CB1000R(167万900円)

 Apple CarPlayやAndroid Autoに代表されるように、クルマとスマホを接続して、ナビや音楽、メッセージを見るのは当たり前の時代。ではバイクはどうなのでしょう? それを実現したのが、マイナーチェンジしたHondaのバイク「CB1000R」です。

さっそくそのライディングフィールと共に、最新のインフォテインメントシステム「Honda Smartphone Voice Control system(HSVCS)」を体験してみました。


大型二輪免許取得したてだけどHonda「CB1000R」でスマホ連携を試した!
教習所で大型自動二輪のみ履修する波状路に挑戦する筆者

 話は、担当編集のスピーディー末岡から「CB1000Rがスマホと連携できるみたいだから記事書いて」という取材依頼にさかのぼります。「インフォテインメント系の取材なら、サクッとできる」と思った私。ですが、そう簡単ではありませんでした。というのも、私が大型二輪免許を持っていないから。Hondaに相談したところ、当然ながら免許を取得していない人物に車両を貸し出すことはできないとのこと。

ならばとASCII.jpのバイクレビューでおなじみの大型二輪免許を取得している美環さんに打診。ですが小柄な彼女の返答は、「CB1000Rは足が届かないから無理です」という、お断りの連絡が。これは無理だと担当編集のスピーディー末岡に相談したところ「YOU、免許取っちゃいなよ!」と言うではありませんか。ということで大型二輪免許を取得すべく、教習所に入校することに。その模様は別記事で公開する予定ですが、晴れて免許を取得できたので、記事化できる運びとなりました。10万円以上の経費がかかった大赤字記事です。


大型二輪免許取得したてだけどHonda「CB1000R」でスマホ連携を試した!
CB1000R

 CBとはHondaの4ストロークエンジンを搭載するオートバイのシリーズ名で、大ざっぱに言えば、CBの後ろにRが付けばフルカウルのスポーツタイプ、何もつかなければエンジンまでカウルやカバーのないネイキッドモデル(もしくはハーフカウル)になります。また同社はCBもしくはCBRの後ろに排気量を表す3桁もしくは4桁の数字が並ぶのが慣例。さらに数字の後ろにRが付くとスポーツ系であることを示し、そのRの数が多ければ多いほど、スポーツ性が高くなります。今回ご紹介するCB1000Rは、つまり「1000ccの4ストロークエンジンを搭載したネイキッドタイプのスポーツバイク」ということになります。わかりやすいですね。


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教習車でおなじみのCB400 SUPER FOUR。
多くの方が初めて触れるバイクでもある

 このCB1000Rを長兄に、CB650R、CB250R、CB125Rの4車種をラインアップ。普通二輪免許の最大排気量である400ccのモデルがないじゃないか! と思われますが、そこは教習車でおなじみの「CB400 SUPER FOUR」がありますので。


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CB1000R

 CB1000Rが誕生したのは2018年のこと。実は2007年に初代が欧州を中心に登場していたようですが、こちらは日本では発売しておらず、日本では2代目からの販売となりました。当時のプレスリリースによると「CB1000Rは開発の狙いを、「魅せる、昂る、大人のためのEMOTIONAL SPORTS ROADSTER」と定め、スポーツバイクとしての普遍的な魅力である操る楽しさに加え、上質な走りを実現するために、マスの集中化と軽量化を図っています」とのこと。ちょっと分かりづらいですが、私はオトナに似合うスポーツテイストのバイク、と解釈しました。


 というのも、Hondaの大型バイクラインアップを見ると、1000cc以上に限ってみても白バイでも使われているCB1300 SUPER FOUR、CB1100、CRF1100L、レブル1100、CBR1000RR-R FIREBLADE、GL1800、CRF1100L Africa Twin、CB1000Rなどと種類が豊富。それぞれタイプが違うのですが、ザックリ言えば「CBR1000RR-Rほどガチじゃなく、ネイキッドタイプでスポーツっぽい走りを楽しみたい。けれどCB1300 SUPER FOURよりはコンパクトなモデル」が位置づけの様子。


