ミュージカル『ベートーヴェン』の初日前会見が8日に東京・日生劇場で行われ、井上芳雄、花總まり、ミヒャエル・クンツェ、シルヴェスター・リーヴァイが取材に応じた。

同作は『エリザベート』『モーツァルト!』『レベッカ』『マリー・アントワネット』『レディ・ベス』など、日本ミュージカル界でも屈指の人気作品群を手掛けてきたミヒャエル・クンツェ(脚本/歌詞)とシルヴェスター・リーヴァイ(音楽/編曲)のゴールデンコンビの最新作。
構想10年以上の歳月を費やし、偉大な音楽家の一人であり「楽聖」とも称される、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの謎に満ちた人物像とその生涯に肉迫した野心作となる。ほか海宝直人/小野田龍之介(Wキャスト)、木下晴香、渡辺大輔、実咲凜音、吉野圭吾、佐藤隆紀(LEVELVETS)/坂元健児(Wキャスト)が出演する。
○■ミュージカル『ベートーヴェン』ミヒャエル・クンツェ&シルヴェスター・リーヴァイが語る

今回、ミヒャエル・クンツェ(脚本/歌詞)とシルヴェスター・リーヴァイ(音楽/編曲)が来日。クンツェは同作について「ベートーヴェンの人生の長い道のりというものを語ろうということではなく、彼の人生の中で出会うことになる困難の瞬間を綴っていきたくて、特に聴力を失うわけですけど、音楽家にとってこれ以上ないような災難に直面した時に、彼の人生の中での最大の愛する相手を見つけ得たというそこを語ってきた作品」と表す。

実際にベートーヴェンの音楽が使われることとなるが、選曲について聞かれたリーヴァイは「作曲した全曲を聴くことから始めました。どういう部分をセレクトして抜き出して据えたかというと、自分自身が持っている感情に基づいて決めさせていただきました」「選んだ曲にひとつひとつに固有のストーリーがあるんです。
それは皆様にお話ししてみたいんですけど、すべてお話するとすれば2~3週間はかかってしまいます」とその場を笑わせる。

クンツェは「オリジナルの曲というものを作品に入れ込んで統合していかなければいけないわけで、インスピレーションの一部として統合していかなければいけない。彼は当時世界でもっとも素晴らしいピアニストだったわけで、大成功を収めていた人です。それは演奏した時の他の方の拍手に非常に依存していたということなんです。耳が聞こえなくなったことによって、拍手そのものが聞こえなくなってしまうということから、ベートーヴェンのその後の内面というものを作品として作り上げていかなければいけないわけで、それを信ずるに足りる内容のものとして舞台に乗せなければいけない」と苦労を振り返る。「それに適した声を選び出してくれたシルベスターに感謝したいし、結果としてできた作品がクンツェ・リーヴァイの音楽になったことが大変うれしいです」と2人の絆も見せた。


さらにリーヴァイは「私たちにとって大事なのはお客様のためにミュージカルを作るということで、クラシックの音楽を身近に感じている方々がいらっしゃると思いますけど、そういう方々にはモダンな音楽に近づいていただきたいと思いますし、身近に感じてない方には身近に感じるような作品にできればと思います」と意図を説明。

これらの話を踏まえて、花總は「ベートーヴェンの曲、誰もが知ってる曲もあれば、見ることによって『こんな素敵な旋律があるんだ』とか、たくさんいろんな発見があると思うんです。それも観に来ていただける方のひとつの楽しみとしてお届けすることができたらいいなと思っています。あのベートーヴェンの曲をリーヴァイさんがこんなふうにアレンジされて、私たちが歌うことができるというところも楽しんで観ていただけたらいいなと思います」と見どころを語る。

井上は「お二人が来日してくださったことが嬉しいですし、僕は初舞台が『エリザベート』なので、2人から生まれたと言っても過言ではないくらい。花ちゃんもオリジナルキャストですし、2人がきてくださって新しいベートーヴェンが日本で生まれることが嬉しい」と喜ぶ。
リーヴァイの説明を受け、「『モーツァルト!』はリーヴァイさんのオリジナルのメロディのモーツァルトだったのに、なぜ『ベートーヴェン』になった時にベートーヴェンのメロディを使おうと思ったのか、不思議だなと思ってたんですけど、クラシックとミュージカルの融合というか、どちらのファンの方にも楽しんでもらえるようにしたいと、お二人は今なお進化されて、新しいチャンレンジされてる中でこの作品が生まれたのかなと思います」と感心する。

さらに「ウィーンのお二人と、去年初演した韓国のチームと、僕たち日本のチームで、3カ国いろんな言葉が飛びあう国際的な稽古場ですし、だからこそ豊かなものが作れているのではないかなと思います」と稽古場の様子も。「あと、やたら豪華なんですよ。『ムーラン・ルージュ』とか、『チャリチョコ』(『チャーリーとチョコレート工場』)にも負けないんじゃないかなと。『東宝、今年大丈夫かな』と心配になるくらい美術費がかかってます」とまさかの心配。「日本で12月といえば、ベートーヴェン。
なぜかわからないけど『第九』を必ず聴くのが日本のクラシックの習慣でもありますし、12月にふさわしい作品だと思います」と言いつつ、「年明けもやりますけど、それはそれで華やかでふさわしいと思います」とアピールした。

東京公演は日生劇場にて12月9日~29日、福岡公演は福岡サンパレスにて2024年1月4日~7日、愛知公演は御園座にて1月12日~14日、兵庫公演は兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホールにて1月19日~21日。