2003~2004年の一年間にわたり放送された、平成仮面ライダーシリーズ第4作『仮面ライダー555(ファイズ)』。当時のオリジナルキャスト・スタッフが集結した、20周年記念の新作『仮面ライダー555 20th パラダイス・リゲインド』が、現在期間限定で上映されている。

乾巧役の半田健人さん、園田真理役の芳賀優里亜さん、草加雅人役の村上幸平さん、北崎役の藤田玲さんの座談会を実施。撮影の裏話や、新作に挑んだ想いを語っていただいた。

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■20年ぶりでも変わらない空気感

――今作は半田さん、芳賀さん、村上さんの提案から企画が動き出したと伺っています。

半田 そうなんです。2022年に「来年が20周年だよね」という話をして、僕らが言わないと何もないんじゃないかと思ったんです。「僕らは準備していますよ」と意思表示をするだけでも変わってくると考えて、20周年に何かやりたいと伝えました。
そこからはただ待つしかなかったんですが、映画という一番望んでいた形で答えが返ってきた。僕らとしてはもうバンザイという気持ちでしたね。

――藤田さんにも、半田さんたち20周年に向けて動いているという話はあったのでしょうか?

藤田 全然。僕はTVシリーズ後の20年間、全く『555』には関わっていなくて。

村上 正直『555』のこと忘れてた?(笑)

藤田 デビュー作のことは忘れないですよ、流石に(笑)。でも、違う特撮にも出ていましたし、多分もう呼んでくれないだろうと思っていました。


芳賀 拗ねていたんだ(笑)。

藤田 そうそう、「ちぇっ!」みたいな(笑)。だから、『555』で何かやろうとしていると聞き、自分が出ると知った時はビックリしましたね。とても嬉しかったし、皆さんが動いてくれて本当に良かったです。

――現場の雰囲気はいかがでしたか? 特に藤田さんはそれこそ20年ぶりに北崎として出演したわけですが。

藤田 なんか昔どおりだったなって。


芳賀 そうですね(笑)。私と藤田くんは、他の特撮作品でガッツリ共演していたし。

藤田 村上さんとは同じ事務所だから時々会っていて。でも、半田さんとは久々だったので、結構緊張しました。

半田 そうなの?

藤田 はい。デビュー作の現場の主演の方って、今でも自分の中では特別な存在というか。
最初に会った芸能人じゃないですけど、それに似た感覚が残っていて。

芳賀 関係性は変わらないもんね、20年経っていても。

藤田 そうそう。後輩がたくさん増えた今でも、やっぱり半田さんはずっと先輩ですから。

半田 玲は周りの男性陣が全員僕より年上だった中、レギュラーキャストでは唯一年下だったんです。それが20年ですごくしっかりしちゃったなというか、「ちゃんと社会人してるじゃん?」みたいな気持ちがありました(笑)。


藤田 当時のままだったら、とっくに仕事なくなっていますから(笑)。

半田 別に素行が悪かったとは言わないけど(笑)、お互いに子どもだったわけです。

芳賀 みんな、いい意味で子どもらしかったですよね。

半田 そうそう。いろいろな仕事を経験して、玲は大人になったなと。ある意味、一番20年の月日を感じました。


芳賀 私もイベントとかではよく会っていたんですが、映像では久々で。今回現場に戻ってきても年齢差とか関係なく、みんなと仲良くさせていただきましたね。クラスメイトに会うような感覚でした。

半田 そうだね。20年前からみんな大人になって、別の現場ではそれぞれ違う姿かもしれないけど、『555』の現場に来ると全く変わらない。

芳賀 でも、大変だった? みんな「子どもだな」って思ってた?

村上 TVシリーズの頃はちょっとね(笑)。みんなよりお兄さんだったから。

藤田 みんなを車で送ったりもして。

半田 今回も村上さんに送ってもらった、俺。

藤田 僕は村上さんに憧れて、最初に車を買う時はオープンカーにしたんです。

半田 悪影響。

芳賀 悪影響って(笑)。

藤田 僕も後輩たちを車で送っていたんですが、今はその後輩が「車を買いました」って報告してくれるんです。だから、村上さんからそういう流れが始まっているんですよね。

村上 いい話。書いてください、これ(笑)。僕は芳賀さんも大人になったと思いましたよ。

芳賀 本当?

村上 今作には草加と真理がちょっと接近するシーンがあって。当時の芳賀さんだったら、朝からイヤイヤモードを出していたかもしれないんですが、今回は普通でした。

芳賀 仕事としてね(笑)。

村上 そう、ビジネスライクな感じで。大人になったなぁと思いつつ、逆に少し寂しい(笑)。

半田 草加とは『仮面ライダージオウ』で共演しているんですけど、真理とは20年ぶりで。プライベートやイベントではご一緒していましたが、巧と真理として現場に立てるというのは、すごく嬉しかったです。懐かしさとは違う、「これこれ!」という感覚があって。

――「これが『555』」的な。

半田 そう。いろいろな意味で初心に戻れました。

(C)2024 石森プロ・バンダイ・東映ビデオ・東映 (C)石森プロ・東映

■スマートブレインがあれば何でも上手くいく?