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CB1000Rのヘッドライト
大型二輪免許取得したてだけどHonda「CB1000R」でスマホ連携を試した!
5インチのフルカラーTFT液晶メーター
大型二輪免許取得したてだけどHonda「CB1000R」でスマホ連携を試した!
CB1000R採用のY字7本スポーク

 今回のマイナーチェンジでは、ヘッドライト、ラジエーターシュラウド、エアクリーナーカバーの形状を変更。またシートレールやリアフェンダーをスリムな形状にするとともに、ホイールをY字7本スポークに変更。そして記事冒頭のバイクとスマホの連携機能を可能とした、5インチのフルカラーTFT液晶メーターが装着となります。

ボディカラーはマットバリスティックブラックメタリック、キャンディークロモスフィアレッド、マットベータシルバーメタリックの3色展開です。


 それでは、今回の取材するきっかけとなった「スマホ連携」を試すことにしましょう。バイクとスマホの連携は、このCB1000Rが初めてというわけではありません。すでに同社GoldWingやCRF1100L Africa Twinには、Apple CarPlayが実装されています。今回のスマホ連携の最大の特徴は、Honda自らが開発したところ。Apple CarPlayをバイクで使ったことはないのですが、バイクメーカーの視点で作った方がユーザビリティーに優れるものができる、と判断したのでしょう。


大型二輪免許取得したてだけどHonda「CB1000R」でスマホ連携を試した!
スマホとバイクをBluetoothで連携

 仕組みは、Honda Smartphone Voice Control systemというアプリをインストールし、車両とスマートフォンをBluetoothで連携させるだけ。あとは、左ハンドルバーの十字キー、もしくは市販のバイク対応Bluetoothヘッドセットによる音声コントロールで、ナビゲーションや音楽、電話、メッセージサービスなどを、スマホに触れることなく行なうというもの。バイク運転中、電話が鳴ったからといって画面をタップ、というわけにはいきませんから、音声コントロールやキー操作で行うというのは理にかなっています。


大型二輪免許取得したてだけどHonda「CB1000R」でスマホ連携を試した!
アプリとバイクを連携

 まずアプリをインストールするのですが、これがなんとiOS非対応! イマドキ両対応じゃないの? とiPhoneユーザーの筆者はASCII.jpスマホ担当でもあるスピーディー末岡の手を借りる事に。続いて車両と接続するのですが「どうやってスマホと車両をBluetooth接続するのか」がワカラナイ。我々、マニュアルを見る前に色々と触るクセがあり「こういったものって、ボタン長押しじゃないの?」などとイジり倒します。でも連携せず。仕方なく車両のマニュアルを見るわけですが、これが昔大流行したゲームブックのように、詳しくは〇〇ページへ、が多すぎて難解。アラフォーの目には見づらい小さな文字と相まってイライラは頂点に達します。もっとも車両に積載するマニュアルですから、小さく作るのは仕方のないところ。何も考えずにカンで動かしてきた我々が悪いのです。


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設定メニューを呼び出した様子
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ブルートゥースの登録端末をリセットした様子
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ペアリングに成功!

 こうして悪戦苦闘すること10分、ハンドル左側にある十字キーを右長押しでメインメニューを呼び出し、そこからBluetooth機器をリセット、そしてペアリングが行なわれました。リセットしたのは、どうやら車両側が1台しか登録できないという仕様のため。複数スマホ持ちの方は、ちょっと注意が必要です。


 アプリを起動すると、ナビや電話、メッセージ、音楽がスマホ上に表示。併せてバイクのディスプレイ右側に状態が映し出されます。ハンドル右手の十字キーとバイク用ヘッドセット(別売)でコントロールできるとのことですが、筆者は友達がいないのでヘッドセットの用意はなく、今回は十字キーでコントロールすることに。


大型二輪免許取得したてだけどHonda「CB1000R」でスマホ連携を試した!
ナビを起動した様子。ディスプレイに方向が表示されるようになる

 ナビは車両のディスプレイに方向表示するというもの。これならスマホホルダーをバイクに取り付けなくてもナビを使うことができます。矢印も大きくて見やすく便利。ただ利用するマップソフトがGoogleマップですので、「このルートはないだろ?」はあったりします。


