
技術系人材サービス大手のテクノプロ・ホールディングス<6028>は、デジタル化でビジネスを変革するDX化を実現するための技術者の派遣などを行うソリューション事業で、事業の中核を担えるIT企業の買収を2026年6月までに実施する。
オーガニックな成長(社内の経営資源を活用した成長)だけでは難しいAI(人工知能)などのデジタル要素技術やソリューション(問題解決)技術を獲得するのが狙いで、買収は未公開企業だけでなく、上場企業も対象とする。
同社は2021年に、2022年6月期から2026年6月期までの5年間に、ソリューション事業領域で中核となり得る企業の買収を目的に、M&Aに400億円を投じる計画を策定したが、3年近く経った現在もこの目標は達成できていない。
今後、ソーシング活動(買収候補となる企業を選定する活動)が加速することなりそうだ。
提案力やコンサルタント力のある企業が対象
M&Aの対象となるのは、提案力やコンサルタント力、システム構想力、広範なデジタル技術などを持つ企業で、特定の技術力を持つ企業やソリューションの補完が可能な企業にも選定の幅を広げる。
ソリューション事業では、DX化支援のほか、RPA(ロボットによる業務自動化)などの業務プロセスを一括して受託するビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)や、海外での設備搬入、据え付け、保守などの海外導入支援などに取り組んでいる。
このソリューション事業の2026年6月期の売上高は全社売上高の4分の1ほどの570億円を見込んでおり、このうちこれから傘下に収める企業分を含め、150億円分をM&Aで稼ぎ出す計画だ。
このほか、研究開発アウトソーシング事業や、施工管理アウトソーシング事業などの同社のコア事業では、採用が困難な技術領域でIT技術者の採用の代替となるような企業についても、M&Aを検討する。
売上高2500億円のうち300億円分をM&Aで
テクノプロは機械、電気、電子、組み込み制御、ソフト開発、化学、バイオ、建設などの業界向けのIT関連の技術者を多く抱えているのが強みで、2024年12月末時点の国内在籍技術者数は2万6651人に達している。
機械や化学、IT、建設などの業界ではIT関連の技術者に対する需要が強く、同社ではこうした業界に技術者の派遣や請け負いなどの人材サービを提供してきた。
また同社は、これまでM&Aに積極的に取り組んできており、2015年に技術者向けの教育研修事業を展開するピーシーアシストの子会社化を適時開示したのを手始めに、これ以降はほぼ毎年M&Aを実施(M&A13件の適時開示)してきた実績がある。
ただ2021年にインドのソフトウエア開発会社Robosoft Technologiesを子会社化したあとは、3年以上M&Aから遠ざかっている。
久しぶりとなるM&Aに踏み切ることで、2026年6月期には売上高2500億円(2024年6月期は2192億1800万円)、営業利益320億円(同219億1800万円)を見込む。
M&Aによる増収効果は、ソリューション事業の150億円のほかに、海外事業でも150億円(海外事業の増収分は2021年に傘下に収めたRobosoftによるもので、現在はRobosoftの強化に注力するため海外M&Aは凍結中)を見込んでおり、営業利益率はソリューション事業、海外事業ともに全社平均の12.8%を上回る15.0%を予想する。
ソリューション事業領域でのM&Aは近そうだ。

文:M&A Online記者 松本亮一
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