カナダ ・アメリカ発のドラマ『ワイルドカード~捜査バディは天才詐欺師!?~』(全10話 二カ国語版 毎週水曜23:00~※字幕版は毎週木曜22:00~ WOWOWプライム/WOWOWオンデマンド)が、8月21日よりWOWOWにて放送・配信スタートする。同ドラマは、本国カナダでの各話初回放送の平均視聴者数が50万人を超え、最初の7日間で100万人以上も視聴するヒットを記録し、シーズン2の制作も決まった注目作。
頭の回転が速く、口八丁手八丁で相手を騙す天才詐欺師の女性マックス(V・モーガン)。彼女はある事件で逮捕され、海上部隊に左遷された元刑事のエリス(G・ジャンニオッティ)と出会う。犯罪を知り尽くしたマックスの能力に目を付けた警視総監は、更生プログラムの一環で彼女を犯罪コンサルタントとしてエリスのパートナーに起用する。マックスとエリスのキャラクターが魅力的で、正反対な2人の軽妙なやりとりが笑いを誘う痛快の刑事ドラマとなっている。マックスとエリスの吹替えを担当した早見沙織と木島隆一に、本作の見どころについて語り合ってもらった。
―——本作での共演を知った際の印象は?
早見:今回のように会話劇が物語の中心となる場合は、どのような方とどのように掛け合うかでお芝居の方向性もまったく変わってくるので、ドキドキしながらキャスト表を見ました。そうしたら木島さんのお名前が真っ先に目に入って、「これはもう間違いない!」と。
木島:正直、僕は最初マックスから早見さんの声がするのが想像できなかったところもあって……。でもいざ現場で早見さんがマックスとして話し始めたら、「うわ、すごい! 早見さんってこんなに大胆なお芝居をする人だったんだ!」と驚いて、感動しました。
早見:木島さんとはアニメ『BORUTO-ボルト-』でも一緒にアフレコしてはいたのですが、二人で掛け合うシーンというのは実はそれほど経験がなくて。それに比べて今回は、マイクも隣同士な上に、ず~っと立ちっぱなしで、ひたすら掛け合っています(笑)。こんなにたっぷりと掛け合いができるというのも、とても嬉しかったですね。
――木島さんは、『グレイズ・アナトミー』でも長年吹替えを担当されてきた、ジャコモ・ジャンニオッティさん演じるエリス役ですが、今回の配役についてはどう感じましたか?
木島:ジャンニオッティさんの声を担当させていただけること自体はとても嬉しいのですが、同じ俳優が演じているとはいえ、脚本が違えばキャラクターもまったく違うわけで。吹き替えのアプローチの仕方も当然変わってくるであろう……と思って収録に臨んだものの、なにせジャンニオッティさんとは(アンドリュー・デルーカ役で)6年ぐらい一緒にいたもので……(笑)、もはや身体に染みついてしまっているところがあるんですよね。最終的にはいいところに落ち着いたのではないかと僕自身も思ってはいるのですが、本作のエリス役のニュアンスを掴むまで、1話の収録時はかなりテイクを重ねてしまいました。
――"染みついてしまった"
木島:それこそ『グレイズ・アナトミー』のデルーカは散々恋愛をしてきたので、僕のなかでの"ジャニオッティさん像"は、"甘いセリフを吐く男"のイメージだったんです(笑)。でも、いまのところエリスにはそのような面は見当たらず、結構ドライなんですよね。とはいえ、ジャンニオッティさん自身はとてもやさしくソフトな雰囲気で、いかにも"いい男風"のしゃべり方をされる人なので、そのニュアンスは活かしたいなとは思いつつも、毎話エリスとマックスが繰り広げる"ボケとツッコみ"の"ツッコみパート"はなるべく激しめにいきたくて(笑)。その辺りの匙加減を探るのが今回はなかなか難しかったんですよね。
――なるほど。早見さんがマックスの吹替えをされる上でご苦労された点はありますか?
早見:掛け合いのテンポが早いところは、ものすごく速い テニスのラリーを至近距離でやっているような感覚と言いますか。まさに木島さんの声を"聞いて出る"、"聞いて出る"となるので、台本を目で追っている余裕がないんです。それに、マックスを演じているV・モーガンさんは、捜査のために別人になりすますにあたり、イギリス英語で上流階級っぽい雰囲気にしたり、語尾を伸ばしてベタっとした雰囲気の南部なまりのキャラにしたり……と英語のアクセントを使い分けていらっしゃるのですが、日本語に翻訳すると基本的はすべて同じになってしまうんですよね。だからといっていきなり関西弁にするわけにもいかず(笑)、せいぜい巻き舌を入れてみたりするくらいで。
登場人物のキャラの濃さがピカイチ
――お二人が演じるマックス・ミッチェルとコール・エリスは、「変幻自在でキュートな天才詐欺師と左遷された元刑事」という役どころですが、お互いの役に対する印象は?
