発表時、原作ファンに“神キャスト”と賞賛された夏芽役の小松菜奈とコウ役の菅田将暉に、全身全霊を賭けた撮影を振り返ってもらった。
――演じる夏芽とコウの関係についてお二人はどう思われますか?
小松 お互い好きだから追いつきたいとか、追いついたと思ったら違ったとか、焦燥にも似た10代の危うい心情がストレートに出た関係ですよね。歳を重ねると、ここまで全身全霊で熱くぶつかり合わなくなる。強烈に惹かれ合う姿は魅力的だし、私も演じている間はなりふり構わずコウちゃんを追いかけてました。
菅田 まず原作がどぎつくて(笑)。僕はいわゆる少女漫画原作のラブストーリーって初めてなんです。だから壁ドンするのかな~床ドンかな~顎クイかな~と思ってたら、待ってたのが全く正反対のコウだからできる大胆な行動ばかり(笑)。コウという圧倒的にかっこいい少年を演じるのはある種、撮影時の自分にしかできない経験だったのかなと。
小松 うん、私もリアルな10代のうちにこの作品をやれてよかったと思う。
――お二人は取材でもいい雰囲気ですが、撮影中はいかがでした?
菅田 前に『ディストラクション・ベイビーズ』(16年)でも共演して、本気で殴って蹴られた仲だよね。
小松 うん、本当に『ディストラクション~』が先にあってよかった。あんまりしゃべれてなかったけど。
菅田 ね! 今回はW主演ということもあって必然的にコミュニケーションも増えましたね。
――撮影は17日間しかなかったと伺っていますが、やはり大変でしたか?

Styling:AYAKA ENDO/Hair:NORI TAKABAYASHI [angle]/ Make:UDA
小松 本当に過酷でした。私クランクアップのとき、「こんな大変な思いを味わったのは初めてです」と言っちゃった、山戸結希監督の前で(笑)。そしたら監督も笑ってた。
菅田 全身が沈む重りを付けて、泳ぎにくい洋服のまま、後ろ向きに何度も水中に落とされる練習とか。
小松 超~~怖い、上がれなくて。もう死ぬんだ…って何度も思った。
菅田 山を駈けるシーンも多かったので血やアザもすごかったし。海のもくずとなってないのが不思議(笑)。
小松 だね~。多分一生に一度だろうなって経験をしました。
菅田 タイトなスケジュールということもあり、現場はピリピリすることもありました。でも、だから撮れました、この映画が。泣きながら突っ走るような監督の、監督にしか撮れなかった、少女漫画映画だと思います。命がけも厭わない小松菜奈のすごい度胸も見られた。
小松 いやほんと…毎日泣いてたけど(笑)。監督が今までにいないようなタイプの方で、伝えようとしてくれていることは分かるけど、ポエムみたく独特な演出だったので、難しくて。
菅田 急に「もっと獣で」とかね。
小松 「電話に出たら光から陰に」とか(笑)。もうこの人は天才とか異次元の人だから、最後まで信じて着いて行くしかない、と思った。
菅田 でも映像を見たら、本当に美しいんですよ。
小松 うん、すごくよかったです。
――お二人には夏芽とコウのような“一目惚れ”はありえますか?

Styling:SHOGO ITO[sitor]/Hair&Make:AZUMA@MONDO-artist[W]
菅田 あるとは思うけど、してたら僕はもう結婚してます(笑)。だから「生涯コイツだ」と思えた夏芽とコウの関係にはどこか憧れます。いわゆる欲望ではなく、個と個をぶつけ合う人間くさい感じ。
小松 私はよく、既婚者の方に何で結婚したか質問するんです。そうすると「何かこの人だと思った」って答えが多くて。だから私にはまだないけど、いつかそういう瞬間が来るのかな~と思っています。コウちゃんと夏芽はそれが強すぎて、今後どうなっていくのか心配。だけど、夏芽の熱量って何なのかを突き詰めたい感情もあって…。
菅田 うん、結局、個と個の葛藤ってきっと普遍的なもの。だから幅広い方に観てもらいたいです。
映画『溺れるナイフ』
11月5日(土)より全国ロードショー!

監督:山戸結希 原作:ジョージ朝倉『溺れるナイフ』(講談社「別フレKC」刊)主題歌:ドレスコーズ「コミック・ジェネレーション」(キングレコード)脚本:井土紀州 山戸結希 音楽:坂本修一 出演:小松菜奈、菅田将暉、重岡大毅(ジャニーズWEST)、上白石萌音、志磨遼平(ドレスレコーズ)、斉藤陽一郎、嶺豪一、伊東歩夢、堀内正美、市川実和子、ミッキー・カーチス 配給:ギャガGAGA★



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