こんにちは。江端智一です。

「結婚を計算してみよう」というテーマの本シリーズは、私の思いつきから、自分でシミュレータをつくって、自宅のパソコンを使った地道な計算から始まりました。

 第1回目『驚愕の人口・高齢化予測~70年後に日本の人口は半分、40年後に人類未踏の高齢社会』では、現在の少子化傾向が続くと、70年後に日本の人口が半分になることを示しました。

 第2回目『“結婚”未来予測~増え続ける生涯未婚率、今年生まれる子どもの半分は結婚を選択しない?』では、50年後に未婚者が既婚者を上回るという予測を示しました。

 第3回目『出産させないシステムが完成した日本~破滅衝動=結婚をなぜ越えられないのか?』では、少子化が止まらないのは、少子化こそが国民の「最適戦略」であること、そして、現在の我が国は「出産させないシステム」として完成していることを論述しました。

●極めて堅固な「出産させないシステム」

 これまでの3回の連載で私は、日本というシステムの「『お先真っ暗』な未来」を示してきました。

 その実態は、シミュレーションプログラムを作成し、データとパラメータを入力し、その計算結果を淡々と示し(第1回目、第2回目)、その結果について筋の通る理由(第3回目)を考えてきただけです(今回の一連の連載に関しては「私が書いた」のではなく、「パソコンに書かされた」という気持ちが強いです)。このような計算結果は、「現在」を踏んばって日々を生きている私たちには、あまりにも「希望がなさすぎる未来」です。

 また、前回の「出産させないシステム」については、かなりの反響があり、多くの方がこの問題に興味を持たれていることもわかりました。

 そこで、これまでの3回の連載を通じて明らかにしてきた、美しいループを描いて完成している日本という「出産させないシステム」の「破壊方法」について検討いたします(前回、「現在の生殖技術とその技術の導く恩恵と悲劇、そして今、私たちに求められているパラダイムシフトについても、お話しさせていただこうと思います」と記載しましたが、これについては次回以降とさせてください)。

 しかし(自分で言い出しておいてなんなのですが)、このシステムは本当に堅固で、つけいる隙がありません。たちの悪いことに6つの構成要素から組み立てられており、加えてそれぞれの要素が、これまた滅茶苦茶に頑強に結び付いて出来上がっています。

結婚=“幸せ”“不幸せ”拡大システムの幸せ機能が見落とされるワケ~幸せ表明がリスクな国
 検討すればするほどに、システムが壊せない要因ばかりが出てきてしまいます。
ひと月近く考え抜いて私は、この「出産させないシステム」を一気同時に、包括的に破壊する方法はあきらめました。

 これから数回に分けて、上記6つのシステム構成要素を、個別的に撃破していく方法を提案したいと思います。

 但し、私の提案する方法は、内閣府の「平成25年版少子化社会対策白書」には1行も記載されておらず、また今後も絶対に記載できないような、前衛的で過激な方法を考えています。一種のテロリズムと思っていただいて結構です。この記事を読まれる多くの方が、圧倒的な嫌悪感を持たれることは承知の上で、これから数回述べさせていただきます。

●「結婚システム」の特性

 今回は、図2に示すように、「(A)独身優位」と「(F)離婚」の問題点を可視化することを目的とし、未婚者の皆さんが怯えている「結婚システム」の特性を客観的に明らかにしたいと思います。

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 前回、独身のままでいれば、配偶者の両親に関する面倒くさい問題(同居、介護等)を全部スルーできる上に、自分の価値観だけで生きていけるという自由があり、病気や老後の心配は、子どもに投資する金額を考えれば、十分担保できる、という理由から、「独身」は最適戦略である、というお話をしました。

 一方、未婚者の9割が結婚を望んでおり、「結婚したいけど、結婚したくない」という矛盾をはらんでいることもお話ししました。

 未婚者は、難しい立場にあります。彼/彼女らは、結婚していない状態で、結婚の成否を判断しなければならず、参考にできる身近な事例が少なく、その上、結婚を判断するパラメータは多すぎます。決定的なことは、結婚はひとりではできないということです。自分ではコントロールできず、何を考えているかわからない「配偶者」と一生を過ごさなければならないのです。

