたいろんな要素が絡み合う、ユースだからこその面白さが『アオアシ』にあると考えています。

(C)小林有吾・小学館/「アオアシ」製作委員会

──ちなみに、お二人と実際のサッカーの関わりは、どんな感じなんでしょうか。

小林 僕が小学五年生ぐらいの時にJリーグが開幕して、そこからベルマーレとかジュビロが出来たぐらいの10チーム時代に、よく試合を観戦しに行ったりしていました。Jリーグチップスとか買ったり、地元愛知の名古屋グランパスエイトを応援したりして。

安元 (ゲーリー・)リネカーの頃だ、僕もグランパスのファンだったんですよ。ワールドカップ得点王なのに全然リネカーが点獲らなくて(笑)。じゃあ。ゴールキーパー伊藤(裕二)、右サイドバック飯島(寿久)の頃ですね。まだ平野(孝)が新人とか。

小林 そうそう、メッチャ詳しいね(笑)。そこら辺がちょうどドンピシャで、まだグランパスは全然弱かったけど、よく試合を観に行っていましたね。
そんなブームもあってか学校にサッカー部が新設されて。僕も小学校6年生までの3年間はサッカーをやってましたし、ビスマルク選手が好きだったので、ゴール決めたら祈るっていうあのポーズなんかも真似してやってました(笑)。

安元 昔は海外のサッカーを知れる番組って、テレビ東京系列の『ダイヤモンドサッカー』ぐらいしかなかったんです。そこで見たオランダトリオ……ファン・バステン、(ラフランク・)ライカールト、ルート・フリットがすごくカッコ良くて、そこからACミランがすごい好きになりました。
その後2005年のUEFAチャンピオンズリーグ決勝を観たんですが、3-0をひっくり返してPK戦で勝った「イスタンブールの奇跡」があまりに熱すぎて。ウクライナの(アンドリー・)シェフチェンコ……シェバが好きで、シェバがPK戦で止められて試合は負けちゃうんですが、そこにドラマを感じたりもして。そこからはリヴァプールFCを応援するようにもなりました。

さらに「キャプテンってこうなんだ」って感じさせてくれたスティーヴン・ジェラードから中盤にデンと構える選手をチェックするようになり、チェルシーの(フランク・)ランパード、さらにドイツ代表も好きなんですがミヒャエル・バラックとかも好きになりました。
日本人選手ではレアル・マドリードBチームにいる中井(卓大)君ですね。「ピピ(泣き虫)」ってあだ名なんですが、ユースで頑張ってまして。いつかすごい選手になると思って観ています。

──安元さんのサッカー愛は本物ですね! 本作は第2クールが開幕して、物語も怒濤の展開が続いていくことになります。ぜひ放送を楽しみにしているファンの皆さんにメッセージをお願いします。
『アオアシ』小林親弘と安元洋貴が支えるブレない二人の指導者像

小林 第2クールの1話目から、物語は非常に大きな転換点を迎えることになりました。ホントに「今まで何だったの?」ってくらいに展開がガラッと変わっていきますので、観ている皆さんもビックリしたのではと思います。
ここからはさらに「サッカーってこんな見方もあったんだ」という驚きや面白さを深く広く感じてもらえる内容になっていきますので、ぜひ注目して観ていただけたらと思います。

安元 第2クールが始まってすぐに、ある意味絶望のようなものをアシトは突きつけられることになりました。でもアシトがそれに耐えて奮起し、新たな気付きを得ることで再びサッカーを楽しみ始めることが出来ると、福田と伊達は信じているんだと思うんです。
一見マイナスからのスタートに見えるかもしれませんが、この後でどんどんプラスに向かっていくようなお話になっていきますので、これからも放送を楽しみにしていただけたら嬉しいです。

小林親弘(こばやし ちかひろ)
9月5日生まれ。演劇集団 円所属。主な出演作は『イエスタデイをうたって』(魚住陸生)、『ゴールデンカムイ』(杉元佐一)、『BEASTARS』(レゴ)、『転生したらスライムだった件』(ランガ)、『擾乱 THE PRINCESS OF SNOW AND BLOOD』(葛原仁)、『魔王城でおやすみ』(レッドシベリアン・改)ほか。

安元洋貴(やすもと ひろき)
3月16日生まれ。シグマ・セブン所属。主な出演作は『KICK&SLIDE』(フィレレ役)、『マジカパーティ』(ワニスケ役)、『賢者の弟子を名乗る賢者』(アスバル)、『憂国のモリアーティ』(マイクロフト・ホームズ)、『ヴィンランド・サガ』(ビョルン)、『鬼灯の冷徹』(鬼灯役)、『メガロボクス』(勇利役)ほか。

(C)小林有吾・小学館/「アオアシ」製作委員会