1日から始まった消費増税。最も注目を集めていたのは、持ち帰り(テイクアウト)と店内飲食(イートイン)で適用される税率が違うという点だ。
2日昼、都内の複数のコンビニエンスストアのイートインをはしごしてみた。まず1軒目。小さめのお弁当とジュースを購入。レジに持って行くと外国籍の男性アルバイト店員がすばやくバーコードを読み取り、会計終了。この間、店員からは「いらっしゃいませ」という言葉と会計の合計額以外、発せられることはなかった。レシートを見ると消費税は軽減税率適用の8%。店内のイートインコーナーで席を確保してから店員に「さっき、テイクアウトで買ってしまったのですが、イートインで食べようと思うんです」と聞いた。
そうすると日本人の店員が対応し、「ああ、購入された後に気が変わったということでしたら問題ありません。とうぞ、そのままお召し上がりください」と言われた。しばらく同コーナーで弁当を食べている間、レジの様子を見ていた。
次の店では、パスタを購入。レジに持って行くと特段、何も聞かれることなく消費税8%で金額が提示された。「イートインでお願いしたいんですが」と申告したところ、店員は「ああ、10%になってしまいますけどいいですか」と申し訳なさそうな表情で、10%の代金で会計してくれた。1店目と同じようにイートインスペースでパスタを食べながら、レジの様子を観察した。5人ほどが弁当などを購入し、イートインで食べていたが、ここでもイートインかテイクアウトかを店員が聞くことはなく、購入者が申告することもなかった。
コンビニでは持ち帰りがデフォルトこうした状況が全国で広がっているとなると、「最初からイートインで食べようとしているのに、テイクアウトであると偽ってイートインで食べる」もしくは「購入後に気が変わったことにしてテイクアウトで購入した商品をイートインで食べる」ことが可能になってしまう。少なくとも制度の趣旨に則って、イートインで食べることを会計時に申告した正直者は、そうでない人に対して損をすることになってしまうのではないだろうか。
千葉県内のコンビニ経営者は次のように話す。
「うちの店ではレジ横に小さく『イートインのお客様は軽減税率が適用されませんので会計時にお申しつけください。もし会計後に気が変わられた場合は、どうぞそのままイートインでお召し上がりください』と掲示しています。
イートイン、テイクアウトに関わる問題点を消費者問題研究所代表の垣田達哉氏は次のように説明する。
「まず、国税庁が上記のコンビニのように掲示を出すように通知を出しているので、コンビニの対応に間違いはありません。レジでお客がどちらにするかを宣言した時に8%か10%に決定します。その後、それをどこで食べるのかは関係ありません。イートインコーナーで弁当を食べていても違法ではないので、税務署の職員がその場にいたしても何も言えません。つまりモラルの問題なのです。
コンビニでは、テイクアウトのお客が圧倒的に多いのでこのような対応になっています。消費者としてもレジ前でどちらにするか思い悩んで時間がかかるよりは、スムーズに会計が済むほうがプラスになります。レジが滞るといら立つお客さんもでてきて、トラブルに発展する可能性もあります。
ただ、問題になるのは高速道路のサービスエリアやショッピングモールのフードコートなど混み合う場所です。
つまりお客さん同士のトラブルこそ懸念されるのです。こうしたトラブルを防ぐために、マクドナルドやケンタッキーなど体力のあるファーストフード店は、テイクアウトもイートインも一律8%で会計しています。しかも、イートインの商品の本体価格(税抜価格)は、増税前より値引きしています。店としてはレジのスピードアップにつながるし、お客もお得で会計も単純です。店内で食べようが持ち帰ろうが気兼ねすることなく安心して食事を楽しめます。店もお客もお金をめぐってトラブルを起こしたくないのです。
ただ、増税した2%分は他の商品に転嫁したり、会社として負担したりしなければならないので企業側の地力の強さが物を言うことになると思います」
増税からまだ2日だ。非常にわかりにくい制度の中で、消費者の混乱は続いている。制度そのものが個人のモラルに委ねられているとするのなら、トラブルも起こり得るだろう。
(文=編集部)