新入社員の人は、職場の雰囲気がおおよそわかった5月に、気分が暗くなることがよくある。新入社員の5月病だ。

周りの人の名前や仕事の内容がおおよそわかり、少し落ち着き始めると、今度は不安が膨らみ始める。

 ある人は、こんな難しい仕事を自分ができるのかと不安になる。また、ある人は反対に、自分が将来したいことにつながりそうもないつまらない仕事だと感じている。そして、ほとんどの人は、その矛盾する2つの感情を同時に持っていることだろう。

 そういう人に、サラリーマン歴30年の筆者から、3つだけアドバイスしてみたい。

●不器用な人は成長する
 
 器用で、いろんなことにおいて成果が出せ、周囲の受けのいい人がいる。こういう若いうちから対個人の説得力のある人は、30代後半から40代には伸び悩む傾向がある。

 タイプでいうと、一連のSTAP細胞論文問題をめぐり2014年12月に理化学研究所を退職した小保方晴子さんのような人だ。彼女は間違いなく面接試験も強いだろうし、営業をさせたらいい成績を出すだろう。直接面談して打ち合わせると、相手が大抵はファンになって味方をしてくれる。営業ではなくて組織内の業務でも、その人が説明すると上司や関係部署などがみんなニコニコしてOKしてしまう。

 対個人の瞬間的な説得力が高い。
相手をひきつける人格的魅力があり、その魅力で相手から手品のようにOKをとってくる。表情が豊かでくるくると変わり、その変わるタイミングが絶妙だ。説得しているトピックだけでなく、自分の人間的魅力もきっちり売り込んでいる。

 ところが、こういう人は歳をとってくると伸び悩むことが多い。若いうちに基礎ができていなくても、多少の失敗や欠点をお客も上司も周囲も許してくれ、仕事がそれなりに進む。そうすると、基礎ができずに育つ。

 しかし、歳をとってくると、若さゆえの魅力も衰えてくる。仕事の内容や質も重要になってきて、短期間で個人を納得させるだけではなく、長期間集団や組織の体系的なチェックに耐えて納得を得なければならない。そうすると、基礎力がないだけに案件そのものがうまく進まず、結局実績があげられなくなる。
 
 一方で若いうちは不器用で同じ失敗を繰り返しても、人よりたくさん怒られる人もいる。いつもゴツガツとぶつかりながら進んでいる。面接試験も上手でないし、短期間の営業ではいい成績もでない。
本人もつらそうだし、みているこちらもつらい。

 しかし、ごまかしが下手なおかげで小さな失敗や欠点も指摘され、叱られて改善しているので、基礎ががっちりできている。30歳を越えて重要な仕事をするようになると、土台がしっかりしているので確実に案件をやり遂げることができる。ほとんどの仕事において、社内も社外も5年、10年、20年と長期間の人間関係だ。瞬間的なごまかしはいずればれるし、華やかでなくても正直で確実に実行する人が、結局は信頼を得られる。

 また、若いうちに不器用で苦労した人は、打たれ強いので、多少の困難にぶつかってもへこたれない。天分でなく努力で技術を身につけているので後輩の指導もうまい。こういう人は、30歳、40歳になってから着実に実績もあげて成長していく。

 不器用な人は、成長する。

●寄り道、回り道もみんな資産になる
 
 今一生懸命やったことは、すべてのちに使えるから、なんでもやっておいたほうがいい。20代に興味を持って一生懸命やったことは、すべて後々自分の役に立つ。直接仕事の成果につながらないことでも、単なる私的な趣味であっても、結果がうまくいってもいかなくても、自分の大切な資産になる。
今はとにかくなんにでも興味を持って、興味を持ったことを一生懸命やるのが一番だ。

 つまらなくみえる仕事でも、別の角度から興味を持ってみるといい。私は朝のビラ配りをしていた時に、「遅刻ギリギリに来る人には美人が多い」という仮説を立てて楽しんでいた。「天は二物を与えないのか」と。そう思ってニヤニヤしていたのなら、ダメなビラ配り要員だった。でも、街歩きからマーケティング上の「きざし」を読み取る最初のよいレッスンだった。

 取引先にぺこぺこするのがつらければ、どうしてこんなに立場が弱いのか、業界の構造について考えてみてもいいだろう。社会の不合理をみつければ、将来それを正す方法を見つければ、大きなビジネスにつながることはよくある。たとえば、不合理にぺこぺこもせずインターネット上で片付くようにしてしまえば、その業界の多くの人が利用するかもしれない。

 また、スポーツや音楽などの趣味を一生懸命するのも素晴らしい。将来転勤した先でその趣味を通じて地元の仲間ができると、赴任地に適合するのにとても助かる。

 コツは、興味を持つことだ。
脳科学からも示唆があるように、何事も興味を持って楽しんでいると、習熟も早いし、記憶にも残る。うまくいかなくてもその経験を蓄積できる。イヤイヤやっていると身につかない。

 仕事であれ趣味であれ、今一生懸命していることが将来どういうかたちで役立つのかわからずに、不安になるかもしれない。しかし、世間で自分の経験をどう活かせるかなんて、世間知らずの20代の若造にわかるわけがない。一生懸命やって得た無形の資産をどれだけ、どういうふうに活かすかは、30代、40代の自分に任せよう。
 
 さらにいえば、現代は変化が速い。たいていの会社では、20年、30年前に「出世コース」といわれたポストが、今では「出世コース」ではない。そんなものを目指しても、あまり投資効率はよくないだろう。

 今、目の前にあることに興味を持ち、その興味を持てることを一生懸命するのが、実は人生を豊かにする近道であり、王道だ。

●期待しすぎず、諦めず

 まず、自分に対して期待しすぎず、諦めずだ。自分はもっと仕事ができると思っていたのに、作業のミスは多いは、書いた資料は真っ赤に直されるは、ひとつ失敗すると慌ててまた次の失敗をしてしまうはで、自分にがっかりすることもあるかもしれない。
自分に期待しすぎると、そういうときに落ちこんでしまう。

 自分自身にあまりに過剰な期待を持たないのも、実社会で生き抜くコツだ。だからといって、自分はダメで最低の人間だと諦めてはいけない。期待しすぎず、諦めず。自分に対する期待値をほどよくコントロールする術を身に着けよう。

 実は、これは自分に対してだけでなく、配属先の上司・先輩にも、あるいは自分の担当の仕事にも、ひいては就職した会社にも当てはまる。

 上司に対しても期待しすぎず、諦めず。会社に対しても期待しすぎず、諦めず。担当の仕事に対しても、期待しすぎず、諦めず。

 そして、仕事とは関係ないが、恋人にも期待しすぎず、諦めずだ。
(文=小林敬幸/『ビジネスの先が読めない時代に 自分の頭で判断する技術』著者)

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