大型二輪免許取得したてだけどHonda「CB1000R」でスマホ連携を試した!
音楽再生を利用した様子
大型二輪免許取得したてだけどHonda「CB1000R」でスマホ連携を試した!
音楽再生を利用した様子

 音楽再生はYouTube Musicで利用してみました。十字キーで音量調整やトラック送り、そして一時停止をします。トラック戻しができないのは残念なところ。自分はバイク運転中に音楽は聴かないのですが、好きな音楽を楽しみながらツーリングをされる方には良い機能ではないでしょうか(ヘルメットにバイク用インカムを装着して使います)。


大型二輪免許取得したてだけどHonda「CB1000R」でスマホ連携を試した!
電話をかけようとしている様子

 電話はスマホのマイクを使い「栗原に電話」と頑張ったのですが、どうやら音声認識はイマイチで、数回やってようやく起動。ここもまたAndroid端末に依存するところだと思いますので、Hondaのアプリ云々というものではないかもしれません。こちらから発信するより、着信専用として使うのがよいでしょう。ちなみにメッセージ機能は上手くいきませんでした。Android AutoもApple CarPlayもですが、音声認識によるメッセージ機能、未だに一度たりとも成功したことがありません。


 「おー、これならバイクにスマホホルダーを付ける必要もないし、なによりタップとかしないから安全だよね」というわけで、バイクとスマホ連携の取材は終了。CB1000Rを返却して……、というわけにはいきませんので、車両の説明に移ります。


その名に恥じない運動性能
排気音も走り好きにはたまらない

大型二輪免許取得したてだけどHonda「CB1000R」でスマホ連携を試した!
排気量1000ccの自然吸気型直列4気筒水冷エンジン

 エンジンは 過去に販売されていたCBR1000RRをベースとした、排気量1000ccの自然吸気型直列4気筒水冷エンジン。吸排気系を最適化。出力は145馬力/10.6 kgf・mを達成。つまり軽自動車よりも遥かに高出力なエンジンが自分の足の間にある、いや、エンジンの上に跨って乗る、というわけです。それにしても馬145頭分って……。


大型二輪免許取得したてだけどHonda「CB1000R」でスマホ連携を試した!
スタンダードモード
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レインモード
大型二輪免許取得したてだけどHonda「CB1000R」でスマホ連携を試した!
ユーザーモード
大型二輪免許取得したてだけどHonda「CB1000R」でスマホ連携を試した!
スポーツモード

 アクセルコントロールにスロットル・バイ・ワイヤシステムを装備。いわゆる電子制御で、出力特性とスロットルレスポンスを変化させるパワーセレクターと、後輪の挙動変化を抑制するトルクコントロール、そしてアクセルを閉じたときのエンジンブレーキの強さを制御するセレクタブルエンジンブレーキという3つのパラメータを変更するとのこと。この3つのパラメータを走行シーンに合わせて「SPORT」、「STANDARD」、「RAIN」というプリセットと、ユーザーの嗜好に合わせて任意で設定できる「USER」の4種類から選択可能としています。もちろん厳しい排出ガス規制であるユーロ5に対応済みです。


大型二輪免許取得したてだけどHonda「CB1000R」でスマホ連携を試した!
右手レバー側
大型二輪免許取得したてだけどHonda「CB1000R」でスマホ連携を試した!
左手レバー側
大型二輪免許取得したてだけどHonda「CB1000R」でスマホ連携を試した!
シフトペダル。標準でクイックシフターを搭載

 クラッチは、レバー操作の低減と急激なエンジンブレーキによる後輪の挙動を軽減するアシストスリッパークラッチ機構を採用。クラッチ操作を必要とせず、シフトペダルのみでシフトチェンジを行なうクイックシフターも標準装備。クルマでいうところのセミオートマです。クラッチレバーがありますので、AT限定大型二輪免許での運転は不可。


