ただもうファンクあるのみ、何はなくともファンク。NOTHING BUT THE FUNK(NBTF)は、ファンクやソウルなどの伝説的なセッションに名を刻んできた日米の腕利きミュージシャンが合流して2000年にスタートしたユニットだ。

活動開始から四半世紀、ライヴは何度も行ってきたが、バンド25年目にして初めてのオリジナル・レコーディング・アルバム『NOTHING BUT THE FUNK』をリリース。NBTFの日本代表としてドラマーの沼澤尚氏に話を聞いた。

奇しくもインタヴューを行った日は、沼澤氏と交流が深かったジェイムズ・ギャドスンが他界する5日前。そのギャドスンとの数々のエピソードをはじめ、LAでボビー・ウォマックのバンド・メンバーに抜擢されて87年に“来日“した時のエピソード、パティ・ラベルのレコードにノンクレジットでハイハットだけ入れたこと、さらにはブルーノ・マーズやディアンジェロ、プリンス、エイドリアン・ヤングなどについても楽しく脱線しながらたっぷりお話しいただいたが、今回はNBTFの話にフォーカスしてお届けしたい。

[取材・文]林剛 [取材協力・写真提供]P-VINE RECORDS

こちらはPart.2の記事になります。Part.1はこちらから!

――以前からライヴで披露していた曲もあると思うのですが、アルバムは全6曲。日本サイドとしてはスガシカオさんの参加という話題もあります。

沼澤:アイディアやモチーフをみんなで持ち寄って、デモを作って、曲になりそうだったのがこれだけ(6曲)だったということで。スガくんとの曲は、以前僕がドラムを入れていた音源があって、去年、Shikao & The Family Sugarのツアー中にスガくんに「何か思いつく……?」と恐る恐る音源を聴いてもらったら、やってみると言ってくれて、すごいスピードで歌詞とメロディと本人の歌も全部入れて送ってきてくれて。ヤバっ、できた!と(笑)。

――それが2曲目に登場する“FROZEN FUNK”。これは森さん、そしてコーラスの大滝裕子、斉藤久美のおふたり(AMAZONS)も含めて、まさにShikao & The Family Sugarとしての曲でもありますよね。

沼澤:そう。最初はドラムとベースとギターだけのグルーヴ・サンプルみたいなのしかなかったんですが、それをスガくんに聴いてもらったら、すぐにスガくんの方でメロと歌詞が出来て。ツアー中だったので、コーラスの彼女たちにも、「ご飯奢るから、これ歌ってくれない?」って。スガくんにもご飯を奢っただけです。でも、そのおかげで(アルバムが)売り切れ続出、みたいな(笑)。

―― “FROZEN FUNK”、「冷凍ファンク」って何ですか?

沼澤:これ、スガくんが「冷凍食品」って歌ってるんですよ。それを英語にしただけです(笑)。(海外の)メンバーには「フローズン・フード」と歌っているんだと説明したら、「フード」というのもなんだし、エディが「ファンク」にしようと言って、“FROZEN FUNK“になりました。プリンスの“Holly Rock“とかの「ロック、ロック、ホーリーロック!」みたいなイメージで、Pファンクによくあるチャントとか、スガくんはよく解ってる上に言葉やリズムなど発想そのものがまず天才的ですから。

―― 曲はまさにプリンスやザ・タイムぽくて、そこに少しEW&Fの雰囲気が加わったというか。

沼澤:そう。本当に好きなものをやってるだけで。

今、こういうのをやると売れるんじゃないの?とかもなくて、自分たちがそういう(現代最前線の)シーンにいるわけでもないし。20~30代の頃はバンドで売れないかなとか思ってやってたけど、もう還暦だし、ここまでくれば出来ることと出来ないことぐらいわかるよね、という。だから好きなものが出ちゃうというだけで(笑)。自分としてはプリンスの“Controversy“のクラップを入れたいなっていうのがあって、あの感じですね。ソーラー・レーベルのリオン・シルヴァーズIIIがやってたダイナスティとか、あとリック・ジェイムズとかキャメオ。キャメオなんてアルバム全曲にクラップが入ってましたから。(自分が刺激を受けた)80年代ってそんなのばかりでしたから。

―― ちなみにアートワークのフォントはパーラメントを意識したのですか?

沼澤:まさにパーラメントのロゴを並べただけで、ジャケットが黒地なのでわかりづらいですけど、白地だとパーラメントふうのフォントだってわかりますよ。これは日本盤として出すので自分の意見を押し通しました。メンバーもいろいろと案を出して来たんだけど、ダサいのをいっぱい出してきて(笑)。これだけは自分でやらせてくれって。

―― それにしてもインストの曲にタイトルをつけるのは難しそうです。

沼澤:“FROZEN FUNK“以外は(タイトルに)何の意味もないです。1曲目の“A.N.A.“なんか、カールが日本に行く飛行機を乗り間違えて1日遅れて来たんですが、その時乗り遅れた飛行機が全日空だったから“A.N.A.“(笑)。あの時カールは1日遅れて空港について、そのままリハに入った。

―― “A.N.A.”は、そのカールのラテン・パーカッションやエディのサックスが活躍しますが、最後の“N.B.T.F.”も粘着度の高いファンクで、ここらへんはライヴでもお馴染みだった曲ですよね?

