■増當竜也連載「ニューシネマ・アナリティクス」SHORT

コロナ禍でさまざまなものに対して過敏になりがちな昨今、かなりタイムリーな映画のように思えます。

三秋縋の「恋する寄生虫」を原案にしたもので、主人公は潔癖症の無職青年・賢吾(林遣都)と視線恐怖症の不登校少女ひじり(小松菜奈)のふたり。

〈新作紹介〉『恋する寄生虫』林遣都&小松菜奈が寄生虫によって惹かれ合う、現代ならではのラブストーリー


ともに過敏すぎて悪しき妄想を見てしまったりするあたり、多少なりともその気がある方なら理解できるところもあるのではないでしょうか。

またそのあたりの描写は時にグロテスクに映えたりもして、良くも悪くもインパクトを見る側にもたらします。

〈新作紹介〉『恋する寄生虫』林遣都&小松菜奈が寄生虫によって惹かれ合う、現代ならではのラブストーリー


もっとも全体的には流麗な映像美が巧みに貫かれており、映画ならではの情感がじわじわと醸し出されていくのを体感できるのは心地よくもあります。

シンメトリ的な構図が印象的に映えるシネスコ画面の中でゆったりとした揺らぎのあるキャメラ・ワークなど、自然体の中から幻惑的な色彩を施していく柿本ケンサク監督の映像センスは的確で、次第に映画の世界観の中へ自然と没入させることができます。

〈新作紹介〉『恋する寄生虫』林遣都&小松菜奈が寄生虫によって惹かれ合う、現代ならではのラブストーリー


症状の恐怖ゆえ生きることに臆病になって久しいふたりではありますが、お互いが会っている分には少しだけ普通になれるようで、かくして素手で何も触れない男と目も合わせられない女の恋が芽生えていきます。

それは人の頭の中に棲み着いては恋へ導く寄生虫がもたらしたものなのか?

映画は井浦新という存在感ある芸達者をフックにしながらミステリアスな方向へ徐々にシフトしていきますので、この後の展開はじかにご覧になっていただけたら幸いではありますが、いずれにしましてもユニークな発想の中から現代を生きる若者たちの孤独や焦燥感が見事に抽出された作品です。

〈新作紹介〉『恋する寄生虫』林遣都&小松菜奈が寄生虫によって惹かれ合う、現代ならではのラブストーリー


林遣都&小松菜奈、ともに期待以上の好演であることも特筆しておかねばならない事象で、孤独と付き合い続けてきたがゆえのか細さや、それでも前を向いていこうとする真摯さは、多くの観客の共感を得ることでしょう。

(文:増當竜也)

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『恋する寄生虫』作品情報

【あらすじ】
極度の潔癖症で、人と関わることができない青年・高坂賢吾(林遣都)はある日、見知らぬ男から奇妙な依頼を受ける。それは、“視線恐怖症で不登校の高校生・佐薙ひじり(小松菜奈)と友だちになって面倒をみてほしい”というものだった。露悪的な態度を取る佐薙に辟易する高坂だったが、それが自分の弱さを隠すためだと気付き、共感を抱くようになる。世界の終わりを願っていたはずの孤独な2人はやがて惹かれ合い、恋に落ちていくが……。 

【予告編】


【基本情報】
出演:林遣都/小松菜奈/井浦新/石橋凌 ほか

原案:三秋縋

監督:柿本ケンサク

脚本:山室有紀子

製作国:日本