新世代のガンダムシリーズとして一世を風靡した「機動戦士ガンダムSEEDシリーズ」の約20年ぶりの新作続編となる『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』が現在全国公開中だ。主人公、キラ・ヤマト役を演じる保志総一朗さんにキラは自分にとってどのような存在なのか、そして本作でのラクス、アスランへの思いについて語ってもらった。


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※本文にはネタバレ要素が多く含まれます。劇場版ご鑑賞前の方はご留意ください。

──約20年ぶりの新作が劇場版として公開されました。今の率直なお気持ちをお聞かせください。

保志 本格的に始動するというお話を戴いた時は、まだちょっと半信半疑というか「ホントにやれるのかな?」という気持ちがあったんです。でもアフレコでキラとして『DESTINY』の続きの物語を演じたことで、それが現実になったことを初めて実感して感慨深い気持ちになりました。


──台本を最初に読んだ時の感想をお聞かせください。

保志 アフレコが二回に分けられていることを最初聞いていなかったので、前半の台本を「あれ? もう終わっちゃうぞ?」とヒヤヒヤしながら読ませてもらいました。さらに後半の台本は数カ月経ってからの受け取りになったので、本当にお客さんの気分でいつ来るのかをずっと待ち続けました。
あと思ったのは新キャラクター、メチャクチャ多いなって(笑)。キラやアスラン、シン、ラクスたちの物語の続きを追っていくのかと思ったら、いきなり新しい勢力とキャラクターが出てきたので、読んでいて「これ、まとまるのかな?」っていう不安も感じたりしました。

──では、『FREEDOM』のストーリーに関しては?

保志 キラとラクスの物語は、大きなポイントだと思います。
ここまで二人をフィーチャーした物語になるとは思っていなかったので、ちょっとビックリしちゃいました。
キラがちゃんと自分の弱さや本音をラクスに見せているし、ラクスも迷いなくキラへと愛情を向けていたので、二人の絆が結構深いところまでいっているんだなっていう風に感じられました。
僕としてはキラとラクスの物語の一つの答えにたどりついたような気がしていますし、そこを具体的に描いてもらえたのが良かったと思っています。

──本作のキラについてはどんな印象がありますか。

保志 「ちょっと、大丈夫か?」と(笑)。それまでのいろいろを乗り越えて成長していたはずが、「まさかこんな展開になるとは」っていうお話だったので。

『SEED』時代に還ったかのような弱さや、今までの思いが覆されちゃう展開もあったりして、ショッキングな内容ではありました。

──では、今回の劇場版ではどのようにキラを演じられたのでしょうか。

保志 僕としては『DESTINY』直後のキラを演じようという意識はあまりなかったんです。キラ自身も成長しているわけですし、ならば今の僕が演じられる新たなキラを見せていこう、といった意識でやらせてもらいました。なので、それが受け入れてもらえるのか、すごく緊張する部分もありましたね。

──キラに関して特に注目してほしい場面は、どこになりますか。


保志 僕的には、「ラクスが裏切った」とキラが誤解してしまうところですかね。そんなことはあり得ないのに、そう考えてしまうほど精神状態が追い詰められてしまったキラが立ち直れるかどうかは物語として大事な部分だったので、すごく印象的でした。
あとはキラとラクスがお互いの意志をちゃんと伝え合っている場面。そこは絶対に観逃したり聞き逃したりしないでほしいですね。実はもっとあるんですけれど、これ以上は全部ネタバレになってしまうので(笑)。

──では、アスランと絡む場面はいかがでした?

