今、サウナが空前のブームである。これまではおじさんの単なる憩いの場でしかなかったのが、最近では若者たちが大挙して押し寄せ、サウナ愛好家のことを「サウナー」と呼ぶまでに発展。

「熱波師」がタオルなどで熱い熱波を客に届けるサービス「ロウリュ」タイムでは長蛇の列が起き、実際に人気のサウナ店では客が入りきれないこともあるほどだという。

 そんなサウナブームを生んだきっかけのひとつといわれているのが、マンガ家のタナカカツキによるマンガ『マンガ サ道~マンガで読むサウナ道~』(2015年より講談社「週刊モーニング」にて連載中)。あらゆるサウナ施設では本書がバイブルのように置かれており、原田泰造主演で初映像化され、この7月よりテレビ東京で連続ドラマとして絶賛放送中だ。

 サウナに詳しいあるスポーツ紙記者は、『サ道』の魅力を次のように語る。

「2011年にパルコ出版より単行本化されたコミックエッセイ『サ道』は、サウナをきちんとしたカルチャーとして描いた記念碑的作品。サウナでのマナー、水風呂の重要性、名もなきサウナーたちの佇まいを独特の筆致で描き、タナカ先生はこのマンガでサウナの概念を180度変えることに成功しました。また、サウナと水風呂を往復することで脳内麻薬が出てトリップ状態になることを“ととのう”と表現し、その瞬間をしっかり描写しているのもすごいの一言。今まで誰も明確には言及してこなかったサウナの魅力をここまで可視化しているのは、本書しかありません。サウナ施設の読書コーナーにサウナーのバイブルとして鎮座しているのも、当然だと思いますね」

サウナで蒸されてじっと耐えている“あの瞬間”を初めて映像化

 そういうわけで、満を持して初映像化された感のあるドラマ『サ道』は、1話につき1サウナを深く掘り下げるというシステムを採用。各サウナのスタッフも実際に出演するなど、全編にサウナ愛が詰まりに詰まった作品になっている。あるテレビ局のプロデューサーは、本ドラマの見どころをこう語る。

「原作では、サウナ施設そのものの情報量はそこまで多くはないのですが、ドラマ版ではそこをしっかりと具体的に描き、サウナ情報番組としても成立する仕上がりになっています。

主人公が毎回違うサウナにおもむき、いろんな客や設備を静かに観察し、そしてサウナで蒸され水風呂で心身を引き締め、最終的にととのう――。ただそれだけの物語なのですが、その“何も起こらない感じ”が、サウナのよさをうまく描いていて、“技アリ”なんですよね。

 倍速モードでドラマを見たり、スマホで10秒スキップしながら映画を観る人も多い昨今ですが、このドラマは、絶対に倍速もスキップもせずにじっくりと味わうべき作品。サウナで蒸されてじっと耐えている“あの瞬間”を、まさにこのドラマは表現として映像化しようとしているのだと思います」

伝説の地「しきじ」で最終回か

 ドラマはいよいよ終盤に突入。サウナーの聖地といわれている静岡県の「しきじ」にまで足を延ばした主人公が、どのような形で最終回を迎えるのかも気になるところだ。

「確かに最終回は絶対にしきじだと思ってたので、大オチがどこなのか、サウナーの間でもいつも話題になってますよ(笑)。昨今のサウナブームで、今ではしきじに行くためだけに静岡を訪れる客も多く、これ以上混んだらほんと、サウナーとしては困るんですけどね。

 ちなみに主人公演じる原田さんはサウナに一般客として前乗りして、実際に宿泊して翌朝にもサウナに入ってから収録に臨んでいるのだそうです。もう、役作りというより、この収録が本当に楽しくて仕方ないんでしょうね。ドラマの現場はどこも過酷なのが当たり前ですが、主演俳優がわざわざロケ現場に前乗りするなんて聞いたことありませんよ。原田さんもそこまでやる気にみなぎってるし、日本全国に目を向ければ、サウナ施設はまだまだ各地にある。つまり、シーズン2までいく可能性が極めて高い作品なのですが、そうなるとまたサウナ客が増えちゃうので、やっぱり困るんですけどね(笑)」(前出・テレビ局プロデューサー)

 空前のサウナブームに拍車をかけ、現在話題沸騰中のドラマ『サ道』。

サウナーたちが脅威を感じるほど波及効果抜群の本作は、どのような着地を見せるのか? サウナ室にいなくともととのってしまいそうな結末を期待したい。

(文=藤原三星)

藤原三星(ふじわら・さんせい)
ドラマ評論家・コメンテーター・脚本家・コピーライターなど、エンタメ業界に潜伏すること15年。独自の人脈で半歩踏み込んだ芸能記事を中心に量産中。<twitter:@samsungfujiwara>

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