本当に高齢者向けだけでいいの? 若者にも楽しいコンビニの方が、皆さんにとって魅力的じゃない?

もちろん、現状のコンビニのメイン客層は40~50代となっていて、高齢化社会に、寄り添った施策が人口動態とともに多くなっているのは、昨年末に発刊した、渡辺広明氏の最新作『コンビニが消えたなら』で述べてきた。でも…。

自身らも50代コンビである、著者:渡辺広明氏&編集担当者は、本書では書ききれなかった新たな命題、「以前は、何があるんだろうって、もっとドキドキワクワクしてコンビニ行ってなかった?」「今の若者感性の品揃えにも注力すれば、さらに魅力的になっていくのでは?」という仮説に気づいてしまったのです。

そこで、若者研究マーケティングアナリストの第一人者、原田曜平先生に対談をオファー。原田先生が率いる20代のインターン研究員5人も参加して、様々なアイデアを練ってみました。

昨年末に発刊した『コンビニが日本から消えたなら』を自ら否定するわけではありません。ただただ素直に、その先がどうしても見たくなってしまったのです。デジタル版でのスピンオフ企画で、この欲求を補完してみました。

では、連載第2回目をどうぞ!!

■20代の消費行動と心理から、コンビニで「買い」な商品が見えてくる

佐藤:お菓子はスーパー、ドリンクはドラッグストア、コスメとお酒はドン・キホーテ。ジャンルごとに価格が安くなっている所へ買い物に行きます。

原田:大学生にとって安さというのは前提となっているから。

渡辺:原田先生、今お小遣いってどうなっているんですか?

原田:バイト代の収入(注1)とか合わせると、大学生の平均は6万円くらいでしょうか。ここは、あまり変わってないです。携帯も彼らの世代にとっては昔からあるんで、携帯代も親が出している率が日本は高いですよ。

収入はここ10年~15年くらいでそんなに変わってないですよ。
※注1:独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の平成28年度学生生活調査より
学生のアルバイト収入は2万9675円/月

相馬:スーパーは品揃えが豊富なので、「何を飲むか決まっていないけど、お酒を買いたい」という時に行きます。デザートや惣菜、お菓子もこれという目標がない時はスーパーに行きますね。

渡辺:スーパーのデザートを買うって珍しいような気もするけど。

相馬:時間とかで安くなったりするじゃないですか。夕方の50%OFFとか。

とりあえず値段重視な時にはよく行きます。

原田:経済観念のより強い子、例えば、一人暮らしをしている子などは若者でもスーパーに行く。安さという部分では、コンビニはスーパーに取られちゃっているんだね。

渡辺:逆に、スイーツだけは、コンビニの方が付加価値ありってなってるんだね。

宮本:ドラッグストアでは化粧品を。コスメは特に安さよりも自分に合った欲しいものを選びたいので品揃え重視です。

お酒とお菓子は安さ重視でドンキで買います。ドンキは店舗数が多くはないので、完全に目的意識を持って買いに行くぞ~って感じです。逆に、コンビニはこれを買いに行くぞって目的がなくなっていますね。

原田:コンビニは最終手段か暇潰し、という意味合いが強いのかな。

渡辺:ふらりと寄るってことはあるの?

一同:あります。

原田:以前のスタイルは、もっとふらりだったんですよ。

雑誌立ち読みしたり、新商品あるかな~って。もっとドッキドキする所だったんですよ。今は競合も増えているので、最終手段的な側面も増えているのかもしれないね。

渡辺:コンビニって若者世代の店って言われていたんですよ。1990年代まで。

一同:え~っ???

渡辺:今はシニアの店になっちゃったんですよ。

昔は女子高生の意見をマーケティングして商品開発してたんですよ。安室奈美恵ブームのあたりは。

Column 渡辺広明氏著『コンビニが日本から消えたなら』より抜粋
来客店の3人に1人が50歳以上! いまやコンビニはシニア層が主力客

1970年、日本は「高齢化社会」に突入しました。その後も高齢化率は上昇を続け、1994年に「高齢社会」、そして2007年からはついに「超高齢社会」 を迎えています。高齢者とは65歳以上の人を指します。総人口に占める高齢者の割合(高齢化率) によって高齢化の進行具合を示す呼び方が変わり、高齢化率が7%を超えると高齢化社会、14%を超えると高齢社会、21%を超えると超高齢社会と呼ばれます。 内閣府が発表した「令和元年版高齢社会白書」によれば、2018年10月1日現在、日本の総人口は1億2644万人。そのうち高齢者は3558万人で、高齢化率は 28・1%です。今後も高齢化率は増加傾向が続き、2036年には 33・3%、 つまり3人に1人が高齢者になると予測されています。

