[取材・文]林 剛
[写真提供]CULTIVATE Inc.

公式サイトでは“和製ソウル・バンド”と紹介されているShunské G & The Peas(以下The Peas)。そのフロントマンとしてワン&オンリーの個性を振り撒くのがShunské Gだ。

スライ・ストーンやディアンジェロにも似たモゴモゴと呟くような歌い口で地声とファルセットを行き来し、ラップとスポークンワーズの中間的な歌を交えながら、時に恰幅のよいゴスペル・シンガーを思わせる野太い声で豪快なシャウトを放つ。

そんな彼が、2023年11月に初めてのソロ・アルバム『Gentle Reminder』をリリースした。現在発売中の「ブルース&ソウル・レコーズ」誌(No.175)でも紹介している同アルバムには、ソウルやファンクを心から愛するShunské Gの音楽趣味がThe Peasの時以上にストレートに反映されている。自ら弾くローズ・ピアノを交えた音数控えめのトラックにその個性豊かなヴォーカルが乗るアルバムを聴けば、多くの人がネオ・ソウルだと言いたくなるに違いない。だが彼の音楽は、ネオ・ソウルを形として取り込んだ表層的なものではなく、日常的にヒップホップを聴いてきた感覚でソウルやファンクをやったら、結果としてネオ・ソウルっぽくなったという印象を受ける。まさにディアンジェロがそうであったように。

2023年12月8日、ソロ・アルバム発売記念のリリース・パーティを謳って《渋谷WWW》で行ったライヴからも、ヒップホップを通してソウル、ファンク、ブルースを表現するShunské Gのスタイルが明確に伝わってきた。ディアンジェロの曲を中心に流していたFKDによる開演前のDJタイムに続いて始まったライヴは、初ソロ・シングル〈After Party〉に客演したMILES WORDを含む友人のラッパー、ダンサーたちが代わる代わるステージに登場。ちょっとした同窓会のようになり、ここからも彼のバックグラウンドがうかがえた。演奏陣は、バンマスを務めたアルバムの共同プロデューサーであるJ.M.K.こと林一樹(ds)と、その元バンド(Monoless)仲間であったYK(b)と斎藤渉(kbd)、The Peasの黒石田圭史(g)といった、これまたShunské Gと親しい面々。ソロ・アルバムからの曲に加えて、ロイ・エアーズ・ユビキティ“Everybody Loves The Sunshine”やマーヴィン・ゲイ“Let’s Get It On”のカヴァーも披露しながら全身でソウルを伝えたショウは、喜びと幸せと楽しさに満ち溢れていた。

ソロ・アルバムのリリースを記念して、「ブルース&ソウル・レコーズ」のウェブ版では、Shunské G本人の言葉で、これまでの音楽体験やソロ・アルバムについて語ってもらった。

──最初に名前のことをお聞きしますけど、Shunské Gの“G”って何ですか?

Shunské G「本名に因んでいたりしますが、後付けで、好きな言葉にGのつくものが多かったりもします」

──わかりました。出身は神奈川県とのことですが、アメリカでも生活されていたんですよね?

Shunské G「はい。幼少期にノース・カロライナとニューヨークに住んでいました。最初に喋った言語も英語で、家での会話も英語でした。仲良くしてもらっていた黒人の家族に教会に連れて行ってもらってゴスペルにも触れていたのですが、とにかくマイケル・ジャクソンに憧れていて。最初はマイケルやMCハマーのダンスがカッコいいなと思って踊りを真似していました。

アメリカは自分の肌に合ったみたいで、友達と別れるのも寂しくて……でも日本に帰ってきた時に、日本語もちゃんと喋れなかったので、J-Popのヒット・チャートに上がっている曲を中心に日本の音楽を聴くようになりました。小室哲哉さんの曲も好きですし、アイドルも演歌も好きです。最初に買った日本の音楽のCDはサザンオールスターズのベスト盤で、井上陽水のベスト盤も小学校の時に聴いていました。同時に『100% Rap』(94年)という海外のコンピレーションCDも聴いてましたね」

──ソウルやファンクを好きになる前に、小さい頃からいろいろな音楽を聴いていたのですね。

Shunské G「最初はニュー・ジャック・スウィングとかのダンス・ミュージックも含めてR&Bが好きだったのですが、エミネムの『The Marshall Mathers LP』(2000年)が出て、その後、カニエ・ウェストとかヒット・チャートで流れてくるヒップホップを普通に聴いていました。高校時代の友達は、MILES WORDもそうですけど、ヒップホップが好きな人が多くて、ラップやブレイクダンスをやってる友達にいろいろ教えてもらっていました。

