名門貴族・ファントムハイヴ伯爵家の当主シエルと彼に仕える執事セバスチャンが学園の謎に迫る、アニメシリーズ最新作『黒執事 -寄宿学校編-』が2024年4月より放送がスタートした。
今作で名門寄宿学校ウェストン校に潜入することとなったセバスチャンとシエル。
二人の前にいかなる事件が立ちはだかるのか。演じる小野大輔さん、坂本真綾さんに物語の印象と、収録現場での思い出話を伺った。

>>>アニメ『黒執事 -寄宿学校編-』で活躍するセバスチャン、シエル、「P4」メンバーを見る(写真15点)

――『黒執事』シリーズの新作が放送されることとなりました。お話があった際のお気持ちはどんなものでしたか。

坂本 貴重な機会をいただけたと思い、光栄に思いましたね。私にとってシエルは、当時まだ少年のキャラクターはあまり演じたことがなかったので、かなり苦労した思い出があるんです。
あれから約15年を経て声優として経験を積んできたつもりなので、今だったらより細やかに彼の言葉を表現することができるかもしれない、ご縁があればもう一度演じてみたい、という気持ちがありましたから。

小野 ご褒美をいただけた感じがしましたね。前作『豪華客船編』で物語も一区切りがついた感じもあり「もうセバスチャンを演じることはないかもしれない」とすら思っていたんです。そんな折に今作のお話をいただけたのは純粋に嬉しかったですし、また挑ませてもらえることにワクワクしました。

――久々にセバスチャン、シエルを演じるに当たり、何か準備をされましたか。

坂本 第一話の収録前は緊張もあって、しっかり準備してアフレコに臨んだんですが、スタジオで小野さんの声を聞いたら自然とシエルに調律が合った気がして、そこからは自然に演じられたように思います。


小野 ありがたいです。一方の僕も、収録前は多少の不安を感じていました。セバスチャンの演じ方は記憶しているつもりでしたが、長い時間を経てそこにブレが生じている可能性があると思っていましたから。
でも真綾ちゃんの演技を聞いたら、自然とセバスチャンになる感じがして、不安が消し飛んだ感じがしました。それと同時に、もし自分がブレていたら真綾ちゃんが指摘してくれるだろうという信頼感が安心させてくれました。僕と真綾ちゃんの収録タイミングを合わせてくれた制作サイドの皆さんには、すごく感謝しています。


坂本 一番近くでシエルとセバスチャンを見てきた同士ですからね。お互いの間にある信頼感はすごいと改めて感じられました。これもバディものを演じる醍醐味ですよね。二人で力を合わせて作品全体の空気感を作れたのは、良かったんじゃないかと。

――今作の舞台となるのは名門寄宿学校ですが、こちらの印象はいかがでしたか?

坂本 普段はなかなか入れないような場所を覗き込めるのも、本作の面白さですよね。

小野 男子寮というとある種の「閉鎖的な空間」というイメージ。
知らない世界なのでやはり興味を惹かれました。

――そんな学校に、セバスチャンとシエルが潜入することになります。

坂本 実を言うと最初はシエルのことがちょっと心配だったんですよ。彼自身は孤高な存在で、集団行動が得意とは言えないじゃないですか。にも関わらず、寄宿学校に潜入するとなると一日中誰かと一緒に過ごさなくてはならない。「同室の子とうまくやっていけるのかな?」なんてことを考えずにはいられなかったです。


ただ、私の心配をよそにシエルは人当たりの良いさわやかな少年を演じていて、その姿に驚かされましたね。それと同時に、これまで見ることがなかったシエルの笑顔や、先輩たちに対する従順な態度も見ることができて、新鮮な気持ちになりました。

小野 一方のセバスチャンはといえば、今回は寮監という立場で寄宿学校に潜入します。そのおかげで彼自身の新たな一面が見え、演じ方にも幅が生まれたように思います。

坂本 お互いが学校内で会った時の空気感も独特でしたよね。シエルが笑顔でセバスチャンに話しかけたり、あんなところ、これまで見たことがなかったので驚きました。


小野 そうそう。そんなシエルを見て、セバスチャンは「無理してるな」と思っている。その仲良く喧嘩している関係性こそ、まさに『黒執事』という感じなんですけれどね。

坂本 確かに(笑)。ただ、演技的にはこれまでにないものを求められる感じもありました。これまでもシエルが ”結果的に” 可愛い瞬間は度々演じてきたのですが、彼が狙って可愛く振舞う瞬間はほとんどなかったんですよ。先輩ににっこり微笑んで先輩に取り入ろうとするシーンでは、音響監督さんからも「ここはとにかく可愛く演じてください」と念を押されて、かなりのプレッシャーを感じつつ、自分の持つ「可愛い」の引き出しを総動員して演じました。