大型二輪免許取得したてだけどHonda「CB1000R」でスマホ連携を試した!
CB1000Rを側面から見た様子

 フレームは、高張力鋼のモノバックボーンで、パッと見た感じの大きさはGB350とほぼ同等といったところ。ただし幅は広くて、さすが大排気量の直列4気筒エンジンを搭載しているということだけはあります。足つきは身長185cmの筆者で両足ぺったり。でもGB350ほどは膝は曲がらず。大抵の方は、右脚をブレーキペダルに乗せたまま、バイクを少し傾けて左足を接地させて停車すると思います。


大型二輪免許取得したてだけどHonda「CB1000R」でスマホ連携を試した!
倒立フロントフォーク
大型二輪免許取得したてだけどHonda「CB1000R」でスマホ連携を試した!
サスペンション調整機構
大型二輪免許取得したてだけどHonda「CB1000R」でスマホ連携を試した!
サスペンション調整機構
大型二輪免許取得したてだけどHonda「CB1000R」でスマホ連携を試した!
リアサスペンション

 足回りに目を向けると、サスペンションは倒立フロントフォークにショーワ製セパレートファンクションビッグピストン(S.F.F-BP)を採用。リアは片持ちのプロアーム形状が採られています。


大型二輪免許取得したてだけどHonda「CB1000R」でスマホ連携を試した!
リアタイヤ

 タイヤはフロント、リア共に17インチで、ミシュラン製を採用。広報写真を見る限り、マイナーチェンジ前はブリヂストン製だったようです。個人的にクルマの試乗時、ミシュランタイヤが装着されているとテンションが高くなるので好印象。バイクのタイヤもいいのでしょうか?


大型二輪免許取得したてだけどHonda「CB1000R」でスマホ連携を試した!
ヘッドライトの上に設けられたETCアンテナ
大型二輪免許取得したてだけどHonda「CB1000R」でスマホ連携を試した!
ETC車載器

 ETCやグリップヒーターを標準装備するあたりは、さすが高級車といったところ。ETCのアンテナはヘッドライトの上に設けられ、統一感のあるデザインに仕上げられています。ちなみにバイクのETCは、防塵、防水、防振対策が施されており四輪車よりも本体そのものが高額で、かつ取り付け工賃も高いですから、最初から搭載されているのはうれしい限りです。


東京都内をぐるっと試乗
街乗りでもパワーを持てあます感じはナシ

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CB1000R

 大型二輪の免許を取得したばかりの私。乗ったことがある大型バイクは教習車であるNC750のみで、大型二輪で公道を走るのは初めての体験。ということで、ここから先は「普段、250ccの普通二輪を乗っている者が、大型二輪に乗るとどう感じるのか」という観点で話を進めさせていただきます。ちなみに乗っているモデルがCBR250RRということからお察しの通り、筆者は1万1000回転までキッチリ回すタイプです。それでは試乗の様子を、ありのままレポートしながら話を進めたいと思います。


 私は試乗前に事前勉強は一切しません。というのも、最初のインプレッションを大事にしたいから。ですのでCB1000Rについて知っていることは、排気量1000ccの4発エンジンを搭載したネイキッドモデルで、スマホ連携ができるバイクということのみ。あと、見た目のイメージからして、教習車のお友達という程度の認識です。教習車はアクセルを捻っても、それほど加速しませんし、普段乗っているCBR250RRとてたかがしれています。過去に乗った普通二輪のモデルも、アクセルを回してナンボの世界。バイクとはアクセルを回す乗り物というのが筆者の考え。


 車両は青山のHondaでお借りしました。地下駐車場でエンジンを始動させたところ、その音の大きさと低音の太さに驚き。その音はまさに王者の咆哮で、普段乗っているCBR250RRとはまるで違います。しかもアイドリング回転数が1000回転程度と、自動車並に低いことにも驚愕。走行モードがSTANDARDであることを確認してから、クラッチをつないで地上階へと向かいます。この地下駐車場のスロープは急峻で、しかもグルグル回るタイプ。「ここでエンストしたら地獄だなぁ」と思いながら登坂しているのですが、そこをアイドリング状態の1速で登ってしまうのだから驚き。「大型バイクのトルクは太い」ことは教習車で理解していたのですが、それにしてもアイドリング状態で登ってしまうとは……。自動車でも、アイドリング状態で登ったクルマはないと思います。


