普段はレースクイーン、ラリーではメカニック
世界的イベントで荏崎ろあが羽ばたく!

 皆さんこんにちは、レースクイーンの荏崎(えざき)ろあです。前回から時間が経ってしまいましたが、今回はラリージャパン 2022のDAY2(11/11)から最終日(11/13)までの様子をメカニック視点でお伝えしていきます。まだ前半の記事を見ていないという方は、ぜひ前半から読んでくださいね(現役RQの荏崎ろあ、WRC・ラリージャパンで世界戦のメカニックデビュー!)。


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SUPER GTではレースクイーン、ラリーではメカニックの荏崎ろあです!

 DAY2は深夜? 朝? の3:30には起床して、4:30にサービスパークに到着すると、まだ豊田スタジアムも真っ暗。普段レースクイーン業務で早朝集合することも多いのですが、やはりメカニックの朝はそれとは比較にならないほどの早さです。11月でも早朝はかなり冷え込んでいて、連日作業で疲労が溜まった身体にはこたえます。


RQの荏崎ろあがメカニック視点で振り返るラリージャパンの過酷さと達成感
朝から多くの人で賑わった豊田スタジアム
RQの荏崎ろあがメカニック視点で振り返るラリージャパンの過酷さと達成感

 朝イチのサービスAは15分間です。ウェルパインモータースポーツのプジョー・208R2は、6:36にサービスインで、6:51にサービスアウトします。今回のサービスは、前日のSSがキャンセルでまったく走行していないため、タイヤは外さず簡単なチェックのみです。


RQの荏崎ろあがメカニック視点で振り返るラリージャパンの過酷さと達成感
チーフメカニックの早水さんにいろいろ教えてもらいながら作業をしました。決して怒られているわけではありません

 私は車内に積んであるスペアタイヤを追加でもう1本積む作業をしました。気温や天候によって積むタイヤの本数も種類も変わります。前日のDAY1はSSが1本のみだったので、スペアタイヤは1本にして車両を軽くして臨んでいたのです。SSが1本だけなら、2本以上のパンクでリタイアするリスクも少ないので、2本のスペアタイヤは必要ない、という判断です。


 本日DAY2からは本格的にラリーも始まり、SSの本数や距離も長くなるので、リスクを考慮してスペアタイヤ2本積みにしたのです。


 今回もタイヤマーキングの作業があるので、サービスを途中で抜けてタイヤチェックポイントに向かいます。相変わらずタイヤの重さには苦戦しましたが、ボンネットピンを締める作業には慣れてきました。


一仕事終えたけど
ラリーの1日は始まったばかり

 朝のサービスが終わったら朝食です。とはいえ、この時点でまだ7:00なので今日は長い1日になりそうです。


RQの荏崎ろあがメカニック視点で振り返るラリージャパンの過酷さと達成感
ラリージャパンは毎日長い1日です

 いよいよスタートしたSS2では、ヒョンデワークスのダニ・ソルド選手の「i20N Rally1」が突然炎上。ハイブリッドシステムから出火したと見られる車両火災は火の回りが早く、車両はすぐに全焼となってしまいました。また、WRC2カテゴリーでチャンピオン争い中のカエタノ・カエタノビッチ選手も心霊スポットで有名な伊勢神トンネルを超えた瞬間の右コーナーでクラッシュ。シュコダ・ファビアRally2 Evoは、ロールケージにもダメージを負う全損状態でリタイアとなりました。


 このようなことがあって、ウェルパインモータースポーツを含む後続車の下位カテゴリー車両はSS2がキャンセルになりました。そして、このSS2でスケジュールが遅れたことにより、SS3もキャンセルに。7台しかタイムを記録できていない状況でSS4に進むこととなりました。


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全然走れてないので、無傷でサービスパークに帰ってきました

 キャンセルが多く、ドライバーたちもフラストレーション溜まりそうだなあと思っていたら、SS4はなんと一般車両がコースへ侵入したために中断キャンセル。期待の若手であるサミ・パヤリ選手のシュコダ「ファビアRally2 Evo」がコーナーを抜けると、正面から白いブルーバードが逆走してきたのとのこと。

コレは考えただけでも恐ろしいです。ありえない事態です。もちろんFIAのコース管制担当も大激怒。後続車のクルーたちがそのままサービスパークに戻ることがアナウンスされました。


