実写ならではの人間ドラマを描く
中学生でプロ棋士になった主人公・桐山零と彼をめぐる人々が、愛を求め、迷いためらいひるみながらも、それぞれの闘いへ突き進む物語『3月のライオン』。幅広い読者に愛されるコミックが、神木隆之介の主演で実写映画化。主人公・桐山零の血の繋がらない姉・香子は有村架純が演じる。
「人間味や温かさがありゆっくり時間が進んでいく原作が好きなので、出演できるのが嬉しかったです。原作の温かさと、人が成長する過程の生々しさを、演技を通して伝えるのは難しかったですね」(神木)
「原作は本当に人を温かく、切ない気持ちにさせてくれる、心動かされる作品でした。私の演じる香子も『なんて愛おしい人なんだろう』と思いましたし、その役を演じられることに喜びを感じました」(有村)

実写化された映画は、原作の魅力を損なわず、一人ひとりの人間の持つ物語を丁寧に掘り下げた前後編2部作の作品に仕上がった。原作とは違う魅力も映画にはある。
「実際に原作の状況になったとき『零ならどういう行動する?』と監督と話し合って撮影を進めましたし、原作と表情の違うシーンも。『初めて原作を読んだときの感動を大事にしたい』『実写映画として人間のドラマを描きたい』という両方を目指して頑張ったので、本当に大変でした」(神木)
「私の場合は香子とビジュアルもイメージも違ったので、『有村架純は香子じゃない!』という印象をどう払拭していこうか…、ということを凄く考えました」(有村)
共演は2011年のドラマ『11人もいる!』以来。姉妹役を演じた感想を聞いた。
「言葉に棘があって、演技でも心が痛かったです(笑)。
「神木くんは本番になればもちろん零なんですが、それ以外のときも、神木君なのか零なのか分からないほど自然にその場にいました。ふだん話をしていても目の前にスクリーンがあるような感じでした」(有村)
「僕は原作のキャラクターの立ち姿や行動、考え方を、日常から真似して癖をつけておくんです。そうすれば、アドリブで返さなければいけない時に、その役として返せるのかな…と思って」(神木)

今回は佐々木蔵之介、染谷将太、加瀬亮といった抜群の演技力を持つ役者陣が、個性豊かなプロ棋士を演じており、将棋盤を挟んだ演技合戦も一つの見所になっている。
「特殊メイクで太った染谷さんは、現場で誰だか分からなくて、『あ、染ちゃんか!』みたいな感じでした(笑)。彼とは同世代だし、本当に尊敬できる役者です。僕の演じた零は染谷さんの演じた二海堂が『お前はライバルだ』と胸を張って言ってくれるのが嬉しいのですが、それが僕の染谷さんに抱く感情と全く同じなんです。だから染谷さんが二海堂で良かったです。あと蔵さん(佐々木蔵之介)の優しさと謙虚さ、目の前に座った時の崩れない強さは、キャラクターの島田さんそのものでした」(神木)
「みんな本当にイメージぴったりでしたけど、加瀬さんが演じた宗谷の幻のような透明感は凄かったです。あと、零君も神木君以外考えられないですよ」(有村)
「ありがとうございます!」(神木)