都内で開催中の「第39回東京国際映画祭」のコンペティション部門に選出されている映画『男ともだち』が27日、ワールドプレミア上映され、上映後のQ&Aに三島有紀子監督が登壇。主演の松岡茉優を起用した理由や、相手役の成田凌を通して松岡の表情を引き出した独自の演出方法について語った。


 本作は、絵を描くことにも、自分自身が何を求めているのかにも迷いを抱える主人公の神名(松岡)が、男ともだちのハセオ(成田)と過ごす3つの夜を通して、再び世界と向き合っていく姿を描く。

 三島監督は冒頭、「できるだけ物語を排除して、皆さんが肉体で感情を繊細に感じる映画を目指しました」と作品の狙いを説明。「撮り方も含めて、非常に余白を作った映画になっています」と語った。

 千早茜氏の原作と出会ったのは、コロナ禍の2020年。当時、監督作『Red』が公開されたものの、映画館が閉館し、次回作の撮影も中止になったという。人と人が寄り添うことさえ難しかった時期に原作を読み、「寄り添うということはどういうことなのか」と考えさせられたことが、映画化への出発点になった。

 さらに、主人公が自分の欲しいものも、描きたいものもわからなくなっている姿にひかれたといい、最後に2026年の今だからこそ発信したいメッセージを込められると感じたという。

 映画化を思い描きながら自宅のベランダで過ごしていたところ、面識のなかった杉本雄介プロデューサーから突然、同じ原作の映画化を持ちかける電話があった。「神の見えざる手に導かれたというのか、運命的な電話だった」と振り返った。

 Q&Aでは、松岡の繊細な表情をどのように引き出したのかという質問も寄せられた。

 三島監督は、松岡について『桐島、部活やめるってよ』(2012年)の頃から注目していたと明かす。特に印象に残っているのが、松岡演じる女子高校生が階段を駆け下りる場面。
かわいらしい女子高校生でありながら、がに股で勢いよく下りてくる姿に、話し方や歩き方といった基本的な動作から人物を作り上げる俳優としての力量を感じたという。

 また、主人公には他人から理解されにくい欲望があるとした上で、松岡自身にも、現状に満足することなく「もっと表現したい」という渇いた欲望のようなものを感じていたことから、出演を依頼したと説明した。

 演出においては、俳優に直接動きを指示するのではなく、まず空間を設計することを重視しているという。例えば、フェリー乗り場での別れの場面では、ハセオが高い位置から神名に話しかけることで、神名が駆け寄り、階段を上って近づくという動きが自然に生まれるようにした。美術スタッフも、小道具の配置によって俳優の動きを導くことを意識していたという。そして、松岡の表情を引き出す上で大きな役割を果たしたのが、相手役の成田の存在だった。

 三島監督は、その方法を「間接的演出」と呼んでいると説明。「松岡さんに直接言わずに、成田さんにウィスパーする。そうすると成田さんがそれを導く芝居をしてくれて、表情を引き出していく」と明かした。

 相手役に働きかけることで、俳優同士のやり取りから自然な反応を生み出すという演出方法。「松岡茉優さんの表情が素晴らしいとしたら、それは松岡さんの力と相手役の成田凌さんの力が重なっている力だと思います」と、二人の芝居をたたえていた。
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