「都心では物価が高いので、生活していくのが大変だ」または「地方は物価が安いので、生活費が都心に比べてあまりかからない」と世間で言われていることは、本当なのでしょうか。

お金の扱い方について、都心部と地方部では、違いがないのでしょうか。
連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京と地方、両方の生活を経験して感じたことを交えながら、お金に関する情報などをお伝えいたします。

生活費のうち、定額、もしくはほぼ定額の金額を毎月支払わなければならない費用を「固定費」と呼びます。例えば、賃貸住宅であれば家賃や共益費は、毎月定額の支払いが必要となるので、固定費となります。また、水道代、電気代、ガス代は、季節によって多少の変動はありますが、ほぼ定額の支払いが発生するので、固定費となります。今回は、その固定費の1つである「水道代」に着目してみようと思います。

複数の地域に暮らしたことがない人の中には、「水道料金の料金体系はどの地域も同じ」と勘違いしている人もいます。
電力会社やガス会社は、テレビ広告等をしているので、地域によって電気代やガス代が異なることは多くの人に認知されていますが、水道代に関しては、認知度が低いようです。

そこで、今回は、水道料金において、東京暮らしと地方暮らしを比較してみようと思います。
○仮定

仮定として、1人暮らしで、東京と地方のどちらの場合でも、毎月の使用水量は、1カ月で8㎥とします(参照:令和2年度生活用水実態調査・東京都水道局)。また、呼び径(=水道管の太さを表す)は20mmとします。

一般家庭における1カ月あたりの水道料金の一般的な計算方法は、
【1】水道料金:(基本料金+従量料金)×消費税率
【2】下水道使用料:(基本料金+従量料金)×消費税率
【1】+【2】=水道使用者が支払う金額(月額)となります。
月額支払い額×12カ月=年間支払額を算出して比較します。

○■東京都(23区)の場合

【1】水道料金
基本料金:1,170円
従量料金:1~5㎥→0円×5㎥=0円/6~8㎥→22円×3㎥=66円
(基本料金1,170円+従量料金66円)×1.10=1,359円(1円未満切捨て)

【2】下水道料金:0㎥~8㎥→560円
560円×1.10=616円
【1】+【2】=1,359円+616円=月額1,975円
1,975円×12カ月=年間23,700円

なお、武蔵野市、羽村市、昭島市、桧原村の4自治体は、独自に水道事業を行っているため、他の東京都内の自治体と料金体系が異なります。
○■北海道札幌市の場合

【1】水道料金
基本料金:1,320円
従量料金:1~10㎥→0円
(基本料金1,320円+従量料金0円)×1.10=1,452円

【2】下水道料金:10㎥まで→600円
600円×1.10=660円
【1】+【2】=1,452円+660円=月額2,112円
2,112円×12カ月=年間25,344円
○■岩手県盛岡市の場合

【1】水道料金
基本料金:1,650円(消費税込み)
従量料金:1~10㎥→66円×8㎥=528円(消費税込み)
(基本料金1,650円+従量料金528円)=2,178円

【2】下水道料金
基本料金:995円(消費税込み)
従量料金:1㎥~10㎥→45円×8㎥=360円(消費税込み)
995円+360=1,355円
【1】+【2】=2,178円+1,355円=月額3,533円
3,533円×12カ月=年間42,396円
○■神奈川県川崎市の場合

【1】水道料金
基本料金(8㎥まで):583円(消費税込み)
【2】下水道料金
基本料金(8㎥まで):726円(消費税込み)
【1】+【2】=583円+726円=月額1,309円
1,309円×12カ月=年間15,708円
○■長野県北佐久郡軽井沢町の場合

【1】水道料金
基本料金(10㎥まで):935円(消費税込み)
水道メーター使用料(20mm):154円(消費税込み)
(基本料金935円+従量料金154円)=1,089円

【2】下水道料金
基本料金(10㎥まで):1,430円(消費税込み)
【1】+【2】=1,089円+1,430円=月額2,519円
2,519円×12カ月=年間30,228円
○■沖縄県宜野湾市の場合

【1】水道料金
基本料金(8㎥まで):950円
基本料金950円×1.10=1,040円(10円未満切捨て)

【2】下水道料金:0㎥~8㎥→500円×1.10=550円
【1】+【2】=1,040円+550円=月額1,590円
1,590円×12カ月=年間19,080円
○結果

東京と、その他の5つの地域をピックアップしてみました。水道料金において、東京都と地方で比較した場合、一概にどちらが安いと断定することはできませんが、東京都より北海道・東北地域は、水道料金が比較的高めの傾向にあります。また、「東京都の水道料金が最も安い」と思い込んでいる都民の人もいますが、それは事実ではないことが、上記の水道料金の計算でわかると思います。東京都の隣県である神奈川県川崎市と比べても、神奈川県川崎市のほうが年間で約8,000円安いです。水道料金は、住んでいる地域が設定している料金体系に沿って確定するもので、消費者が料金体系を選ぶことはできません。


したがって、節約を考えているのであれば、支払う水道料金の金額ではなく、「水道使用量」に着目して、前年同月と比較し使用量がどう変化しているか確認すると、節水の意識も強くなり、水道代が減少するかもしれません。

高鷲佐織 たかわしさおり ファイナンシャル・プランナー(CFP 認定者)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/DCプランナー1級。 資格の学校TACにて、FP講師として、教材の作成・校閲、講義に従事している。過去問分析を通じて学習者が苦手とする分野での、理解しやすい教材作りを心がけて、FP技能検定3級から1級までの教材などの作成・校閲を行っている。また、並行して資産形成や年金などの個人のお金に関する相談を行っている。一般社団法人理想の住まいと資金計画支援機構 FPスタッフ。
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