国産車初の300km/hオーバーがHKS・M300によって記録されたこの日、谷田部・高速試験路には、RE雨宮RX-7とTRUSTセリカXX×2台が、同じく初300km/hオーバーを狙っていました。結果、日本車初300km/hオーバーの栄誉はHKSが手にしましたが、3台の挑戦マシンたちも気になるトコロ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
RE雨宮ツインターボRX-7
293.87km/h
12A・RE、いま一歩の熟成に期待!
純正REターボが発売されたおかげでロータリーの記録もまた、一段と期待できるようになった。というのもターボ用12Aは従来の13Bよりもハウジング剛性・強度があがったため、クラックの心配が大幅に減ったからだ。また、ローコンプ仕様となっているため、高いチャージ圧を与えることも可能となったのだ。
REでは無敵を誇るRE雨宮。今回のテストには例外なく純正ターボ用のエンジンが使用されている。これにKKK製K26型ターボチャージャーが2基装着され350ps+αのパワーが得られている。
ミッションには苦労がある。
外観はすべてオリジナル製作品。「ストリート走行できるもの」という雨さんのポリシー通り、最高速仕様のスペシャルな空力パーツは備えていない。といって安定性を欠くのかといえば、そんなことは全くなく、300km/hの壁をブチ破るのに十分なボディということだ。これだけノーマルに近いボディでありながら293km/hをマークしているのはさすがRE雨宮。レコードメーカー最右翼の1台であることに間違いはない。
トラスト セリカXXツインターボ
256.68km/h
無念のフューエルトラブル!
HKSセリカと同じ5M-GEUを使ってトライしたトラストXX。
使用されるユニットは5M-GEU+ツインターボ。HKSとは違いインジェクション装着車である。ノーマルから大きく変更されているのはピストン。ボアに変更はないがアリアス製アルミ鍛造でローコンプ仕様。
今回のテストが不発に終わった原因のひとつに、この燃料増量が上手くいかなかったことが挙げられる。「6000rpm付近で正確な燃焼が行われなくなり、燃料が不足している印象を受けた」とはドライバーのインプレッション。原因はインテークチャンバーの圧力スイッチが作動しなかったことがあった、ということが後で判明しているのだが・・・。
このマシンで面白いのは、駆動系のチューニングでデフにニッサンのR200型を使用していることだろう。このデフによってファイナルギヤ比は3.15とハイギヤード。トランスミッションはノーマルで5速0.783というセッティングだ。これにグッドイヤーNCT235/60VR15(ハイト650mm)の大型タイヤを履いている。
外装はスープラ仕様とオリジナル製作が入り混じったスペシャルで、特にフロントスポイラーに工夫がいられる。例えばスポイラー下部にリップを設けるが、それをさらに後方へ延長し、フロントタイヤ前部までの整流版を兼ねるように作られているのだ。また、サイド、リヤスポイラーはグラスファイバーで製作され、高速安定性を狙っている。実際、バンク内でも安定した走りを示し、路面に吸い付く印象すら受けたということだ。
ただ、サスペンションが少し硬すぎたようだ。前後ともトラスト製のコイルスプリングでダンパーはフロントがオイルでリヤが調整式のガス。一番硬いセッティングにしたのだが、ドライバーによればバンク内で少し跳ねるためほんの少し柔らかくしたほうがいいのでは?ということだ。今回はエンジン自体のメカニカルトラブルに見舞われたが、実力のあるマシンだけに次回が楽しみだ。
トラストセリカXXトリプルターボ
227.80km/h
興味が尽きないチューニングトライアル車
もう1台、トラストからエントリーしているのが、XXトリプルターボ。製作は大阪のターボセンター・メカニカル。ベースに使用しているマシンは1G-GEU。これまでにない新しいエンジンだ。さらにターボを3基備えているところも興味深い。
なお、このマシンはいわゆる極限最高速トライアル車ではなく、トリプルターボの試作第1ステージという感じだ。それでもエンジンは2mmオーバーサイズのアルミ鍛造ピストンが使用されており、77mm×75mmの2094cc。コンプレッションも7.6と低い。これにIHI製52A型ターボチャージャーがつく。チャージ圧は1.1kg/cm2だ。
結合方法はオリジナル製作したタコ足によって1番と6番、2番と5番、3番と4番のそれぞれにターボがついている。トリプルとすることで低中速域のパワーはツイン以上に出るが、3基をバランスさせることは非常に難しい。だが、今回のテストではバランスの問題はなかったようだ。燃料増量システムはメカニカルがオリジナルで製作したフューエルコンピューターが使われている。
アイディアなのはインジェクター。これは3T-G用のノズルが使われているのだ。このように、このマシンはユニークなアイディアが満載され、熟成されていく姿は興味津々だ。
一方、走りのほうだが、1回目はトライ時に6800rpmでミスファイアを起こし、また水温、油温とも上昇気味だったためピットイン。その時、断熱材が燃え出し本格的なテストができないままになってしまった。そういった意味も含めて、次回に期待しよう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
RE雨宮号は300km/hまであとチョイ。そしてトラストの2台、特にトリプルターボの熟成に期待ですね!(機会があればPlay Back The OPTIONで紹介いたします)。それにしても、すべてが最高速スペシャルなHKS・M300に比べ、雨宮号やトラスト号は外観など、ストリート仕様レベルに近く、それでも、これだけの記録が出せるのは流石です! なんだか今現在にも通じる3社のチューニングポリシー? ン~時代は続いていますね。次回はこの記事から遡ること8ヵ月前、1983年7月号に掲載されたHKS長谷川浩之社長(当時)とDaiちゃんのフルブースト対談を紹介いたします。
【OPTION 1984年3月号より】
(Play Back The OPTION by 永光やすの)
【関連記事】
ついに出た! 国産車初の300km/hオーバーはHKSセリカXXだった! その1【OPTION 1984年3月号より】
これが国産車初の300km/hオーバーを記録したHKSセリカXXの中身だ! その2【OPTION 1984年3月号より】