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青山一丁目駅すぐにある本田技研工業本社ビルを出てすぐに青山一丁目の交差点がある
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4車線あり、右左折それぞれ専用レーンが設けられている
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すぐにオレンジの車線。またいでしまったらアウトだ

 車両出口は外苑東通りに面しており、必ず左折しなければなりません。しかも青山一丁目の交差点が近いので、オレンジラインがすぐ近くにあります。時折白バイがいますので、うっかりオレンジカットは絶対に避けなければなりません。4車線あるうち、最も左側は渋谷方面。中央2レーンは信濃町方面、最右レーンが赤坂方面になります。車両をお借りした時は、いつも新宿方面へ行くので、中央レーンへ。クルマと違い、スッと合流できるのがバイクのよいところ。


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青山一丁目の交差点。派出所側から交差点をみた様子
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青山一丁目から信濃町方面へ向かう

 青山一丁目の交差点を直進しようと信号待ち。レッドシグナルがグリーンに変わり、普段通りにアクセルを捻った瞬間、身体が置いていかれそうなほど、鋭い加速でCB1000Rが発進。いきなり異次元モード突入で、その加速力はNISSAN GT-R NISMOでローンチ・コントロールを入れてスタートしたとき以上! あっという間に青山一丁目交差点前派出所を通過。借りた車両で 速度違反した、という事案は絶対に許されません。すぐにアクセルを戻してブレーキで減速。「抜いちまったヨ───アクセル」と、某漫画の平本さんのようにカッコよく言いたいのですが、現実は冷や汗ダラダラで足はガクガク。なんだコレは!?


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S字コーナーの凸型舗装
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右手に赤坂御所を見ながら緩やかな右コーナーへ

 アクセルをほんの少しだけひねって、2速、3速へとシフトアップ。クイックシフター搭載なので、アクセルを入れてないとシフトアップできません。回転数は1500回転程度。CBR250RRならアイドリングの回転で、この回転数で3速に入れたらエンスト間違いナシ。こんな低回転で走ったことなんて、今までありません。そのままS字コーナーへ侵入。このS字は路面に凸型の舗装がされており、サスペンションの様子を感じることができます。サスはかなり柔らかめでショックは穏やか。「なるほど、これは路面の起伏をよく吸収するタイプの足なのか」と理解します。なによりタイヤが、いかにもミシュランという剛性と柔らかさの両立と安心感が得られる質の高さにホッとします。車重は213kgと普通二輪に乗る身にとって重さを感じるのですが、重心が低いためか、積極的に姿勢変化ができそう。


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権田原の交差点へ向かう直線
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権田原の交差点。ここを右折する

 そのまま権田原の交差点へ。車線は2車線から一気に4車線へと増えます。新宿へ行くなら、直進して四谷三丁目を左折なのですが、借りた直後は車両チェックも兼ねて、いつも少しだけ遠回りをします。最右車線へ移動し、四谷方面のレーンへ。なぜ四谷へ向かうのかというと、赤坂御用地の北側に沿った都道には、赤坂オー・ルージュ(私が勝手に命名)があるから。


 オー・ルージュとは、ベルギーにあるスパ・フランコルシャンサーキットの名物コーナーの名前。厳密に言えば、下りながらの左コーナー(2コーナー)がオー・ルージュで、その後の登りながらのS字(3コーナーと4コーナー)をラディオンと呼ぶのですが、一般的にはこの複合コーナーをオー・ルージュと呼びます。縦横方向にGがかかり、さらにドライバーシートからの風景が壁に挑むように見えることから「現在世界中に存在するサーキットの中で、最も度胸が試されるコーナーのひとつ」と言われています。ちなみにオー・ルージュの名は、コーナー下に流れる川の名前から。なんでも、川の水が鉄分により赤く見えることから、フランス語で「赤き水」という意味のオー・ルージュと名付けられたそうです。