 結婚の幸福/不幸の議論の応酬は、必ず不毛な結果で終了します。主観と思い込みの話になってしまうからです。もし客観性を担保したいのであれば、1回の人生で、10~20回程度の結婚を行う必要があるでしょうが、普通の人なら3回が上限でしょう。しかし3回も結婚する人はかなりのレアケースで、サンプルとして採用できないという矛盾を抱えています。

 そこで今回は、主観や思い込みを排除するため、データと計算のみを用いた「結婚の“幸せ”と“不幸せ”の数値化」を試みます。

●結婚による“幸せ”と“不幸せ”をどのように測るか

 この数値化の検討に入るに際しては、以下の2つの資料を参考にしました。

 1つが、「女性の幸せに関する意識調査」です。この資料の母集団は1700人以上で、女性の結婚による幸せを10点満点で評価した結果が記載されている、非常に貴重なデータでした。

「10段階で評価しているなら、5点以下は、離婚には至らないまでも、結婚には不満がある女性のことと見てよいのだろう」と判断し、平成23年度のデータから導いた離婚の確率と、この資料の5点以下の点数を付けた人の比率を正規分布関数に当てはめてみたら、5点と6点の境目ドンピシャに「標準偏差0」、つまり平均値がくることがわかり、かなり驚きました。これにより、「もしかしたら、正規分布関数を使って、数値化できるかもしれない」との考えが浮かびました。

 自然界の多くの事象は、平均値を中心にたくさん現れて、平均値から離れるにしたがって、その数が減っていきます。この事象の発生確率を表す関数が、正規分布関数です。

 人間の集団では、身長、体重、大学入試センター試験の結果などは正規分布関数に乗りますが、年収などは乗りません。まして、結婚による“幸せ”が、正規分布関数に乗るか否かは不明です。

 しかし、今回はこれを強行してみます。

 次に、結婚による“不幸せ”をどうやって測ればいいか、ということが問題になりました。

 当然ですが、そのようなデータが存在するはずがありません。そこで今回は、離婚裁判に持ち込まれた申し立ての動機の項目と、その比率を用いることにしました(司法統計『性別離婚申し立ての動機別割合の推移(1975-2009)』より)。その比率は、離婚の裁判にまで至らないケースにも適用できると考えたためです。

 今回は、目的も狙いもサンプル数も何もかもが違う2つの種類のデータを、正規分布関数を用いて、一直線上の数値である「偏差値」として並べることとします。

 この作業を行うに際して、以下の「相当に乱暴な」仮説を導入することにしました。

・解析の対象は女性のみとします。男性の結婚“幸せ”データが入手できなかったためです。

・「離婚」は“不幸せ”が確定した状態であるものとし、それ以外の「結婚が継続している状態」は離婚が確定するまでは“幸せ”とみなします。

数値化するためです。

・離婚率は、平成23年度の結婚件数と離婚件数の数だけを使います。ここ20年くらい結婚件数は安定移行していたので、結婚と離婚の間のタイムラグは考慮しなくても大きな問題にならないと考えたためです。

・発生確率の低い事象は、平均からの偏差が大きいとみなします。自然界の現象は概ねそのようになっているからです。方法としては、確率の大きいものから順番に正規分布の確率密度に積分することにします。

・“幸せ”と“不幸せ”は、運(ギャンブル)であるとものとします。結婚前には誰もが婚約者に対して、周到なスクリーニングを行っているはず(家柄とか、家族構成とか、相手の出身大学とか、就職先とか、趣味とかを調べること)ですが、それでも、離婚に至る夫婦が存在するという事実は、一緒に生活してみるまでは結果のわからない「サイコロの目」と同じであると考えたためです。