小野 こういう話を聞いていると、シエルと真綾ちゃんって似ていると思うんですよ。すごく凛として時にクールで、だからこそ可愛さやあざとさを求められた時には迷いや葛藤が生じる。良い意味での不器用さを持っている。

――逆に坂本さんから見て、小野さんとセバスチャンに似ている点はありますか。

坂本 セバスチャンみたいに意地悪なところはないですね。その他は……あまり思いつかないかも(笑)。

(C)Yana Toboso/SQUARE ENIX,Project Black Butler

――久々に『黒執事』の収録を行った際の印象はいかがでしたか。

坂本 難しかったですね。特に今回は従来のシエルとは違う、思いっきり叫んだり笑ったりというシーンが多かったので、男の子らしい声をキープしながら表現するのが大変でした。
ときには上手くいかず何度か録り直しもさせてもらったシーンもあって、新キャラで今作から参加している若いキャストの子たちの前では少し不甲斐なかったですね……。

小野 そんなことないない(笑)。でも、彼らも普段の真綾ちゃんとの違いに驚いたかもしれない。クールに見える真綾ちゃんのエモーショナルな部分が見られる収録現場になりましたから。

――共演者の方のお話もお聞きしたいです。今作には新キャラクターとして4人の監督生「P4(プリーフェクト・フォー)」が登場します。

小野 いいキャラクターですよね。四者四様に全く違う魅力を持っていて、そこに乗るキャストの皆さんの演技も素晴らしかったです。ただのイケメンとしてではなく、きちんと個人の魅力を引き立てるような演技だと感じました。おかげで各々のキャラクターがより引き立っています。

坂本 彼らの演技によって「P4」のキャラクターが立体的になったように思いますね。どのキャラクターもイケメンなので、ぶっちゃけ極端な言い方をすれば「声が良ければOK!」みたいな捉え方もできちゃうと思うんですよ。でも彼らはみんな声の魅力だけでなく、それぞれがキャラクターの内面を表現するために独創的に演じていて、本当にすごいなと思いました。結果として、アニメならではの魅力がそこに生まれたと思います。

――4人の中で特に気になるキャラクターはいますか?

小野 エドガーですね。演じている渡部俊樹くんにも興味津々ですよ。すごくキャラクターが立っていて……。

坂本 そうそう、初登場時からインパクトが強くて、キャラクターが確立され過ぎていましたね(笑)。

――物語後半には『黒執事』お馴染みの面々も登場していきます。

小野 あれは嬉しかったですね。開始当初の気持ちに戻れたような感覚を味わえて。思わず懐かしさを感じずにはいられませんでした。

坂本 今作は舞台が寄宿学校ということもあって、お馴染みのキャラクターは登場しないかと思っていたので。でも、気づけば自然な流れで顔馴染みがどんどん増えていって……昔からのファンにはたまらないものがあると思いました。

小野 彼らの存在は僕らにとっても精神安定剤になっているよね。馴染みのキャストの声を聞くとホッとする。改めて『黒執事』はみんなで作っている作品だと感じました。

――では最後に、お二人にとって『黒執事』はどんな作品でしょうか。

小野 代表作を聞かれた時、すぐに思いつくのが本作です。自分の人生を変えてくれた作品だと思っています。

坂本 アニメのお仕事に現在進行形で関わらせていただく中で、「『黒執事』、観ていました」と言われることがとても多いんですよ。そこに演じるに当たって苦労した思い入れも加わって、私にとっても愛着ある作品になっています。もし願いが叶うなら、この先もアニメを作り続けてほしいし、シエルを演じ続けたいです。

小野 「当時より良いお芝居が出来るはず!」って今なら思えるしね。

坂本 15年前は収録の度に自分の力不足に直面して「早く終わってくれ……」と思っていたのにね。私も成長しました(笑)。

(C)Yana Toboso/SQUARE ENIX,Project Black Butler