――それぞれのキャラクターのことも伺います。草加と北崎はTVシリーズで死亡したので、どういった形で登場するのか気になりました。

村上 僕も映画がTVシリーズの続きと聞いて「無理でしょ、首折られましたよ」「完全に灰になりましたよね」と思いました。「どうやって出るのさ」と台本を読んでみたら、アンドロイドという手があった。これには驚きました。

藤田 ビックリした! しかも、草加さんは最初からしれっといるから。

芳賀 私(真理)たちもどう受け入れたんだろう。

村上 そうだよ。タッくん(巧)なんて俺の灰で「おい見ろよ、草加の血だ」って言っていたのに。でも、真理なら。

芳賀 そう。真理は見ていないんだよね、草加くんの死は。まぁ、真理は自分もスマートブレインの技術で生き返ったりしているし。

半田 アンドロイドは作れるし、巧もスマートブレインの技術によって延命できる。スマートブレイン最強説ですよ。

芳賀 人間も生き返っちゃうし。

半田 『555』で辻褄が合わないことが出てきたら、全部スマートブレインが解決してくれる。

芳賀 さすが大企業(笑)。

村上 スマートブレインってやつの仕業なんだと(笑)。

藤田 便利ですよね。

半田 そういう会社がひとつあると便利なんだよ(笑)。

――巧もTVシリーズのラストでは、生死が曖昧な描写がされていました。

半田 僕自身は巧の厳密な生死について、そこまで考えていませんでした。結果として今作では灰になる前兆があった巧が、スマートブレインで何らかの処置を受けて生き延びていた。ある意味、北崎に救われたところがあるんです。巧本人も俺は死んだと言っていたけど、要は拾った命くらいの感じで、相変わらず死ぬことを恐れず、命を粗末にして生きているんです。

――内面的にはあまり変わっていないと。

半田 ええ。昔から巧は生き急いでいるところがあって、序盤では当時と同様、生きることに執着していない様子を意識していました。そこから真理がオルフェノクになり、彼女の力を借りることで、巧も生きることに対し、初めて希望を掴むことができた。それが今作のドラマだったと思います。前に「夢を守ることはできる」と言っていましたが、やっぱり巧は自分のためじゃなく、真理が生きる動機になるというか。

芳賀 田﨑(竜太)監督が「巧にとって真理は生きる希望スイッチだ」と言っていたんですよね。

半田 すごくしっくりきた、それ。

芳賀 真理が元気に生きていれば巧はそれで満足で、だからこそ自ら命を絶とうとした真理を見ていられなかったのかなと。そこで巧が初めて弱さを見せているのが、20年前じゃ描けなかったことだと思います。

半田 TVシリーズ当時に今回の台本の巧を演じていたら、説得力がなかったかもしれない。

――北崎はアクションシーンが多く描かれていましたね。

藤田 そうですね。皆さんは変身されて、僕を残して現場から帰っていくという。

芳賀 当時の私と同じ(笑)。

藤田 そうね(笑)。今回のアクション監督は、長年別の作品で一緒にやっている和田(三四郎)さんで、僕がどんな動きができるのかわかっていらっしゃるから、とてもやりやすかった。昔の北崎ならしない、ちょっとパワータイプなアクションをしつつ、機敏さは残してと、ひとつひとつ和田さんと話しながら作っていけて、すごく楽しかったです。

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――真理はワイルドキャットオルフェノクになるという、大きな変化がありました。台本を読んだ時、どう受け止めましたか?

芳賀 結構冷静でした。「ついに来たか」じゃないですが、TVシリーズの中に真理がオルフェノクになる要素はあったので。TV本編で「君は今のままでいいんだ」「ずっと普通の女の子のままで」という草加くんのセリフがあったんですけど、それが脳裏に浮かびました。「ごめん、普通の女の子じゃなくなった」と思ったりしましたね。あと、何オルフェノクになるんだろうなって、みんなで話していました。

藤田 猫だったね。

村上 僕は絶対タヌキだろうって言っていました。

芳賀 そう、「タヌキっぽいじゃん」って。

半田 でも、猫はしっくりきていたよ。

村上 今の芳賀さんだったら猫。20年前だったら、やっぱりタヌキ(笑)。

半田 それに僕(巧)が狼のオルフェノクじゃないですか。まぁ犬みたいなものだから、犬と猫で釣り合いとしては面白いなと。

芳賀 猫がよく残っていたなと思いました。ものすごい数のオルフェノクが出ているから。

村上 オクラもいましたからね。

半田 オクラってもう動物じゃないし。

芳賀 オクラは視聴者さんからの公募だったんだよね。

半田 あぁ、あったあった!

藤田 確かに、普通はその発想は出てこない。

村上 草加はオルフェノクになるなら何だったんだろうね。

半田 ワニ……はいたな。

芳賀 ザリガニっている?

村上 いない。じゃあ、ザリガニで!

藤田 すげぇ嬉しそう(笑)。

村上 何か違うような気もするけど、嬉しいからいいか(笑)。アンドロイドになったから、草加はもうオルフェノクにはなれないんですよね。玲くんもなれないよ、ドラゴンに。

藤田 そうですね。もう一回なりたかったな。

芳賀 でも、スマートブレインがあるから。

村上 またオルフェノクの因子を入れればいいんだ。

藤田 そうそう、戻せばいい。アンドロイドの技術があれば、僕いくらでも出られますから。

村上 そうそう。

半田 全員死なないよね。細胞か何か残っていたら、巧だってアンドロイドとして再生できるかもしれない。

――いつでも再登場できる土壌がありますからね(笑)。最後に半田さんから、読者へのメッセージをいただければ。

半田 二度、三度観ることで気づくシーンが変わってくる作品だと思うので、ぜひ何度でも観てもらいたいです。そして伝えておきたいのは、決して僕たちは同窓会映画を作るつもりはなかったということ。それは僕ら以上に、白倉(伸一郎)プロデューサーや田﨑監督が、最も避けたかったことだと思うんですよ。

僕らはみんなでまさに夢の続きであり、『555』の新たな出発点になるようなものを作ったつもりなんです。だから、もし次の『555』があるとしたら、『パラダイス・リゲインド』を起点として続けていける。今作はそんな新しいスタートの作品だと思っています。

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