社会の縮図たるコンビニにも、当然ながら高齢化の波が押し寄せています。 下の数字は、セブン-イレブンが公表している来店客の年齢分布です(図④)。

最も高い年齢層が50歳以上という括りのため、高齢者より若い層も含まれていますが、年齢分布の変化は歴然です。 1989年は、20歳未満と20~29歳だけで6割を占めていて、50 歳以上は1割未満でした。しかし2004年になると、50歳以上の来店客が2割を超えるようになり、2017年に至っては4割に届こうかという勢いです。つまり、この30年の間に、コンビニの主力客が若者から高齢者へと一変したのです。

ただし、高齢者の来店が増えた理由は、 単純に高齢化率が高くなったからだけではありません。国土交通省「健康・医療・福祉のまちづくりの推進ガイドライン」 によると、高齢者が休憩をしないで歩ける歩行継続距離は約500~700メートルだそうです。 生活圏が狭まったとき、スーパーとコンビニのどちらが生活圏内で利用しやすいかというと、当然店舗数で上回るコンビニなのです(※コンビニは全国5万8669店舗、スーパーは全国約2万2217店舗)。 また、コンビニは単身者の利用が多いため、取り扱っている食品も単身者を意識 した小分け包装を多く用意しています。これが、高齢者の需要を満たしたという点も大きいのです。「令和元年版高齢社会白書」によると、 65歳以上の人がいる世帯 は2378万7000世帯。このうち、夫婦のみの世帯が 32・5%と最も高く、次いで単独世帯が 26・4%です。老夫婦や単身高齢者にとって、少人数用の商品が並ぶコンビニは〝ちょうどいい〟のです。

■スイーツとワンハンドが「コンビニ買い!」のキーワード

原田:では、若者はコンビニへ何を買いに行くのか?

佐藤:コンビニで買うのは、コンビニスイーツ。新商品の情報やお得なクーポンが届けられたり、新商品の試食会などのイベントに参加できるなど、コンビニスイーツをテーマとした一般ファン参加型のSNSによる情報発信プロジェクトが各コンビニで盛り上がっていて、それがすごく話題となっています。

原田:どこのが一番美味しいとかあるの?

内山:個人的にはローソンですね。

渡辺:ロールケーキで始まって、去年バスチーをヒットさせて。ゴディバとのコラボもね。ローソンとファミマは女性向けの商品開発に力を入れています。ただし、男性もターゲットに含んだ定番スイーツが少なくなってきているんですよ。27年間、僕が買い続けたエクレアがなくなったんです、ファミマの店頭から。ファミマに行く回数が減っちゃいましたね。

原田:女子ウケのものの方がインスタに載って広がっていく可能性が高いから。

渡辺:女子に火が点いたものには男子がファンとなっていくので、間違った戦略ではないのですが。さまざまなタイプのお客さんの日常に応えるというコンビニの方向性を鑑みると、男女比のバランス感覚を見直すべき時が来ているというのが、私の見解です。

原田:実はこの数年、様々な業界で「男性消費」へ注目が集まっています。化粧品業界でも、まだまだ数は物足りないのかもしれないけれど、男性化粧品が続々と生まれています。よく考えてみると、これは良いことかどうかは分かりませんが、男性の方が収入は多いし、コンビニにおいても男性の方が消費単価が高いはずです。

渡辺:各社男女の客単価は公表していませんが、業界では、財布の紐は女性より男性が緩いので、タバコ単品買いの購買者を除くと10%程度高いと言われています。

宮本:あと、おにぎりとかの軽食も買います。

原田:コンビニのご飯って美味しいの?

宮本:美味しいです。

渡辺:コンビニ食は相当進化しています。僕らの頃は、コンビニでお弁当を買っていたんですけど、若い世代のみなさんは、弁当じゃないんですよ。ワンハンドでいけるもの。

原田:スマホを四六時中触っているジェネレーションZのみなさんにとっては、ワンハンドがキーですよね。だからタピオカが流行ったという側面もある。

宮本:おにぎりとか肉まんとか。確かに弁当を買っているのはサラリーマンの方しか見たことないかも。

伊藤:僕買ってます。帰ってから家で食べる時。

原田:美味しい?

一同:美味しいです。

渡辺:セブン美味しいって言う人多いよね。

一同:セブン美味しい~!!

原田:そんなに差がある?

一同:あります!!