 結局、DAY2午前中も走行できたのは、トップカテゴリーであるRally1車両と、一部のRally2車両のみとなってしまいました。FIAのプライオリティのない下位カテゴリーのクルーは満足に競技することができないままサービスパークに戻る形となり、FIAの世界選手権の厳しさを感じました。


アクシデントだらけの午前中が終わり
ようやく午後から走れるように

 お昼近くになると梅本まどか選手から連絡があり、12:36にサービスインとのことです。今回のサービスBは40分。これまで通り車両のサービステントに誘導をして、作業に入ります。メカニックは3人なので、1人がジャッキアップしている間に、2人で左右片方ずつウマを掛けてタイヤ&ホイールを外します。


RQの荏崎ろあがメカニック視点で振り返るラリージャパンの過酷さと達成感
タイヤ交換もテキパキ作業します

 今回のセクションもウェルパインの走行順ではすべてSSがキャンセルとなっており、まったく全開走行をしていないため、大きく整備するポイントはありません。ただ、フロントガラスの汚れや窓の曇りは走行に支障をきたすので、念入りに磨きます。


 そのあとのタイヤマーキングでは、観客も朝に比べて増えており、タイヤチェックポイントにもたくさんお客さんが集まっていて、かなり緊張しました。

苦手なボンネットピンを固定する作業も、視線が多かったからか少し手こずってしまい、恥ずかしかったです。朝は上手くいっていたのになぁ……。


 さて、サービスBを終えて、タイヤチェックを過ぎて豊田スタジアム出ると、クルーはSS5に向かいます。SS5はSS2のリピートステージで、伊勢神トンネルを舞台にしたコースです。午前中の炎上やクラッシュを受けて、コースを一部短縮して走らせるとのことです。村田選手/梅本選手にとってはこのラリージャパンでの初全開走行となります。


 結果としては無事に走り切ったものの、左フロントタイヤをパンク、ホイールを破損したとの連絡がありました。


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ラリーではパンクやホイールの破損は珍しくありません(本人反省中)

 SS6はSS3のリピートステージで稲武の黒田ダムで、こちらも無事に完走。SS7の設楽町はSS4のリピートステージでしたがキャンセルに。SS4走行のときにMスポーツ・フォードのグレイグ・ブリーン選手がクラッシュし、ガードレールが破損された状態で安全性に問題がある、というのがその理由でした。


 最終的にウェルパインモータースポーツにとってのDAY2は、SS2、3、4、5、6、7の計6本のうち4本がキャンセルという不完全燃焼の1日となりました。


いろいろありすぎたDAY2も終了
RQの手作りディナーを食べて回復

 夕方にはDAY2最後のサービスCがあり、SS5で割れてしまったホイールの交換をしました。少し車両をぶつけてしまったようで、右のサイドのステッカーも削れていました。

前回の全日本ラリーモントレー(群馬)では、ホイールを1本割っていたものの、車両は無傷でした。そのため、こんなにマシンやパーツが傷ついた状態で帰ってきたのを見るのは初めてだったので少しびっくりしました。


RQの荏崎ろあがメカニック視点で振り返るラリージャパンの過酷さと達成感
破損してないホイールは綺麗にします

 サービスCは45分で少し長めではありますが、忙しくなるなと感じました。いつも通り誘導して車両を上げます。ホイールの破損に加えて、各種センサー異常でエンジン内で噴いてる燃料が濃くなっているようです。


 この辺は私もどうしてこうなってしまったのか、どうすればいのか分からず見守ることしかできません。自分の分からない分野の作業があるとき、もっと知識を付けたいなといつも思います。


 でも、サービス作業が終わったら、レースクイーンの桐島しずくちゃんと瀬谷ひかるちゃんが夕飯を作ってくれてうれしい驚きです。なんと、水道のないサービスパークでデミ煮込みハンバーグを作ってくれました。現役レースクイーン(私も現役ですが)の手作りご飯は言うまでもなく美味しくて、最高の気分でDAY2を終えられました!


RQの荏崎ろあがメカニック視点で振り返るラリージャパンの過酷さと達成感
現役レースクイーン2人による「デミ煮込みハンバーグ」が! 絶品でした!

