人生100年時代の後半戦に入る50代、豊富な人生経験を通じて「本当に必要な物とは何か」について見識が高まっていることだろう。
 いま中高年にとって始めたいことは残りの人生の見直しと同時に不要な家財の整理。

とくに、ご両親の死などをきっかけに実家の資産処分などは現実的に避けられないライフイベントである。
 今回、家財整理に焦点を絞り、遺品整理の具体的「失敗例」をもとに、身の回りの「お片づけ」について最適な選択となるべく方法を模索する。



◼︎「業界最安値」という不用品整理の盲点

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【ケーススタディ】
 埼玉県に住むMさん(53歳)は、認知症で特養老人ホームに入居していた母を亡くし、本人を含めすでに独立している子供(兄弟)たちは、実家の相続にともない処分を決めた。築年数40年を超える実家は10年以上の「空き家」であり、その売却にともなう遺品整理を行った。ネット広告で「業界最安値」「2トン車積み放題パック」2万5000円で実際、処分を行ったところ表示価格の25倍の費用がかかってしまったという。



 上記のMさんによれば、「土地売却の日程が、想像以上に早く進み、家財整理を十分に行うことができなかったこと。

また新品の製品など未使用の家財や記念品、贈答品なども単にゴミとして処分したこと」は悔いた上で、「二つの業者に頼んでみたのですが、トラック4台分でおよそ75万強(45万、31万6800)円かかった」という。



 現在、Mさんのケースのような「家財整理の現場」で不用品回収にまつわるトラブル(無料回収や誇大広告)が多発し、行政でも悪質業者への注意を喚起する警鐘がWEBなどでも鳴らされている。



 こうしたトラブルに対し、私たちはどのように対処すればいいのか。



 遺品整理、生前整理、不用品買取などをライフサポートと位置付ける株式会社クオーレの取締役・本田啓夫氏に現場の実情をもとに当該ケースの「失敗」についてお話を聞いた。



「今の時代、ホームページは、不用品回収・買取業者の「顔」であり、見るだけでもおおむねわかるようになっています。まず、しっかりとホームページに目を通すことは必須です。

業者のクオリティやスタッフ情報、料金設定など気になる部分を、まず連絡する前に、よく調べることが重要です」(本田氏)



 事前のチェックと同時に必要なことはなんであるのか。



「業者とお会いするまではわからないこともあるため、複数社に見積りをとり(相見積もり)、決めることも必要です。また、ホームページで表示された価格などと実際の見積もりが異なるかどうかもチェックポイントです。さらに、事前見積りを行う営業マンの対応で業者の選定の善し悪しにもなると思います」(本田氏)



 実際に見積りにきてもらい確定金額を出したうえで、それを了承することで、作業を業者に依頼することがもっともトラブルを抑える方法だと語る本田氏だが、さらに重要な点として「見積書に『追加料金が発生しません』という文言を入れてもらう、またはそれを事前に確認すること」を挙げた。



「家財整理は、処分するときにも、購入したときと同じようにしっかりと時間をかけて準備を進めることが大切です。トラブルの元は、短期間で不用品処分を行おうとするときに、起こります。

十分な情報や相見積もりなどを比較検討する時間がないため、コスパなどを比較する選択肢を失うことにあります。余裕があれば最適な選択に近づけると思います。さらに、準備期間があれば、買取査定を受けることもできるからです」(本田氏)



【50代からの賢いお片づけ】家財整理の現場で起きる「法外な」請求への対策、「意外な」高額査定の活用法《人生のつなぎ方②》



◼︎ゴミから宝へ⁉️ 捨てる前に、まず査定

【50代からの賢いお片づけ】家財整理の現場で起きる「法外な」請求への対策、「意外な」高額査定の活用法《人生のつなぎ方②》



 50代からの家財整理の課題はともすれば、年月かけてストックされてしまった家財の不用品を「ゴミだから捨てるしかない」とあきらめてしまうケースが多いかもしれない。しかし、「誰かにとって不要なモノが誰かにとってのニーズとなる」ことは今の時代、フリーマーケットアプリの趨勢を見ても明らかだ。



 では、そうした不用品となった家財ではどのようなものが「買取」の対象となるのだろうか?



「家財でいうと家具・家電がメインとなります。家具は小型家具から大型家具まで買取が可能となります。

ただしノンブランドや壊れているものは買取が厳しくなっております。現在イケアさんニトリさんなどで、新品でおしゃれな家具がリーズナブルな値段で購入できるため、中古家具市場は数年前に比べてかなり落ち込んできています。家電製品は、原則5年以内ではないと買取が厳しくなっております。大型家電は5年より少し経っていても買取可能な時もあり、逆に小型家電は3年以内でないと買取れない場合もあります。後は、現物の状態によって買取の価格が変動します。例えば、リモコンや説明書の付属品などが揃っている場合などはポイントがアップします」(本田氏)



 アンティーク家具・家電やきわめて希少性の高い家財は、高額の買取の可能性もあると付け加えた上で「意外な」高額査定商品の分類を列挙した。



【高額査定品の対象となるもの(一般的)】
骨董品・中国骨董・美術品・宝石・日本刀・貴金属など
【意外な高額査定品の対象となるもの(マニア向け)】
フィギュア・ゲーム機・ゲームソフト・鉄道模型・プラモデル・玩具など



 例えば、上記の意外な高額査定品とは、補足すれば「現在では、絶版のものや製造元が消滅(=リメイクがほぼ不可能)」な「レア物」と呼ばれるアイテムである。



「業者によっても買取基準が違ったり、取り扱い商品が違ったりするので一概に買取できる・買取できないの判断は難しくなっていますが、該当する商品をすべて用意し、査定してもらうことが何より買取額を増やすことにつながります」(本田氏)



【50代からの賢いお片づけ】家財整理の現場で起きる「法外な」請求への対策、「意外な」高額査定の活用法《人生のつなぎ方②》



 家財買取は多くの場合、生活で使用された製品のリユースを目的とする場合が多いため、高価格な引き取りは一般的にも少ない。しかし、自分の愛着したモノが、また誰かの人生で使われるとしたら、モノを通じて人生、生命の循環は果たされていく。



 次回は、急成長する中古住宅、リノベーションをテーマに「人生のつなぎ方」を考えます。