財務省の資料「国債等の保有者別内訳」(令和3年9月末<速報>)によると、国の借金(国債残高=約1067兆円)のうち、日銀は約5割の約513兆円を保有している。いまや国債の最大保有者は日本銀行だ。

 このように、日銀が大量の国債を保有するに至ったのは、インフレ率2%の実現を目指して、異次元の金融政策を実行したためである。資金供給の調整といった金融政策の目的遂行のため、市場から日銀が国債などを購入することを「買いオペ」、逆に日銀が保有する国債などを市場で売却することを「売りオペ」と呼び、「買いオペ」「売りオペ」などを一般的に公開市場操作という。

 公開市場操作により、日銀が「買いオペ」で市場から大量に国債を購入した結果、日銀は500兆円超もの国債を保有するに至っているわけだ。こうした現状のなか、「日銀は政府の子会社のような組織のため、日銀が保有する国債はもはや国の借金ではない」という意見がテレビやネット上などでときどき聞かれる。

 この意見は一見正しいように思われるが、日銀が市場から国債を購入するだけで、本当に政府の借金が減少するのか。結論から言えば、残念ながら、そのような魔法は存在しない(もし存在するならば他の国々でも既に実行され、財政問題に苦慮する国々は存在しないはずだ)。以下、その理由を簡単に説明しよう。

誰かの負債は誰かの資産

 まず、議論を単純化するため、海外の投資家などは国債を引き受けず、国内だけで国債を消化するケースのみを考えよう。このケースでは、日銀が「買いオペ」で市場から国債を買い取る場合、その国債を売却するのは民間銀行などの金融機関となる。