保志 自棄になったキラがアスランに弱さをぶつけてしまう場面があるんですが、まさかお互い拳で語り合うことになるとは思っていなかったのでビックリしました。
おかげで今回の劇場版では、ラクスの絆だけでなく、アスランとの絆もより深く再認識することができた気がしています。

(C)創通・サンライズ

──今回キラが所属するコンパスでは、シンが部下として配属されています。本作のシンの印象はいかがですか。

保志 陽キャというか、普通の良い子になっちゃいましたね(笑)。シン本来の姿を見られたんじゃないかと思っています。キラとの関係でも、すごく慕ってくれているのが嬉しかったです。


──では、ラクスを巡ってライバル関係となるオルフェの印象はいかがですか。

保志 オルフェはキラと全く逆のタイプという印象がありますね。ラクスとの間に急に割り込んできて、あんな風に迫ってこられたら困るというのが正直な感想なんですが……でもキラは恋愛面では積極的にグイグイいくタイプではないし、ともすると勝手に気をまわして身を引いちゃうと思うんです。でも相手がラクスとなるとそうはいかない……という気持ちに今回気付かせてくれたのはオルフェのおかげですね。そこについては「ありがとう!」と言いたいですね。

──その他、印象に残っているキャラクターを挙げるとしたら?

保志 いっぱいいますよ。新キャラはみんな気になりますし……あとはやっぱりアグネスですね。キラにすごくモーションをかけてくるし、何といっても演じているのは桑島(法子)さんでしたから(笑)、ムチャクチャ気になりました。

──アフレコ時のスタッフや他のキャストの方々とのやり取りで、特に印象に残っていることはありますでしょうか。

保志 収録では中村(悠一)くんや下野(紘)くんと一緒のアフレコもあって、いつもとはムードが違ってすごく不思議な感じでしたね。あと、キラとラクスとの掛け合いは本当に何年ぶりだろうっていうぐらいの収録で二人の会話に何ともいえない感動を覚えましたし、アスラン・シン・キラで一緒になって戦う場面は石田(彰)さんと鈴村(健一)くんと3人でアフレコができたことがすごく嬉しかったです。

──保志さんにとって、キラと『ガンダムSEED』という作品はどのような存在ですか。

保志 いろんな人が僕のイメージ=キラ・ヤマトと思い浮かべるぐらいに、『ガンダムSEED』という作品は僕の声優人生の上では切り離せないものになっていると感じています。今でもキラと『ガンダムSEED』に絡んだ仕事をさせてもらっていますし、自分の中にキラがいる状態がずっと継続しているんです。キラはもはや家族であり分身でもあり――そんな感覚が大きいですね。

──保志さん自身は「ガンダムSEEDシリーズ」にどんな魅力を感じていらっしゃいますか。

保志 ガンダムシリーズって基本的にリアル路線じゃないですか。でも『ガンダムSEED』って理屈じゃない、スーパーロボット的な面白さを融合した作品なんです。複雑で難しい物語を展開しながら、エンターテインメント性もしっかり兼ね備えられている。そんなダイナミックな部分には、今でも引き込まれます。

──では、シリーズを通して保志さんが感じるキラ・ヤマトの魅力とは?

保志 『ガンダムSEED』では純粋な少年で一番分かりやすかったんですけれど、『DESTINY』に至るまでの物語の中での成長と共に観ていてなかなか理解されないような人になっちゃったのかな、という印象がありました。
ですが今回の劇場版では、彼の強さや弱さなどいろいろな面が出ていて、キラという人物をより深く知るのにとても良い物語だったなって思っています。

──最後にファンの皆さんにメッセージをお願いします。

保志 『ガンダムSEED』の物語の続きを、ようやく皆さんに観ていただくことができました。キラとラクスの物語はこれで一つの区切りを迎えましたが、これからも『ガンダムSEED』の世界が盛り上がっていったらいいなと思っています。
いろんな感じ方が出来る作品になっていると思いますので、20年間待った分、何度も何度も観ていただいて、『SEED FREEDOM』のその先の世界にも思いを馳せてもらえたなら嬉しいです。

保志総一朗
ほしそういちろう
5月30日生まれ。アーツビジョン所属。主な出演作は『アイドリッシュセブン Third BEAT!』(百)、『最遊記RELOAD-ZEROIN-』(孫悟空)』、『ひぐらしのなく頃に』(前原圭一)、『戦国BASARA』(真田幸村)、『おねがい☆ティーチャー』(草薙桂)ほか。

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