そうしているうちに日本語のラップも聴くようになりました」

──その後、ソウルやファンクにのめり込んでいくと。

Shunské G「ダンスをやり始めて、まずジェイムス・ブラウンが好きになって。学生時代、自分はDJの友達と一緒にイヴェントをやる時に歌っていたのですが、そこでヒップホップから四つ打ちのダンス・ミュージックに流れていったような人たちにソウルを教わって、20歳前後でダニー・ハサウェイやカーティス・メイフィールドにハマりました。あと、やっぱりディアンジェロが大きかった。最初に聴いたのはベスト盤でしたが、“うわっ、何だこれは!”と。オリジナル・アルバムなら『Brown Sugar』(95年)が好きですね。

それと父がブルースやブルース・ロックのファンで、家にブルースのCDがいっぱいあったんです。特に自分はマディ・ウォーターズとかハウリン・ウルフ、ロバート・ジョンソンとかの古いブルースにハマっていました」

──そうして日本で学生生活を送った後、2013年から2015年まで、今度は自分でLAにわたって音楽活動をすると。

Shunské G「はい。LAのライヴ・レストランでジャズのセッションがあって、そこでレイ・チャールズの“Georgia On My Mind”を歌ったりしていたのですが、LAに行こうと思ったのは、オーレン・ウォーターズ(ウォーターズ)やフィリップ・イングラム(元スウィッチ~ディーコ)がヴォーカルの先生をやっている音楽学校があって、そこをたまたま見つけたからなんです。小さい学校ですが、テンプテーションズの元メンバーが創設に関わっていて、理事はミシェルっていう日本と台湾にルーツがある方で、一緒に地元を盛り上げていこうっていう感じの人でした」

──オーレン・ウォーターズやフィリップ・イングラムのもとで学ぶなんて贅沢ですね。

Shunské G「モータウンやハリウッドの洗練されたソウルやR&Bの歌い方を教えてもらいました。

あと、ルームメイトがパサデナのチャーチで歌っていて、練習会に参加するようになり、トゥループのジョン・ジョンが気にかけてくれて、クワイアに男性メンバーが足りないからと声をかけていただき、そこで1年ぐらい歌っていました。夢のような日々も2年少しの月日を経て帰国のタイミングとなり、日本へ帰ることとなりました」

──そんな状況の中でThe Peasがスタートしたのですね。

Shunské G「SWING-Oさんが主宰する《My Favorite Soul》というイヴェントで、以前オーサカ=モノレールのメンバーだったギターの黒石田圭史さんと出会って、一緒にジャム・セッションをやったのが始まりです。そこからふたりでライヴをやって、自分がLAで書いた曲とかを歌ったりしていました。それと、別のセッションでキーボーディストの井上惇志くんが演奏していたのを見て、“やべー! ちょっと一緒にやろうよ”となって、惇志くんが北海道出身の仲間を呼んでくれて、彼らが合流してバンド(The Peas)になった感じですね」

──The Peasの音楽性は、これまでのアルバムやソウル・クラシックのカヴァーEPを聴けばわかりますが、わりとストレートにクラシックなソウルやファンクをやる感じですよね。

Shunské G「The Peasのメンバーはジャズ畑の人が多くて、彼らのジャズのフィーリングと圭史さんのファンクのフィーリングを合わせたら70年代ソウルの雰囲気が出るんじゃないかって思ったんです。昔、モータウンのバンド(ファンク・ブラザーズ)もジャズメンが多かったと言われていますが、そんな感じかもしれません」

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【SPECIAL INTERVIEW】Shunské G ディアンジェロ、ユーミン、南部ソウル・ブルースが共生する初ソロ・アルバムとそのキャリアを語る【後半】に続きます。

※林剛氏によるアルバム『Gentle Reminder』のリヴューはブルース&ソウル・レコーズ No.175に掲載。

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特集 ブルースCDコレクション[リイシュー/発掘音源編] - ブルース&ソウル・レコーズ

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Shunské G
Gentle Reminder
CD (Always AR-0001) [ライブ会場限定発売中]
1. Water Blue
2. 離れて / Hanarete
3. どこ吹く風 / Dokofukukaze
4. Pretty Mama
5. Contradiction
6. Deepest Forest
7. Gentle Reminder
8. One Spirit One Soul
9. After Party
10. After Party feat. MILES WORD

【SPECIAL INTERVIEW】Shunské G ディアンジェロ、ユーミン、南部ソウル・ブルースが共生する初ソロ・アルバムとそのキャリアを語る【前半】

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