同作は辺見庸氏による同名小説の実写化作。
○映画『月』、韓国での反応に驚きも
本作は映画『新聞記者』などで知られる映画会社スターサンズの故・河村光庸プロデューサーが生前「もっとも挑戦したかった題材」と情熱を傾けていた1本。石井監督が「やっぱり怖かったですよね。ただ比喩でも誇張でもなく、人類全体の問題と僕は理解したので、これは逃げられないなと思いました」とその覚悟を語ると、重度障害者施設で働く主人公・洋子を演じた宮沢も「内容的には賛否両論ある作品になるだろうなと思いましたけど、ここから逃げたくないという気持ちが強く湧いたので参加しました。
主人公・洋子の同僚で、正義感の強いさとくんを演じた磯村は「企画書をいただいて。直感的に参加しないと駄目だなという思いはあったんですけど、それだけではやれないというか。覚悟を持つまでに時間がかかりましたし、それだけのエネルギーがある作品でもあり、役柄でもあったので、そこは慎重に監督と話し合いながら決めました」と述懐。
本作は第28回釜山国際映画祭、ジソク部門(Jiseok 部門)にてワールドプレミア上映されたばかり。
最後に「今日はすごくドキドキしていて。手に汗をかいてしまいました」と切り出した宮沢が、「日々生きていく中で、見たくないもの、聞きたくないもの、触れたくないものという箱が世の中にはゴロゴロとあって。そのふたを開けるのは勇気がいることだし、すごくエネルギーがいることだけど、そのふたを開けて向き合った時に、それはけっしてポジティブなものではないかもしれないですが、そういう中から考えるきっかけ、そのことについて話し合えるきっかけになるような映画であってほしいですし、皆さんの記憶にべったりとこびりつく作品として広がってほしいなと思います」とメッセージ。
そして石井監督も「とにかく皆さんの覚悟が違うので、こんな重苦しい舞台挨拶というのは初めてですし。それは観ていただければ一目瞭然だと思います。出演者の覚悟、スタッフもひとりひとり、真摯にこの作品とテーマに向き合ってつくりあげた作品なので、熱気が違います。まったく誰も手を出してないところに踏み込んだので、新しい映画になったと自負しています。賛否いろんな意見が出てしかるべきですし、そうなってほしいんですけど、ものすごく強い、強烈な表現ができたとかみ締めております。何か感じるところがあれば、友人、知人に薦めていただけたら」と観客に呼びかけた。