TikTokがマイクロソフトへの売却を拒否

中国企業バイトダンスが提供するサービスTikTokの米国事業部門の売却先として有力候補だったマイクロソフトではなくオラクルが選ばれたと報道された。しかし、この売却成立には米中両国政府による承認が必要となっており、対立を深める両国の承認を取り付けることができるのかについて不透明感が高まっている。


米マイクロソフトは、現地時間の9月13日、TikTokの米国事業の買収に関して、中国バイトダンスから買収提案を拒否する連絡があったと発表した。

TikTokは15秒から1分程度の短い動画をスマートフォンで作成し、気軽に共有できるサービスで米国では1億人の利用者がいるものの、トランプ政権は個人情報の中国政府への流出を懸念し、バイトダンスにTikTok米国事業の売却を迫っている。


マイクロソフトに代わりTikTokの買収相手として選択されたのがソフトウエア大手のオラクルだ。オラクルの主力事業は企業向けソフトであるが、ITインフラの領域でTikTokとの相乗効果を生み出し、ビックデータをAIで解析することで顧客企業の営業やマーケテイングの支援を行うものとみられている。


TikTokの売却は実現可能なのか?

オラクルによるTIkTok買収が報道されているものの、その実現可能性については不透明さが残る。TikTokの売却には米中両政府による介入が行われており、両国の承認を得ることが最終的な売却成立の条件となる。


オラクルへのTikTok売却が報道されているものの、その売却には米中両国の承認が必要だ。トランプ大統領はTikTokの買い手の条件として「大企業で、安全な企業、米国らしい企業」を挙げており、売却先に米国の承認が必要となっている。

一方、中国政府も対抗措置として8月28日に「中国が輸出を禁止または制限する技術リスト」の改訂版を公表した。この改訂版によって追加された項目にTikTokに用いられている技術が含まれたため、バイトダンスがTikTokの海外企業への売却には中国政府の同意が必要となっている。


TikTokによる中国政府への個人情報の流出とそれによる「安全保障上のリスク」を警戒するアメリカ政府。米国の圧力に負ける形でTikTokの売却に応じることは中国の威信が揺らぐとして売却に反対する意向の中国政府。この米中両政府に受け入れられる取引をバイトダンスが見つけ出すことができるのか、交渉の不透明感が高まっている。


なぜアメリカはTikTokにこだわるのか

数ある中国系サービスの中でもTikTokを名指しで批判し、大統領令まで発令しているアメリカ政府。アメリカ政府がここまでTikTokにこだわる背景には安全保障のリスクへの懸念と中国市場からの米系ITサービスの締め出しへの報復との見解もある。


アメリカ国内でのユーザー数が1億人をこえるTikTok。TikTokの運営会社であるバイトダンスの本社が中国にあることから、この1億人以上の個人情報に対して中国政府が開示を強制する可能性がある。アメリカは2016年の大統領選挙でロシアがSNSを通じて介入したように、この情報を中国政府が利用し、米国国内の経済や国民の生活への影響力を高めていくことを懸念している。


一方で中国政府はインターネット上での監視を強めている。中国政府にとって不都合な情報を排除することができない中国国外のインターネットサービスを中国政府はこれまで数多く禁止してきた。その中には、GoogleやFacebook、Twitterが含まれており、こうしたアメリカのITサービス排除に対する報復を行っているとの見方もある。


買収交渉期限は9月15日

トランプ大統領が交渉期限として設定したのは9月15日。米中両政府の対立が深まる中で、バイトダンスとオラクルが米中両政府や両企業の投資家を納得させる買収条件を見出すことができるのか。中国政府によるTikTok買収への介入によって不透明感は一層高まっている。