ギャラリーステージを見にいったDAY3

 そして土曜日DAY3です。今日も3:30起きですが、だんだんと早起きに慣れてきました。本日も朝からサービスです。


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輪止めの置き方についてレクチャー中

 前日ホイールが割れてしまい、新しいホイールにタイヤを付けて貰わなければいけません。

それを朝のサービスまでに交換して準備しておく必要があります。朝イチのサービスが6時台で、まだDUNLOPさんもタイヤサービスを展開していない時間です。


 ですが、松井監督が前日のうちにDUNLOPさんに頼んでくれていたので、5:30という時間に無事にタイヤを付け替えてもらえました。DUNLOPタイヤサービスのスタッフさんは、全日本ラリーモントレーで挨拶した私のことを覚えてくださっていて、色々気にかけてとても親切に接してくれます。私のクルマのタイヤも次はDUNLOPにしようかなと思ってます(笑)。


 そんなことを思いながら、サービスパークに帰還。私たちのサービスDは6:52にインとのことです。


RQの荏崎ろあがメカニック視点で振り返るラリージャパンの過酷さと達成感
メンテナンスがしやすい場所に誘導するのも仕事です

 今回も私の仕事は車両の誘導からスタート。もう数日誘導をやっていますが、最初は和田メカニックに誘導のやり方でだいぶ指導を受けました。ラリーカーはそこそこのスピードで入ってくるので、うまくポジションを合わせて的確にスロープに上るようにしなければいけません。誘導といっても実は結構難しかったりするのです。


 今回もウマをかけて、右側のタイヤを外して、さっそく組み立てほやほやの新しいタイヤに交換しました。

昨日はSSを2本しか走れなかったので今日こそは無事走れますように、と祈りながらスペアタイヤチェックや窓拭きをしました。


 本日もタイヤマーキングは私の仕事です。サービスを少し早めに切り上げてタイヤチェックポイントに向かいます。朝早いのでお客さんはあまりおらず、緊張しないでタイヤマーキングができました。私は人が居ないとできるタイプなんだと思います(笑)。


 DAY3はSS8/11に額田郡、SS9/12 は三河湖でラリージャパンの象徴的なカットである熊野神社前を駆け抜けます。SS10新城は全日本の新城ラリーでも舞台にもなっている鬼久保です。幅広い高速ワインディングロードで、箱根ターンパイクのような道と言われてなんとなくイメージしやすかったです。そして、最後のSS13/14は岡崎市の河川敷、わずか1.4kmの短い距離を走ります。


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メカニックは走りを見に行けないので、想像力で走りを補完します(笑)

 ありがたいことに、最後の岡崎SSは夜のサービスまでに戻ってくることを条件に、観戦に行かせてもらえることになりました。


 SS10まで無事に走りきると、お昼前にサービスEが始まります。どれだけ汚れてマシンが帰ってくるかと思っていたら、意外と汚れていなくてびっくりしました。聞くと、豊田スタジアムの入り口に洗車ポイントが設置されていて、担当スタッフさんが高圧洗浄機で噴いてくれるそうです。このように「さすがWRC」と思うことがちょくちょくあります。


 このサービスは特に問題がなかったので、基本的なタイヤ付け外しとチェックと窓の曇り防止スプレーをかけて終了です。毎回のことながらトルクチェックは私がやっているのですが、SNSでも「スピードがあって、トルクかけてるろあちゃんカッコイイ」というコメントをたくさん見かけてうれしかったです。ありがとうございます!


RQの荏崎ろあがメカニック視点で振り返るラリージャパンの過酷さと達成感
応援のコメントを見るとやる気がでますね!

 そして、土曜日のお昼ということもあり、今までで1番人が集まっていました。こんな大勢の人に見守られながらのサービス作業は初めてで不思議な気分でした。ピットでバイトをしていた時も、ガラス越しに整備を注視するお客さんがいましたが、それより緊張したかも……。タイヤマーキングにもたくさんのお客さんが来てくださって、「頑張って!」と声をかけてもらえることも多く、とてもやる気がでました。


 作業終了頃にはピエール北川さんも声をかけてくださって、とてもうれしかったです。


 サービス後のランチでは、桐島しずくちゃんが作ってくれた美味しい塩焼きそばで元気をチャージし、いよいよ岡崎SSに向かいます。何日もホテルと豊田スタジアムの往復のみだったので、やっとギャラリーとしてラリーを満喫できるのが楽しみでした。


RQの荏崎ろあがメカニック視点で振り返るラリージャパンの過酷さと達成感
村田選手と梅本選手は食べられなかったみたいですが、私はしっかりいただきました(笑)

 豊田市と岡崎市は本来そこまで離れていないのですが、ラリーでの通行止めがあったりお客さんが多くて道路もかなり渋滞していました。沿道には旗を持った人がたくさん応援していて、まるで箱根駅伝みたいな。普通の生活道路に派手なカラーリングのラリーカーが、一般車に混じって走っていて、その光景が新鮮で本当にラリーは面白いと思いました。当たり前ですがラリーカーも信号や法定速度を遵守していますよ(笑)。