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安鎮坂の標識

 赤坂オー・ルージュの正式名は安鎮坂。付近に安鎮(安珍)大権現の小社があったため、その名前が付けられました。ですが安鎮とは名ばかりの事故の名所で、有名なところでは過去に大物芸能人がバイクで走行中、坂下で自損事故を起こし重傷を負いました。また、赤坂御所という場所柄、警察官の姿も多く、管轄の赤坂警察署の重点取締ポイントにも指定されている場所。景気よくコーナーに挑んだクルマが、その先でキップを切られていた、という光景を時折目にします。


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赤坂オー・ルージュ。右手に赤坂御所を望む
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左手には神社庁がある

 CB1000Rは、赤坂オー・ルージュへ続く栃ノ木の並木道を走行。心地よい排気音を響かせながら、都内でも稀な、静かなたたずまいの直線道を走ります。すると、神社庁のあたりから路面が赤色に。オー・ルージュは赤い川ですから、こちらは赤い道のルート・ルージュといったところ。ですが路面がクセモノで、雨が降ると滑りやすくなります。


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ややきつい下り坂を右に傾けながらダウンヒル
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赤坂御所の門前
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門前で2車線に増える。ここはキープレフトで左車線

 下り坂を、バイクを少し右に傾けながら侵入。バイクに重量があり低重心ですから安心して下り坂に挑めます。コーナーは次第にきつく、坂も急になっていきますので、リアブレーキで速度を調整。そして赤坂御所の正門で一気にキツい左コーナー。肩から曲がるように切り返します。車線が2車線に増えるので、右側の車線に行きたいのですが、ここはキープレフトで左側の車線を選択。というのも、上り坂の先にちょっとしたトラップがあるから。交差点なので赤信号なら止まります。フロント2ローターのブレーキは制動力抜群でタッチもシッカリ。


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交差点の先は上り坂へ

 あとは緩やかな左に弧を描く急な上り坂を駆け上がります。CB1000Rの太いトルクは、不用意に回転数を上げなくてもグイっと加速。CBR250RRだと結構回していきますので、この違いを肌身を持って体感。


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坂の頂上付近
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迎賓館
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迎賓館を過ぎてすぐに3車線に

 坂の頂上付近にあるのは、左側に学習院の中等部、右手に迎賓館。ここで2車線は3車線になるのですが、右側の車線のままだと、右折専用レーンに入ってしまいます。景気よく右車線を走っていたクルマが、ノーウインカーで左車線に変更したところ、合図不履行違反として笛を吹かれた現場を見たことがあります。ですのでキープレフトがベストというのが私の考え。ちなみにこの付近で路駐をすると、ドライバーが乗っていても、すぐにキップを切られてしまいますので注意しましょう。


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四谷見附の交差点は5車線
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四谷見附の交差点。斜向いに見えるのはJR四ツ谷駅

 そのまま直進すると四谷の交差点。左に曲がれば新宿へ、直進すれば飯田橋、右に曲がれば皇居へ向かいます。以上が、私がHondaから車両を借りた際に必ず通る最初のテストコースになります。


 ここまで走ってみて感じたのは、車重はあるものの、走り始めると「取り回しが……」ということはないということ。そして圧倒的なパワー。誤って信号ダッシュをした時は結構回してしまいましたが、その後は2000回転程度しか上げておらず、アクセルをちょっと回しては、すぐに戻すの繰り返し。ギアも3速までしか使っておらず、明らかにCBR250RRとは隔絶たる世界。4発エンジンは振動が少なく、実にモーターフィーリング。単気筒や2気筒は長時間乗ると手がしびれて……ということがあったりもしますが、そういったことはなさそう。一方発熱は凄く、停止中は汗が噴き出してきます。右足で地面に着くと、エキゾーストパイプが近いためか、ふくらはぎに熱を感じます。右足はブレーキペダル、着地は左足が鉄則です。


