今回は、公的年金制度の中でのGPIFの役割について説明します。
日本の公的年金は「賦課方式」を採っていますので、高齢化社会が進展している今でも現役世代から徴収した年金保険料を年金世代に給付する年金に回しています。
ここで、現役世代の皆さんが負担している年金保険料がどのように流れていくのかについて簡単に説明しましょう。
現役世代の皆さんから年金保険料を徴収したり、年金世代への年金給付の事務を行ったしているのは政府から事務委託を受けている「日本年金機構」です。読者の皆さんの手元にも毎年誕生月に「日本年金機構」から「ねんきん定期便」が送られてきていると思います。この「日本年金機構」は年金不安のきっかけを作った「消えた年金問題」で批判を受けた社会保険庁の廃止に伴って2010年に発足した新しい組織です。
そして、日本年金機構が現役世代から徴収した保険料と年金給付金などは国に送られ、一般会計から独立した「年金特別会計」で管理されることになっています。
また、1985年に基礎年金制度が導入されて以来、基礎年金給付には税金が投入されており、現在は基礎年金給付に必要な額の2分の1をこれで賄っています。
つまり、支給されている年金給付金は、現役世代が収める年金保険料と税金を財源として支払われているのです。2017年度で見ると、年金給付総額約51兆円の財源の内訳は、現役世代が収めている年金保険料総額40兆円弱と税金 11・8兆円になっています。
ちなみに、この年金給付の財源には消費税の一部が使われています。これが少子高齢化によって社会保障費が膨れ上がることを理由に消費増税を正当化する根拠の一つとなっているのです。
◼️消費税増税の約4割の増収分は基礎年金の財源へ
2014年4月に消費税は5%から8%へと3%引き上げられましたが、消費増税に伴う増収分8・4兆円のうち4割近い3・2兆円が基礎年金の財源に回されています。また、消費税8%は国税6・3%と地方税1・7%に分けられていますので、この時の消費増税に伴う国税増加分は6・4兆円でした。つまり、国税に限れば、3%の消費増税に伴う増収分6・4兆円の5割に相当する3・2兆円が基礎年金支給の財源に回された格好になっているのです。
基礎年金の給付額の2分の1を税金で賄うようにしたのは、税金を投入しないと現役世代から徴収する年金保険料がどんどん上昇してしまうからです。現在サラリーマンが加入する厚生年金の保険料は月額報酬(正確には「標準報酬月額」)の18・3%で、それを本人と 企業側がそれぞれ9・15%ずつ折半で負担しています。
現在の18・3%という厚生年金保険の料率は、2017年まで毎年引き上げられることを定めた2004年の政府の年金改革で国が決めた上限の保険料率で、今後はこの保険料率が維持されることになっています。つまり、厚生年金保険料率はもう引き上げることが難しい水準まで引き上げられているのです。
ともあれ、基礎年金給付額の2分の1を税金で賄うことになっていることで、「年金特別会計」は収入が支出を上回る形を保っています。そしてこの「年金特別会計」の黒字部分がGPIFへ寄託されることで、GPIFの運用資産は膨れ上がっているのです。
GPIFの「2018(平成)年度 業務概況書」によると、2018年度には「年金特別会計」からGPIFに対して1兆6283億円が寄託され、運用収益などの一部7300億円がGPIFから「年金特別会計」に納付された格好となっています。このGPIFから「年金特別会計」への納付金は、年金給付などに使われています。