結婚=“幸せ”“不幸せ”拡大システムの幸せ機能が見落とされるワケ~幸せ表明がリスクな国

 図3は、平成23年における「結婚件数に対する離婚件数の比率、35.6%」という数値を使って、この正規分布の確率分布の積分から、離婚のボーダラインを無理矢理算出したものです(繰り返しますが、正規分布関数は、本来このような使い方をするものではありません。<私は学生時代に、学習塾の生徒向けの成績統計解析ソフトウェアを自作していました。>今回の手法、測定対象数を特定できず、さらに“幸せ”という本来数値で測れないものを、無理矢理数値化するために編み出した江端の独自のものです)。

 この結果は「標準偏差“-0.37(シグマ)”」に相当するのですが、私たちに馴染みのある「偏差値46.3」という言い方にします。

皆さんが、高校や大学入試の時に、学校や予備校から渡された模擬試験の合否判定予測の通知表を思い出してください。

 離婚率35.6%は、結構大きい値のように感じます。1970年度から40年かけて約2倍になっています。70年の離婚率を偏差値にすると43.3くらいですので、この40年間で「離婚に対する自由が、偏差値として3.0上がった」というポジティブな言い方もできます。

 さて、この正規分布関数から“幸せ”と“不幸せ”を算出するに際しては、前述の2つのデータを用います。図4と図5に、それぞれのデータの概要を示します。

結婚=“幸せ”“不幸せ”拡大システムの幸せ機能が見落とされるワケ~幸せ表明がリスクな国
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●“不幸せ”の数値化

 では、最初に“不幸せ”の数値化です。

 これは離婚申し立ての頻度の高い項目から、その発生確率を正規分布表をにらみながら、正規分布関数にはめ込んでいきました。この結果を図6に示します。

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 まず注意していただきたいことは、偏差値の低いほうが、より“不幸せ”という読み方をしてはならないということです。例えば、「私の旦那は浪費家(36.0)だから、DV(39.3)を受けているあなたより私のほうが不幸だわ」という使い方は明らかな誤用です。ご留意ください。

 これは、どのような種類の“不幸せ”が、どの程度起こりやすいか、を見るものです。それぞれの“不幸せ”の内容は、概ね等間隔の分散をしており、直感的にはわかりやすい数値になっていると思います。

 このグラフから読み取れることは、離婚理由というのは、ドラマで登場する「DV」や「嫁・姑問題」などよりも、圧倒的に「性格不一致」という理由が多いということです。ドラマの内容を疑問なく、そのまま真に受けて結婚を躊躇している人がいるとしたら、それは考え直したほうがよいかもしれません。

 また、性格不一致などは、夫婦の努力(偏差値を44.0→46.3と、わずか2.3上げる努力)によって離婚に至らずに済む可能性が示唆されますが、「DV」「浮気」「家庭を顧みない」という問題では、その可能性が格段に低くなり、「嫁・姑問題」「酒乱」に至っては「努力するだけ無駄」という結論が導き出せます。これらの結果は、私たちの感覚と合っているように思えます。

 例えば、『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系/1990-2011)という、親族不和をテーマとする人気ホームドラマのテレビ番組がありましたが(私はきちんと見たことがないのですが)、この設定を現実の世界に持ち込んだとすれば、第1回「親族との不和」、第2回「家庭裁判所への提訴、判決」の全2話で完結する話になると思います。

 いずれにしても、「結婚システム」が一種の「“不幸せ”生産装置」であることは事実のようです。

●“幸せ”の数値化

 では次に、“幸せ”の数値化です。

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 前述した通り、幸せ度で5点以下の人がボーダ46.3から50.0にピッタリと当てはまった時はちょっと驚きました(偶然かもしれませんが)。

 こちらの“幸せ”は、“不幸せ”とは違い、分散に一定感がありません。例えば、満点である10点の比率が高すぎるのです。通常、10点満点のアンケートをすると「10点」をつける人は少ないのですが、このアンケートの10点が統計的には「異様に多い」のです。