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CB1000R

 何となく軽自動車に乗った後、大排気量車に乗るとアクセルペダルをあまり踏まないで走ってしまう違和感にも似ているのですが、いっぽうで「そうやって走る事を、このバイクは求めているの?」という疑問も沸いたり。


 バイクそのものに全体的に精密感や重厚感があり、高級品に触れているという感触にニンマリ。バイクも100万円を超えると、こういう質感が得られるのかと感動しきりです。クイックシフターもCBR250RRがカチッと入るのに対して、柔らかでありながら、シッカリ節度感のあるフィール。重量感と安定感、そしてカチッとした質感が、どこかBMWのクルマに似ているな、と乗りながら思った次第です。


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CB1000Rのリア

 目的地に着いたところで駐輪作業。200kg超えのバイクは、慣れていないこともありますが、かなり体にこたえます。一休みして頂いたカタログをチェック。そこでCBR1000Rが145馬力のモンスターであること、そしてストリートファイター系のバイクらしいということを知り、「とんでもない化け物を借りてしまった」事に気づく大型二輪初心者。確かに最初は怖かったですが、乗ってしまえば何てことは……。


 その後、だんだんとコツをつかんできました。のんびり走らせることもできるのですが、味わいを楽しむというより、どうやら前傾姿勢で走ると面白い模様。味わいを求める向きには、CB1000Rは違うかもしれません。ですがストリートで戦うなら(誰と?)明らかにこちら。


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ビッグトルクを伝えるリアタイヤ

 当然ながら高速道路も走行。CBR250RRで100km/h巡行をすると、6速8000回転キープとなり、色々と大変なのですが、こちらは6速4000回転でド安定。クルマも小排気量と大排気量で差がありますが、バイクだと、その差はより歴然といったところ。ただカウルがないので、空気の壁を全身で受け止めることになります。折角なので、合流などで思いっきり引っ張ってみることに。エンジンモードをSPORTにセットし、前傾姿勢で身構えながら2速でアクセルを思いっきり捻ると145馬力が炸裂! 官能的な排気音と共に怒涛の加速は、今までのスポーツカーでは味わったことのない世界で刺激的。Hondaが2025年で国内での四輪用エンジン生産を終了する報道があり、VTECなどに心をときめかせた身としては寂しい想いをしていたのですが、我々には2輪があると思った次第。そしてCB1000Rがあれば、四輪のスポーツカーはイラナイとさえ思えてくるから不思議。


 とはいえ、二輪も2035年でガソリンエンジン搭載車の国内販売は禁止になる方向。あと10年ちょっとで、この刺激的な乗り物を手に入れることができなくなるというわけです。ですので、アラフォーの私としては、年齢的に「ガソリンエンジン搭載のバイクを、販売規制前に購入し生涯大切に使いたい」と考えたりも。CB1000Rを手に入れ、郊外のワインディングで安全とマナーを守りながらライディングスキルを磨くチョイ悪オヤジ。いいかもしれません。


 こうして大排気量バイクに触れた私。ではCBR250RRが霞んでしまったのかというと、それはなく。CBR250RRは「どこまでも躊躇せずアクセルを思い切り回せる楽しさ」があり、一方のCB1000Rは「どこまでもアクセルを回せないもどかしさ」を感じました。つまりCB1000Rを購入したとしても、CBR250RRは手放せないなぁと。バイク乗りの方によっては、趣味の大型バイクの他に、普段乗り用としての原付2種の2台持ちをされている方がいらっしゃるとか。凄くわかります。原付2種なら、ファミリー特約で保険料が安くなりますしね。このように、バイクの世界は「大は小を兼ねない」のですね。


大型二輪免許取得したてだけどHonda「CB1000R」でスマホ連携を試した!
ウイングマーク

 純ガソリンエンジン搭載バイクの発売禁止の日が近づいているのは事実。アラフォーという年齢を考えると「ガソリンエンジンでアガリのバイクを」という気持ちにもなります。CB1000Rは、自分にとって、その候補になりうる1台でした。


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