評論家・中野剛志氏との共著『思想の免疫力 賢者はいかにして危機を乗り越えたか 』がロングセラー中の作家・適菜収氏。隔週連載で始まった痛快時評の第3回。

岸田内閣の面々と、似非ジャーナリストの大物を真正面からぶった斬る。





 自民党・宏池会(現岸田派)の前会長、古賀誠がテレビ番組のインタビューで、安倍晋三や麻生太郎にへつらう岸田文雄について、「いつまでもその人たちの言い分を聞いていかなきゃいけないというのであれば本末転倒だと思います」と発言。



 古賀は マックス・ヴェーバーの『職業としての政治』を引用し「悪魔と握手してそれを達成するというのも責任倫理だとマックス・ヴェーバーは言っているんですね。しかし、その悪魔の言うとおりになったら本末転倒で、それは許せません」とも述べた。



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 実質的にはその〝悪魔〟が組閣した岸田政権。岸田は新総裁としての第一声で「生まれ変わった自民党をしっかりと国民に示さなければならない」と宣言したが、脛に傷を持つ人たちのオンパレード。

UR(都市再生機構)に関連する疑惑で経済再生相を辞任し、雲隠れを続けた甘利明が幹事長、森友事件に関する公文書改竄について「白を黒にしたような悪質なものではないのではないか」と放言した麻生太郎が副総裁。財務相の後任は2013~15年の3年間で計1412万円ものガソリン代を政治資金から支出して問題視された鈴木俊一になった。鈴木は麻生の義理の弟である。



 政調会長は高市早苗。安倍のネトウヨプロパンガンダ路線の継承者であり、過去にナチス礼賛本に推薦文を寄せていたことでも有名だ。



 パンツ泥棒の高木毅が国対委員長、政治資金規正法違反の証拠を消すためにパソコンのハードディスクをドリルで破壊した小渕優子が組織運動本部長というのも面白い。



 その他、迂回献金問題の金子恭之が総務相、加計学園をめぐり文科省へ圧力をかけた疑いがある萩生田光一が経産相、基地建設の関連工事の受注業者から献金を受けていた西銘恒三郎が復興・沖縄北方相、巨額年金消失事件を起こしたAIJ投資顧問の系列会社の代表取締役から寄付を受けていた後藤茂之は厚労相に。



 ちなみにヴェーバーは前掲書で、政治を堕落させる要素として、「権力を笠に着た成り上がり者の大言壮語」「知的道化師のロマンティズム」「権力に溺れたナルシシズム」を挙げている。



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 憲政史上最悪ともいわれる安倍-菅政権が続いた後では岸田政権はまだマシに見える。新自由主義からの決別を唱えたのも一応は評価できる。菅義偉や竹中平蔵、維新の会のような勢力と本気で縁を切るなら評価できる。しかし、岸田の背後にいるのは安倍や麻生である。

岸田は総裁選の際、森友加計問題について「国民が納得するまで努力をすることは大事だ」と発言したが、一連の事件の追及から逃亡中の安倍が激怒すると、わずか4日で再調査はしないと撤回したヘタレである。



 兼好法師は「狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり」(『徒然草』)と言った。悪党と決別しなければ、即ち悪党なのである。



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■河野太郎、小泉進次郎、吉村洋文、田原総一朗の真骨頂とは



 総裁選で河野太郎を支持した小泉進次郎は、ネジ1本分、突き抜けていた。河野敗退後、進次郎は「河野さんが総裁になったら間違いなく今日みたいな何年間変わってないかわからないこの総裁選の開票作業の長さとか、総裁選のあり方を変えてくれる。私はそういう姿を想像していましたから、河野さんを勝たせたかったですね」。

そんな理由で河野を支持していたのか……。素晴らしいとしか言えない。



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 その河野は退任記者会見で、約1年に及んだ在任期間中の仕事ぶりへの自己評価を問われ「100点満点で120点くらい頂けるのではないか」と発言。前回も述べたが、典型的な「ダニング=クルーガー効果」。これは、能力の低い人が自分の能力を過大評価するという認知バイアスについての仮説である。悩みなんて何一つないんでしょうね。



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 大阪府知事の吉村洋文が、インスタグラムでオフショットを公開したそうな。スポーツウェアを着用してパン屋のある公園にいる自身の姿と、クロワッサンの写真を掲載。「このパン屋さんのクロワッサン、うまいねん。(このお店と僕は何の関係もありません)」とコメントを添えた。この投稿に「キャー また知事がカッコイイ」「はあああああ関西弁死ぬかっこよすぎです」「髪の毛スッキリしててよりイケメンになってる」といったコメントがついたという。



 工作員が紛れ込んでいるのかよくわからないが、菅義偉のパンケーキに騙され、次はクロワッサンか。

バカって、とめどないですね。



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 田原総一朗が「AERA」のインタビューに答えていた。以下記事の引用。



《長年、自民党政治家の傍らで取材をしてきた田原さんは、安倍・菅政権の9年間で自民党の国会議員は皆、安倍氏の「イエスマン」になったと嘆く。



「例えば、桜を見る会。これは税金の私物化で、かつての自民党であれば誰か党内の実力者が安倍さんに『やめなさい』と言い、安倍さんも割と素直な人だから、やめたはず」



 それができなかったのは、選挙制度が小選挙区になったことが大きい。小選挙区制は1選挙区から1人しか出られないため、執行部に公認されないと当選できない。だから全員、安倍氏へのゴマすりしか考えなくなり、何が起きようと誰も安倍氏の批判をしなくなったという》



 恥知らずにも程がある。小選挙区制の導入を煽ったのは田原ではないか。



 田原は卑劣な言論乞食、うんこライターの走り。講演では森友事件に関する公文書改竄について「野党は一連の不祥事にしか関心がない」「(野党が対案を示さないので)国民は安倍政権を支持するしか選択肢がない」などと言っていた。発言はコロコロ変わってブレまくり。見識のなさという点では一貫しているが。こんな人物が「ジャーナリスト」として通用してきたこと自体が、戦後の病と言ってよい。



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■「政界のへずまりゅう」は二人もいらない



 迷惑系YouTuberの「へずまりゅう」こと原田将大が、 参院山口選挙区補欠選挙に某政党(名前も出したくない)から立候補することを表明。魚の切り身を盗んだなどとして窃盗や威力業務妨害などの罪に問われ、懲役1年6月、保護観察付き執行猶予4年の判決を言い渡されていた。



 その某党の支持者が「支持してたことを恥じてます。ここまで、政治をおもちゃにする輩とは思ってませんでした」と述べていたが、気づくのが遅すぎる。アホか。



 政界にはすでに迷惑系政治家である「政界のへずまりゅう」こと安倍晋三がいる。へずまりゅうは二人はいらない。



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 2019年の参院選広島選挙区の大規模買収事件で公選法違反罪に問われ、一審で懲役3年の実刑判決を受けた元法相の河井克行被告と 有罪が確定している妻の案里の連名の書面を自民党が公表。党本部が入金した1億5千万円について、地方議員や後援会員らへの買収には使われていなかったとした。



 素朴な疑問だけど、実刑判決を受け控訴中の男と有罪が確定した女の連名の書面って、なにか意味あるの?



 二階俊博は1億5千万円の支出決定の責任者が安倍と自身であると認めている。岸田にひとこと言いたい。能書きはいいから、仕事をしろ。





文:適菜収