内山:私もお弁当を買います。普通のも買うんですけど、『金の』でおなじみのセブンプレミアムゴールドや、ファミリーマートのお母さん食堂の商品の方が頻度高く買いますね。レンジで温めるだけなのに、すごく美味しいので、コンビニも進化しているなって、買うたびに感じます。

渡辺:家庭でお皿に盛り付けしたなら、これ、手作りとしか思えないですよね。ただしファミマの惣菜パッケージはもう少し若者向けになるとみなさん的には嬉しいのでは…。セブン-イレブンは、価値のあるPB商品をという号令を出し、セブンプレミアムゴールドをスタートしました。このプロジェクトは素晴らしいことですよね。

■コンビニでしか買えない限定モノはクオリティが高くウケている。そして「シェアできる」モノも購買意欲を掻き立てる

佐藤:あとは、雑誌のコンビニ限定付録など、コラボ商品が最近すごくあり、これも私たちの周りでは話題になっています。他にはお泊りセット緊急用とローソンで売っているミニコスメを購入しています。

渡辺:コンビニでしか買えない限定商品が多いからね。ローソン限定ポーチイン つながるインテグレートとか。二つに分かれているやつ。可愛いですよね。

佐藤:そうです。それすごく便利です!

原田:これも安いものか、付加価値の高い商材、どっちかを買うって感じか。

渡辺:ここでしか買えないというポイントがあると買うんですよね。セブン-イレブンの中本の蒙古タンメンのカップラーメンみたいな。

原田:我々の青春時代は、なんでも買えるという、コンビニの普及期。いつ行っても、こんなに買えるってことに感動した世代なんだけど、今の子たちは、それがベースで当たり前になっているんで、そこでしか買えないっていう付加価値がないと行かなくなっているという。この時代の変化は大きいですよね。

渡辺:中本の蒙古タンメンのカップラーメンや一番搾りのセブン-イレブン限定、BOSSのローソン限定、ハーゲンダッツのファミリーマート限定といったものが売れている。NPB(ナショナルプライベート)商品がとても人気ですね。

Column  渡辺広明氏著『コンビニが消えたなら』より抜粋

コンビニ限定のコラボ商品「NPB」と「トライアングルPB」とは?

コンビニの魅力を取り戻すため、今後は各社ともに新たなPB開発に力を注ぐ必要があります。それは、私が「NPB(ナショナルプライベートブランド)」や「トライアングルPB」と呼んでいる商品です。

NPBとは、PBのようにその店舗にしか置いていないコンビニ限定のNB(ナショナルブランド)です。たとえば、2018年10月、セブン-イレブンはサントリーと共同開発して缶コーヒー「BOSS」の店舗限定商品「セブンプレミアム× サントリーBOSS『セブンズボス』」シリーズを発売しました。既存のブランドイメージにコンビニ限定という付加価値を与え、さらに価格もNBの「BOSS」 より安く設定されています。 一方、トライアングルPBとは、コンビニを含めた3社によるコラボ商品です。 セブン-イレブンでは、2000年代初頭から札幌ラーメンの人気店すみれと日清食品と共同開発してカップラーメンを販売するなど、早い段階からトライアングル PBの開発を行っています。

また、セブン-イレブンでは冷凍食品においても「蒙古タンメン中本」とコラボ商品を開発するなど、魅力的な商品づくりが目立ちます。近年は冷凍技術の進歩によって味も著しく向上しています。このため、コラボ商品では従来の商品よりも単価を高く設定しても十分な購買が見込めます。 なお、コンビニには商品開発のプロジェクトチームが存在します。1つの商品を開発するために、食品メーカーと原材料メーカー、そして工場などと協力しているのです。一方、それ以外にも、もう少しライトなマーチャンダイジングのチームがあり、同じく原材料メーカーや工場と協力しています。私がローソンのバイヤーを務めていたときも、日本製粉や日本ハム、キユーピーなど5社とチームをつくり、 ベーカリーの開発を行っていました。

伊藤:最近、友達を観察していて気づいたのが、ほとんどの女子は授業の合間の休み時間にみんなで分けられるプチお菓子を買っているということ。

原田:みんなで分けられるってところが重要なポイント?

伊藤:いろんな味を楽しめるのがいいと。さらに高校に隣接したコンビニで観察してみると、男子の運動部の子たちが、紙パック、 ペットボトルの飲料を買っていて、女子はジップロックタイプの少量のお菓子を買っていました。短時間で食べ切れ飲み切れる物、ということもキーワードだと感じました。

原田:女子には「お菓子をシェアする」カルチャーが昔からあったと思います。さらに、SNSの普及により、シェアする様子やシェアしたモノをSNSで他の人ともシェアする文化が広まった。シェアをシェアすれば、友達が多いことを周りの人にもアピールできる。SNSでの繋がりが増えたからシェアする機会がさらに頻繁となっているのでしょう。なので「見栄を張れるモノ消費」から「友達とシェアできるコト消費」の方向へと、君たちジェネレーションZの購買衝動は強くシフトしていったということなんだね。今後、アフターコロナの時代、安全にシェアするための包装形式は進化する必要があるだろうけど、友達と繋がっていたいというみんなの気持ちは強いまま変わらないだろうからね。

第3回へ続く