沼澤:オリジナル曲として最初にやり始めたのが“A.N.A.“と“N.B.T.F.“ですね。2000年頃。“N.B.T.F.“はライヴでエディが「Nothing But The Funk!」って言ったので、もうそれでいいんじゃないって。この2曲はライヴでやり始めた曲ですね。

―― さっき神戸のライヴハウス《Chicken George》のお話がありましたけど、5曲目が“CHICKEN GEORGE”。疾走感のあるアップテンポのファンクで、カールのコンガやティンバレスを中心にしたグルーヴを耳にすると、改めてNBTFはシーラ・Eのバンドでやってた人たちの集まりだなと感じました。

沼澤:パーカッションはチャチャをやってるけど、僕はEW&Fがラテンをやってる時のフレディ・ホワイト(のドラム)をイメージしたんです。でも、曲がそんな感じなので、全然そんな(EW&F)ふうにならなかったですが。タイトルはライヴハウスのために何か曲を作ろうというのではなく、タイトルどうすんの?ってなった時に、そういえばNBTFで最初にやったライヴハウスって《Chicken George》だっけ?ということで、そうなっただけです。

特に意味はない(笑)。

―― “BLACK PYRAMID”はウォーにも通じる重厚感のあるスロウ~ミディアム・ファンクで、後半になると今っぽいハードなグルーヴになっていく感じですが、アルバムの中でも“THIS FUNK GONE MAKE U M”はフュージョンぽいミディアムで、ファンク・バンドのアルバムに1曲だけあるムーディなスロウ・バラードを思い出しました。

沼澤:オハイオ・プレイヤーズの“Sweet Sticky Thing“みたいな感じのですよね。でも、これも全く何にも考えてなくて、一曲メロウなやつを入れとこうとかではないです。ゆっくりめなファンクというか、JBの“Licking Stick - Licking Stick“や“Pay Back”みたいな、テンポが遅めな

曲あるじゃないですか。ただ、それをJBみたいな感じでやりたいよねってなると、それもアレなんで、自分はドラムのチューニングを低くしてやっただけで、それを送ったら、そこに歌が入ってて。タイトルにある「M」は「Moan」のことで、直訳だと「喪に服す」になるけど、「ちょっと何かやられちゃうんじゃない」とか「このファンクはいけてるでしょ」、「君をグッとこさせる」みたいな感じですね。

―― 亡くなったスティーヴのフレッド・ウェズリーを思わせるトロンボーンも印象的です。

沼澤:スティーヴは、彼がテキサスからロサンゼルスにやって来た時から知り合いだったんですよ。90年代に彼が(アル・マッケイの)L.A.オールスターズに入った時、テキサスからすげえトロンボーンのやつ来たらしいよ、みたいな感じですぐに噂になって。スティーヴはちゃんと(音楽)学校を出てるから、オーケストラの中に入ったり、ビッグ・バンドもジャズもできるし、とにかく何でもできる人で、亡くなる時までバリー・マニロウのラスベガスのレジデンシー公演に参加していた。だから、亡くなった時はバニーがすごくトリビュートしてましたね。

僕らはとにかく(アルバムとして)形にしなきゃっていう気持ちになったし、彼のためにやんなきゃってなったんですね。彼が亡くならなければスガくんに曲を頼むこともなかった。

―― それだけ固い絆で結ばれていたというか、居心地のいい仲間だったんですね。

沼澤:自分が20代の時からの仲間だから。みんなそれぞれの仕事をやってて、家族もいるけど、自然にみんなが連絡取って、「ドジャーズ(の試合)見た?」みたいな会話になるような仲です。NBTFは(ライヴに)お客さんが入る入らないに関わらずまたツアーやれたら、とみんなが思ってます。

冒頭でも触れたとおり、インタヴューは沼澤さんと交流のあったジェイムズ・ギャドスンが他界する5日前に行われた。当日は楽しく貴重な脱線話も含めて本文の5倍近くに及ぶトークで盛り上がったのだが、最後にギャドスンについてお話しいただいた部分を抜粋して締めくくりたい。

沼澤:これだけ早く流行が移り変わっていく中で(ジェイムズ・)ギャドスンはいまだに現役でセッションに呼ばれている。でも、やってることは何も変わってないんですよね。ディアンジェロの『Black Messiah』、ベックやジョン・バティステともやったし、マリリン・マックー&ビリー・デイヴィスJr.の最新作にも参加していたけど、(比較的最近の)こういうのを聴いても、やってることが昔と何も変わらないっていう。あの人が60年代からやっていたことと、今80歳過ぎてやってることが何も変わってなくて、でも絶対に古く聞こえないのが凄い、というか恐ろしい。

歴史を築いた人って、流行り廃りに左右されないんですよね。だけど、ギャドスンって最新の音楽もすごく聴いていて、めっちゃ詳しい。当時80年代に初めて会った直後も、「今ニュー・ジャック・スウィングだとこうだけど、ゴーゴーはこうだよね」とか、普通にそういうことを言う人で。影響も受けるんだけど、でも、本人は何も変わってないっていう。自分の場合は、もう亜流の亜流で、ああいう人たちのこれがいいとかただ自分なりにコピーしながらなんとかやっていて、自分で何かを生み出したりなんて一切できないことをわかってやってますけどね……。文化背景とか、食べてるものから住んでるところまで、それがないと(いくら真似しても)彼らのようにならないのはわかっているので。

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NOTHING BUT THE FUNK: Nothing But The Funk

ナッシング・バット・ザ・ファンク/ナッシング・バット・ザ・ファンク
P-VINE PCD-22449 定価¥2,420(税抜¥2,200)

TRACKLIST
1. ANA
2. FROZEN FUNK featuring SHIKAO SUGA
3. THIS FUNK GONE MAKE U M
4. BLACK PYRAMID
5. CHICKEN GEORGE
6. N.B.T.F.

投稿 【SPECIAL INTERVIEW】 NOTHING BUT THE FUNK 沼澤尚 インタヴュー Part.2ブルース&ソウル・レコーズ に最初に表示されました。

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