隔年で開催されている日本の自動車業界最大のイベントである「東京モーターショー」が、存亡の危機に立たされている。「費用対効果が得られない」として海外自動車メーカーが相次いで10月開催の同ショーに出展しない方針を決定しているためだ。
主催団体である日本自動車工業会(自工会)の会長を豊田章男トヨタ自動車社長が務めていることもあって、顔を潰されたかたちとなったトヨタは仕返しとばかりに、ドイツで開催されるフランクフルトモーターショーへの出展を取りやめる。自動運転や電動化で自動車産業が大きく変化するなか、モーターショーもそのあり方が大きく変わろうとしている。
費用対効果自工会は5月13日に開いた記者会見で、10月24日に開催する「第46回東京モーターショー2019」の出展会社などの詳細を発表する予定だったが、直前になって取りやめた。海外自動車メーカーの出展申し込みが少ないことから、出展を再検討してもらうためだ。しかし、その後、フォルクスワーゲン(VW)、アウディ、BMW、PSAグループ(プジョー・シトロエン)などが相次いで出展しない意向を正式に表明した。
海外の主要ブランドで出展するのは、輸入車の業界団体である日本自動車輸入組合の理事長を日本法人のトップが務めるダイムラー(メルセデス・ベンツなどを所有)と、日産自動車のグループ会社が輸入権を持つルノーぐらい。国際モーターショーにもかかわらず東京モーターは事実上、国内モーターショーに成り下がる。
東京モーターショーは1954年に開催されて以来、半世紀以上にわたって、自動車産業の最新モデルや技術を紹介する国内最大級のイベントとして開催されてきた。特に自動車メーカー数が多く、日本の基幹産業となっているだけに東京モーターショーは世界的にも注目され、ピークには来場者数が200万人を超えた。
しかし、日本の自動車市場が成熟して需要が伸び悩むなか、まず米国自動車メーカーの一部が出展を取りやめた。もともと日本市場は輸入車市場が小さいが、なかでも米国車のシェアは低く、成長は見込めないためだ。
さらに中国の自動車市場が成長したのを受けて、欧米の自動車各社は上海と北京で毎年交互に開催される中国のモーターショーに力を入れるようになり、同じアジアにある東京モーターショーの地盤が沈下していった。
日本自動車輸入組合の上野金太郎理事長は「モーターショーに対する各社の考え方が以前とは変わってきている。世界的な出展料の高騰や、投資に対するリターンもある」と述べ、費用対効果が得られないことが原因と指摘する。モーターショーへのブース出展には億単位のコストが必要と見られ、その割には販売やブランド認知の向上などの面でメリットが薄いためだ。
実際、東京モーターショーに限らず、自動車各社は世界各地でモーターショーへの出展を見直している。フランクフルトと交互に開催されている仏パリモーターショーでは2018年、VWやFCA(フィアット・クライスラー・オートモビルズ)、フォード・モーター、日産自動車などが出展しなかった。こうした流れが東京にも波及している。
こうしたなか、トヨタは世界的なモーターショーで、1977年から40年以上にわたって出展してきたフランクフルトモーターショーへの出展を取りやめる。これに関しては、費用対効果の面もあるが、VWやBMWといったドイツ企業が出展しないことによって、主催者代表として東京モーターショーを盛り上げようと必死だった「豊田会長の顔に泥を塗ったことに対する抗議に意味がある」(関係者)と指摘する声もある。
ただ、ある自動車メーカー幹部は「自工会の会長会社のトヨタがフランクフルトモーターショーに出展しないことで、欧米企業に東京モーターショーへの出展を強く要請できなくなった」と肩を落とす。
モーターショーのあり方に変化自動運転や電動化などで、自動車産業は大きく変化しようとしており、モーターショー自体も変化を迫られている。毎年1月に開催されてきた米デトロイトモーターショーでは、その直前に開催される自動運転車や最新技術の見本市「CES」を自動車メーカーが重視するようになった。
最新モデルや最新技術を世界で初めて公開する場としては、中国のモーターショーにその地位を奪われ、市場としての魅力も欠いている東京モーターショー。海外ブランドが相次いで撤退するなか、そのあり方を抜本的に見直す時期にきている。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)

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