JR東日本は、事前に概要を発表していた「多様化する通勤スタイルに合わせた JRE POINTの新サービス」の一つ、「オフピークポイントサービス」を3月15日に開始する。前々日の土曜日、3月13日にライナー廃止など、大幅変更となる21年春のダイヤ改正を行い、最初の平日からのスタートとなる。


 オフピークポイントサービスは、エントリー必須の1年間の期間限定キャンペーンの扱い。ウェブ登録済みのSuica定期券・モバイルSuica定期券で、駅ごとに定められた早起き時間帯・ゆったり時間帯に入場し、対象エリア内の別の駅で出場した場合のみ対象となる。
 駅ごとに時間帯が異なり、早起き時間帯が平日のピーク時間帯1時間の前1時間、ゆったり時間帯がピーク時間帯1時間の後1時間という設定。例えば、JR山手線の新宿駅・池袋駅・東京駅は早起き時間帯が6時半~7時半、ゆったり時間帯が9時~10時で、平日日中(10時以降)、土日が対象外。
 記者は、ピーク時間帯とされる8時台の東京駅構内、8時半ごろの池袋・新宿駅構内の様子を知っているが、駅構内の混雑のピークというより、到着する電車のピークであり、乗客の分散を図り、将来的に朝8時台にターミナル駅に発着する運行本数を減らしたいという意図を感じる。
●時差通勤を阻む「オフィス開いてない」問題
 オフピークポイント(1日15ポイント・20ポイント)を獲得するため、最寄りのJR駅のゆったり時間帯にあわせて出社する場合は、オフィスから退社する時刻を後ろ倒しにすれば問題ないだろう。
この場合、デメリットはない。しかし、早起き時間帯に合わせて出社しようとすると、オフィスビルの開錠前に到着していまい、時間をつぶすため、カフェやコンビニのイートインコーナーなどを利用せざるを得なくなるケースが大半ではないだろうか。
 こうした「朝活」は数年前から注目を集めていた。昼食を削ったり、抜いたりすれば朝活の金銭的負担はなく、むしろモーニングサービスの分だけ得するかもしれない。従来と変わらず昼食をとる場合は確実に出費増になるので、飲食を伴わない「朝の勉強会」などが開催されていた。また、従業員の労働時間を厳密にタイムカードで記録する仕組みの企業の場合、オフィスは入れないためにやむなく費やす朝活は労働時間にカウントされず、手当のつかない無償の残業になる。

 時差通勤に対し、インセンティブとしてポイント還元する試みはJR東日本以外の鉄道会社も取り組んでいる。こうした「時差通勤」を社会全体で本気で定着させるなら、職種・業種によっては就業時刻を定めない柔軟な勤務形態を原則とし、例えば早朝6時半から業務開始を認めるなど抜本的な変革が必要だろう。朝型生活者のニーズを満たす朝食時間帯の飲食店のメニュー充実・テイクアウト強化も欠かせない。
 結局のところ、今回の「オフピークポイント」をきっかけに時差通勤が増えるとしても、従来より少し遅い「ゆったり時間帯」に限られそうだ。(BCN・嵯峨野 芙美)
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