 岡崎の河川敷に着くと、あたりはもうお祭りのような雰囲気。屋台がたくさん出ていて、とにかくお客さんが多くて、これまでサービスパークにしかいなかった私は、改めてラリージャパンの開催規模にびっくりしました。岡崎応援隊の天野ひろゆきさんや哀川 翔さんのトークも聞こえてきて、芸能人の方もたくさん見かけました。


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ウェルパインのテントに来ていた女子みんなで、岡崎ステージを観戦しに行きました

 すでにいろいろなメディアで報道されているとおり、SS13は潜水士さんの不備でFIAからスタート停止が言い渡され、大きくスケジュール遅れました。川や湖、海などの近くを走る場合は、FIAの規則で潜水士さんが現場に配備されていなければならないそうです。今回はその潜水士さんが現場にいなかった、ということでFIAよりスタートが許可されなかったみたいです。


 急ぎ潜水士さんを手配して、現場に到着したことでようやくスタート。しかし、お客さんも多くて前方が見えにくく、路面がグラベルで砂煙も上がるので、対岸となるギャラリーエリアからはワケがわからず、私は会場設置のオーロラビジョンで観戦しました。別に私の背が小さいから見えなかったわけではないですよ(笑)。


 岡崎SSは直線とヘアピンを合わせたコースレイアウトで、ラリーカーの急加減速やコーナーリングの速さに興奮しました。ここは狭いコースを走行する事が多く、クネクネした道をハイスピードで駆け抜けて行く迫力が魅力です。爆音の排気音や狭いコース幅をドリフトして上手く走っていく様子はD1を彷彿させます。本当にトップドライバーたちはスゴイと思いました。


RQの荏崎ろあがメカニック視点で振り返るラリージャパンの過酷さと達成感
川の対岸とはいえ、ワークスカーの迫力は十分伝わりました

 夜のサービスの時間が迫っていましたが、どうしても村田選手と梅本選手の走りが見たくてずっと会場で粘っていました。辺りはもう真っ暗ですが、生で2人の走りを見ることができました。ピエール北川さんの実況で、村田選手がEXEDYの社員であることや、梅本選手が元SKEのアイドルであることに加え、ウェルパインのことについて話してくださっていて、私もうれしくなりました。


 本来なら、このコースをSS13とSS14と計2回走る予定でしたが、タイムスケジュールの遅れにより走行は1回で終わりになりました。つまりSS13のみでSS14はキャンセルです。見終わったら急いで監督と合流し、豊田スタジアムに戻ります。サービスFを控えているので、メカニックの私はのんびり観客気分ではいられないのが悲しいです(笑)。


 レッキ車であるエボXでの移動でしたが、やはり疲れがあったのか、ちょっとスパルタンな車内にも関わらずいつ間にか寝てしまいました。起きるとすでにサービス会場に戻っていて、寝ぼけている余裕もなく、すぐサービスインです。


 さっきまで砂煙の中で頑張ってくれていた208R2にDAY3最後の整備です。通常の足周りチェックに加えて、エンジンオイル交換をしました。ちなみにグループR車両はオイルも細かく指定されていて、208R2はトタル製オイルが必須。よくモタスポ写真でも見かけますが、プジョーにはやっぱりトタルなんですね。


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タイヤ交換も慣れてきました

 オイル交換には車両のエンジン下周りを保護するアンダーガードを外さないといけないのですが、非常に重くて付け外しが1人ではかなり苦戦しました。早水チーフメカに助けてもらいながら、なんとか作業を完了。


 車両の下周りに潜る際、海外のメカニックさんを見るとみんな地面に敷いてあるグランドシートに後頭部を付けないように作業しており、それを見習って私も頑張ってみましたが首の筋肉がまだまだ足りませんでした。女の子にしては体力筋肉がある方なのですが、メカニックとしては私もまだまだのようです……。


 最終日DAY4は朝のサービスのみなので、夜のサービスは今回が最後でした。長い期間でしたが、もうラリージャパンで整備できるのは明日の1回だけなんだ……と思うと寂しくも感じました。


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お客さんたちはクルマが来ると自然と離れてくれます。こういう信頼関係で成り立っているのもラリーっぽいですね
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夜のサービスはこれで終了。なんか寂しいです

