ディズニーランドの人気アトラクション「ビッグサンダーマウンテン」に乗れば、尿路結石が治るという説が話題になっている。
尿路結石症は腎臓から尿道までの尿管に結石が生じる疾患であり、結石が詰まり尿管を刺激すると激しい痛みを伴う。
どんなに豪傑な男性でも悲鳴を上げるほどの痛みを伴う尿路結石が、ジェットコースターに乗ることで治療できるとなれば朗報だ。そんな夢のような研究を行ったのは、泌尿器科医として20年以上の経験を持つデビッド.D.ワーティンガー博士である。
なぜか今、話題になっている「尿路結石のジェットコースター治療」だが、実はすでに10年前にミシガン州立大学で研究が始められており、2016年に論文が出されている。その研究結果は以下の通りだ。
・中等度のコースターに3回連続で乗った際に、尿路結石が取れた
・後方席は2倍取れやすい
さらに研究では、結石を取るための理想的なコースターは、急速な落下とキレのいいカーブを備え、時速40マイル(64.37キロ)以下で進み、逆さまにならないことが最適な条件だと突き止めた。また、定期的なコースター乗車は結石が痛みや疼痛、手術を要する5mm以上になる前に取り除くことができると報告している。
尿管につまった結石の90%以上は尿と一緒に自然に排出されるため、結石を出やすくするよう水分を多く摂り、痛みのないときにはランニングや縄跳びをすると排出されやすいという説もある。
くぼたクリニック松戸五香院長の窪田徹矢医師に、ジェットコースターによる尿路結石治癒の可能性について聞いたところ、否定的見解を示した。
「このような重力で結石が取れるとは考えづらいです。尿路結石にはガイドラインがあり、それにそって診療しています」
そのガイドラインについて、次のように説明する。
「再発に対する指導と薬物療法には、基本的な項目があります。
一度結石ができると、その後も繰り返す傾向にあるため、結石の有無に限らず定期検診が大切だという。
「結石がない場合は、6カ月から1年ごとの通院と尿検査、または1年ごとの超音波検査、X線検査(KUB)。結石を有する場合は、3カ月から6カ月ごとの通院と尿検査、6カ月ごとの超音波検査、X線検査が推奨されます」
今のところジェットコースターによる尿路結石治療がガイドラインに盛り込まれることはなさそうだが、今後、エビデンスが出ることを期待したい。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)
吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。