 このデータのひとつの解釈は、「10点満点のテストなのに、それ以上の点(例えば11、12、13点)の点数を『つけたかった』という、リア充大爆発の女性既婚者が山ほどいた」ということです。これがサンプル20人くらいならともかく、1700人以上の母集団のデータからの結果としては、はっきり言ってすごいことです。

 私は、こんな「幸せを謳い上げている」データを見たことがありません。

「結婚システム」は、自然界の一般法則(“幸せ”が大きければ大きいほど、その“幸せ”を享受できる人数は少なくなる)を越える「『幸せ』生産装置」であり、データからは、多くの比率の女性が、その恩恵を受けていることが肯定されます。

●結婚による“幸せ”と“不幸せ”の比較

 では、この2つのデータの結果を、同じ正規分布表に乗せて比較してみましょう。

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 例えば、“幸せ”に「9点」をつけている人の対極に「家庭内暴力」「浮気」などによって不幸になっている女性がいて、「結婚して、幸せで幸せで、もう、どうしようかしら」という幸せリア充爆発「10点満点」の人の対極に「家庭無視」「性の不満」「嫁姑問題」「酒乱」という超ド級の不幸が位置しています。

 では、図9に女性の結婚“幸せ”偏差値表を開示します。結婚や離婚に迷った時、何が懸案なのかを整理して考える参考になれば幸いです。

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●「結婚システム」は、圧倒的な“幸せ”生産機能を持っている

 今回の結果から明らかなように、「結婚システム」には“幸せ”と“不幸せ”のどちらの方向にも拡大・展開する機能があります。女性の人生を地獄に叩き落すような“不幸せ”を生産する能力もあり、また満点以上の点数をつけさせる、魔法のような“幸せ”を生産する能力も有しています。

 また、決して低くない離婚率(35.6%)から見て、「結婚システム」の“幸せ”や“不幸せ”を自由にコントロールするジョイスティックやリセットボタンのようなインターフェースはなく、結婚が「運」に左右される「ギャンブル」であることは間違いなさそうです。

 これらより、第3回の結論と同様に「勝負に出ないこと(独身を貫くこと)が最適戦略」という結論を導き出すこともできるかと思います。

 しかし、――主観的な所感ですが――データを見る限り、女性に関しては「結婚」という勝負に出る価値はありそうです。これは、やはり図5のデータおよび図9の解析の結果のインパクトが大きく、そう感じます。

 46%の人が10点満点で8点以上の“幸せ”であると回答し、77%の人が6点以上の“幸せ”であると回答し得る、そんな「“幸せ”生産機能」を有するシステムは、私の知る限り「結婚システム」以外にはありません(少なくとも、教育システムや納税システムにはなく、そして私が仕事で関わってきた「鉄道/電力/交通/通信システム」には絶対にありません)。

 そのような「結婚システム」の「“幸せ”生産機能」が、なぜこれほど知られていないのか、不思議に思いませんか? それは“不幸せ”は、多くの人に歓迎されるエンターテインメントであり、比して“幸せ”は、他人にとっては不愉快で、そして妬みの対象となり得るからと、私は考えています。

 私は、いわゆる「テレビドラマ」が嫌いです。世の中には、放っておいても不幸や不運があふれ返っているのに、なぜ不幸や不運の「創作物」まで見なければならないのか、と思えてしまうのです。

 しかし、一方で「家族皆がいつもニコニコしていて、子供はきちんと勉強して、順当に成績が伸びて受験に成功して、奥さんはご近所とのおつきあいで素晴らしいコミュニケーション力を発揮して、旦那は仕事で努力を重ねて出世を続ける」――そんなドラマが視聴率を取れるだろうか、と自問すれば「まあ、初回で打ち切り決定だな」と、当然のごとく思えます。

 つまり、“幸せ”であること(そして、それを吹聴することは)は、我が国においては最大級の悪徳であり、仲間に対する裏切りであり、世間に対して生涯黙していかねばならないトップシークレットなのです。