世界の大舞台で表彰台に!
最高の思い出となったDAY4

 そして、いよいよ最終日DAY4です。早起きも今日で最後。15分間のサービスGは7:45イン予定なので、スタジアムに着いたらさっそく準備に入ります。サービスはこれまで通り誘導から入り、ウマをかけてタイヤの交換をします。


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全日本ラリーでもラリージャパンでも早水チーフメカにたくさんのことを教わりました

 この日は午後から雨予報なので、装着するタイヤやスペアタイヤの種類や本数をチームミーティングで決めます。結果、装着するタイヤはフロントがソフト、リヤがウェット、スペアにウェット2本積みの指示がありました。


 今回のラリージャパンでは初の雨が予想されるので、最後のサービスの緊張感は、ここ数日で1番でした。もうこのサービスを終えたら、ラリーフィニッシュまで車両を整備する機会はないので……。サービスの間は本当に多くの人が集まっていましたが、誰1人声を発することなく真剣に作業を見守ってくれました。


 レースクイーンの私をいつも応援して下さってる方も来て、車両出発後はミニ撮影会も開催してくれてうれしかったです。RQじゃない時の私も応援してくれるファンの皆さんには感謝でいっぱいです。


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これは夜の写真ですが、昼間もたくさんの方が応援しにきてくれました!

 さて、最終日はSS15からSS19までの5本です。SS15/19は旭高原元気村で、SS16/18は岐阜県恵那市、SS17は中津川市の根の上高原です。元気村のリグループでクルーにランチを届けるためチームスタッフが出張するので、私も同乗して向かいました。


 ここまでずっと天気が良かったのですが、最終日はやはり生憎の雨でした。そんな中でも観客がたくさんいて、特に地元の家族連れが多いのが印象的でした。こうやって無料で観戦できるスポットがあると、規則が分からなくてもモータースポーツに触れることができるため、知ってもらえる良い機会だなと思いました。


 そしてリグループの間に無事クルー2人と合流ができて昼食を渡すことができました。中々ラリーの間はドライバーと話す時間がなかったのですが、長時間集中した状態が続いているうえに、食事や飲み物も制限されてしまうためクルーは本当に大変だなと改めて感じました。


 サービスに戻って撤収の準備を進めていると、16:00頃に梅本選手から最後のSS19を完走したとの連絡があり、初WRC完走に私もチームの1人としてとても感動しました。そのあとは豊田スタジアムのポディウムでセレモニアルフィニッシュがあるので、急ぎ撤収作業を進めます。ウェルパインモータースポーツを応援してくれる皆さんも、撤収作業を手伝ってくださり、ウチはファンから愛されてるチームだなと実感しました。


 セレモニアルフィニッシュの時間になったのでスタジアム内に向かうと、なんとチームスタッフはポディウム近くまで入れるとのこと。208R2がポディウムに登ると、「さぁ、オレたちもいこう!」と監督に言われて、なんと私もチームの一員としてポディウムに登らせてもらえました。


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世界の大舞台でポディウムに乗れるなんて!

 結果として総合27位、クラス3位という成績で、私は走ってはいないけれど、自分が整備したマシンと一緒に表彰されるのは本当に感動しました。表彰の際に司会のピエール北川さんが「SUPER GTのレースクイーンもやってメカニックもやってるんですよ」と私の話題にも触れていただきありがたかったです。


 愛知/岐阜では初開催となった12年ぶりのWRCラリージャパンは、これまで全日本ラリーしか経験していなかった私にとっては何もかも新鮮でした。初めは尻込みしてやりたくないと言っていましたが、また1つ自分の中で成長できた気がしました。世界選手権でのメカニックの経験は本当に大変なこともありましたが、誰でも経験できることではないので、今回経験することができて良かったです。


 とはいえ、1人では何もできなかったので色々教えて下さった監督やほかのメカニック、チームスタッフの皆さんには感謝でいっぱいです。


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今回のメカニックチームです。左から早水チーフメカ、本業はメディアだけどお手伝いしてくれた真鍋さん、一番右が和田メカニック

 また、この記事や私きっかけに、多くの方々(特に同世代!)にモータースポーツを知るきっかけになれたら良いなといつも思っています。


 2023年も、レースクイーン兼メカニック荏崎ろあの成長を見守って応援してくださいね!


RQの荏崎ろあがメカニック視点で振り返るラリージャパンの過酷さと達成感
レースクイーンの瀬谷ひかるちゃんと別れを惜しんで……

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