早見:木島さん演じるエリスは、何事にもまっすぐ真摯に向き合う誠実な人なのですが、アツいがゆえに、空回りしてしまうというか……周りから浮いてしまうような不器用さも持ち合わせているんですよね。ですが、天真爛漫なマックスの影響もあってか、ストーリーが進むごとにだんだんとノリがよくなってきているのを感じています(笑)。
木島:そうそう! いきなりビーチを走っていって、サーフィンをし出す場面とかね。
早見:そうなんですよ! てっきり堅物キャラなのかと思いきや、意外と遊び心もある人なのかもしれないなと(笑)。
木島:ジャンニオッティさん自身もたしか音楽をやられたりもしていて、遊び心に長けている人のような気がするので。そういった面を、マックスが徐々に引き出してくれているのかもしれないですね。
――エリスから見たマックスはどんな人物ですか?
木島:エリスにしてみれば、最初は、とんでもない貧乏くじを引いてしまったというか。「なんでこの俺が、こんな詐欺師の女とバディを組まなきゃいけないんだ!」というところからスタートするんです。第一印象は、もはや"最悪"と言ってしまっても差し支えがないくらいのものだったと思うのですが、でもだからこそ、これ以上マックスに対する評価は下がりようがないというか(苦笑)。「あとは上がるだけ」みたいなところもあったりして。
――確かに(笑)。
木島:そもそもエリスはお父さんも刑事で、警察官になるべくしてなったような人なので、マックスに対して「そうは言っても、こいつは犯罪者だしな」って身構える瞬間が、芝居の端々にもあったりするんです。でも、マックスはいつもそこを超えてくるんですよ。マックスいわく、彼女は"カナダ版ねずみ小僧"というか。悪いところからしかお金を引っ張ってこない"義賊"的なところがあるらしく、自分のファミリーに対してものすごくプライドを持っている。とはいえ、現に彼女の父親ジョージも収監されていて服役中ですし……(笑)。
――刑務所の中にいるのに、マックスのお父さんは"頼りになるアドバイザー"みたいな立ち位置なんですよね。
木島:そうそう! 海外のドラマや映画にでてくる刑務所って、なんであんなに自由がきくのか不思議ですよね(笑)。エリスとしては、特殊な環境下でマックスがどんな育ち方をしてきたのか、その辺りも気になってるみたいですが……きっとそれぞれの心の内にはお互いに簡単には明かせない思惑があるのでしょう。今のところ、「マックスはエリスに本性を見せていないように見えるけど、もしかしたら"見せていない"わけじゃなくて、そういう風にしか振る舞えないところも含めて、全部マックスなんじゃないかな……」なんてことを思いながら、僕は二人を見守っている感じですね。
――エリスはなぜ猫のマークと一緒にボート暮らしをしているのか。その切ない理由も、物語が進むにつれて明らかになります。
早見:そうですね。マックスは、あくまでも"自分は自分"と割り切っていて、あまり他人のプライベートには踏み込まない性格なのかと思っていたら、実はすごく思いやりに溢れている人で、「バディを組むからにはしっかりと相手のことを知っておきたい」と、エリスのパーソナルな部分にも興味を示して、彼女なりに力になろうとしていくんですよね。
木島:各話のラストはボートの上でエリスとマックスが2人きりで話すシーンで終わることが多いのですが、「今回もいろいろあったけど、まぁもう全部水に流そうぜ」「次の事件に向けてまた頑張ろう」みたいに、とてもさっぱりしていてすごく雰囲気がいいんですよ。あのシーンは、この作品ならではの良さが感じられる場面じゃないかと思いますね。
――個性的なキャラクターがたくさん登場しますが、特にお二人が注目している人物は?
早見:私は、エリスの上司のリー課長(滝知史)が気になります。エリスの過去についてマックスがリー課長に探りを入れるシーンもあるのんですが、きっといろいろな考えがあってこその"あの動き"なんだろうなというのがセリフの端々から伝わってきて……
木島:僕が気になるのは、新納慎也さんが吹替えを担当されている謎の執事のリッキー。あとは、同じ署内にちょっといじわるな同僚コンビがいるんですが、彼らは彼らなりに刑事としてのプライドがあって仕事に臨んでいて、なんだかんだ言いながら協力してくれるんですよね。彼らに注目して観るのも面白いんじゃないかと思いますね。
――では、改めて本作の見どころを!
早見:とにかく物語のテンポ感がいいですし、登場人物のキャラの濃さもピカイチです。1話ごとの長さもしっかりとあり、とても見ごたえのあるドラマなのですが、見始めたら一瞬で終わってしまうので、どんどん続きが観たくなるのではないかと思います。日本語だからこそ、スムーズにスッと入ってくる吹替え版ならではの面白さもあると思うので、ぜひ最後まで楽しんでご覧いただけると嬉しいです。
木島:僕はカナダ制作の作品の吹替えを担当するのは初めてだったのですが、「カナダの人たちってみんなこんなに陽気なんだ!」と、ちょっとカナダに行ってみたくなりました(笑)。