 つまり「結婚システム」の「“幸せ”生産機能」は、今回の筆者のように誰かが苦労して見つけだして、それを公表しない限り、開示されないもののようです。

 そもそも結婚が必ず不幸になるシステムであるなら、そのようなものが存続し続けているはずがありません。

●“不幸せ”のリセット手段

 それと、忘れがちなのですが、「結婚システム」が「“不幸せ”生産機能」を暴走させてしまったとしても、それを「止める手段」は残っています。

「離婚」というリセットボタンをプッシュすれば、「結婚システム」は停止します。「離婚」は“幸せ”になるための確実な第一歩であることを忘れてはならないでしょう。もちろん、離婚は夫婦間の合意が前提であり、最悪、裁判に持ち込まれることもあり、また親権や養育費・慰謝料の問題と、山ほどのデメリットもあります。

 それでは、結婚の“幸せ”偏差値を上げるには、どうしたらよいでしょうか?

 それは、「結婚システム」を起動する前に、“不幸せ”の要因を早期に発見するように動き出せばよいのです。そのひとつの手段は、できるだけ若い時期からの同棲生活です。

「相手の人となりを知るには、1週間も一緒に旅をすればよい」とは、昔からよく言われることです。同棲という共同生活によって、見えてくることはたくさんあります。図6に示した“不幸せ”の項目の多くを事前にチェックできるはずです。

 双方が受け入れられないことがあれば、同棲を終了させればよいのです。問題がなければ、そのまま事実婚として生活を続けていけばよいし、制度上のメリットを得たい時に、結婚届を出してもよいのです(このあたりについては、図1「(B)形式婚」のところで、別の機会に説明させていただきます)。

 また、罪悪感を抱くことなく、世間体を気にすることもなく、何度でも離婚や再婚に踏み切れるマインドをつくることも大切だと思います。少なくとも「運」による離婚の確率は、再婚を繰り返すことによって格段に下がっていきます。何度も離婚と再婚を繰り返す芸能人こそが、私たちの目指すべき理想像なのかもしれません。但し、離婚の原因が「運」ではなく「本人の資質」によるものでしたら、何度離婚を繰り返しても離婚の確率は下がりませんが(参考:『最高回数は7回! 有名人、結婚回数ランキング』)

●まとめ では、本日の内容をまとめます。

(1)「出産させないシステム」は、6つの要素から構成される非常に堅固なシステムであり、このシステムを一気に破壊するのは容易ではないと考えられる。私は今後、時間をかけて「出産させないシステム」の「破壊工作」の検討を続けたい。

(2)「結婚システム」は、“幸せ”と“不幸せ”いずれの方向にも拡大・発展させるシステムであり、かつ、そのコントロールは事実上「運」によって支配されるケースが多いと考えられる。

(3)一方、「結婚システム」の「“幸せ”生産能力」は、他のシステムと比較にならないほど高いが、その事実はほとんど知られていない。それは、我が国において“幸せ”であることを表明することが、リスクを伴う行為であるためと考えられる。

 最後に。

 私がマリッジブルーの時(男性でもマリッジブルーになるのです)、「結婚はパラダイスだ」と言い切ってくれたのは、かつての上司ただ一人でした。

「江端君、君は何を言っているのだ。結婚が君を“不幸せ”にするわけがなかろうが。結婚というのは、君の人生にバラエティ(多様性)を与えてくれて、そのような変化の中にこそ……」と、滔々と説教してくれた、そういう大人が今の世の中には少なすぎるのではないか、と思う次第です。
(文=江端智一)

 なお、図、表、グラフを含んだ完全版は、こちら(http://biz-journal.jp/2013/11/post_3470.html)から、ご覧いただけます。

※本記事へのコメントは、筆者・江端氏HP上の専用コーナー(http://www.kobore.net/kekkon.html)へお寄せください。

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