俳優の西島秀俊が主演を務める映画『存在のすべてを』(瀬々敬久監督)が、2027年に公開されることが20日、明らかになった。

西島秀俊と瀬々敬久監督が1998年の『冷血の罠』以来にタッグを組む本作。
原作は塩田武士氏による同名小説で、2023年度「本の雑誌」ベスト10第1位、2024年本屋大賞ノミネート、第9回渡辺淳一文学賞受賞など、多方面から高い評価を得ている話題作だ。物語は1991年に起きた「二児同時誘拐事件」を軸に展開。ひとりの子どもは無事保護されるが、もうひとりは行方不明のまま3年が経過。そしてある日突然、その子が祖父母宅に現れる。しかし、空白の3年間については口を開こうとしない。やがて事件から30年が過ぎ、ひとりの新聞記者が旧知の刑事の死を機に事件の真相へと迫っていく。記者の執念が導く先には、想像を超えた「真実」が待ち受けている。

主演の西島は、警察担当記者の門田次郎役。『ドライブ・マイ・カー』で世界から称賛を浴びた彼が、再び人間の内面に鋭く迫るドラマに挑む。脚本を読んだ西島は、「二児同時誘拐事件をめぐるサスペンスと、登場人物たちの内面を描く人間ドラマに深く感動した」と語り、「観客の皆さんに心から楽しんでいただける作品を届けたい」と真摯な姿勢を見せた。

メガホンを取るのは、『64-ロクヨン-』や『護られなかった者たちへ』など、社会派ミステリーに定評のある瀬々敬久監督。人間の内面や時代背景に鋭く切り込む手腕には定評があり、本作でもその手並みに期待が高まっている。
瀬々は本作について「すこぶる難儀であり、大いなる挑戦になる仕事だと思っています」と述べ、「タイトルの重みに応える作品をつくりたい」と意欲を見せている。西島とは、1998年の『冷血の罠』以来、27年ぶりのタッグとなる瀬々監督。「西島さんの内に秘めた強さと爆発力に再び触れるのが楽しみ」と再共演への胸の高鳴りを明かし、西島も「時代や土地の空気、人間の業を描き出す監督の世界に、再び身を投じられるのは光栄」と喜びを語っている。

製作は、東映とテレビ朝日が共同で手がける大型プロジェクトとなる。撮影は2025年8月下旬にクランクインを予定している。

■西島秀俊 コメント

脚本を読み、二児同時誘拐事件をめぐる手に汗を握るサスペンスと重厚な人間ドラマに感動しました。瀬々監督と本格的に映画でご一緒するのは1998年の「冷血の罠」以来になります。時代の空気や土地から匂い立つ気配、そして人間の業を深く描かれてきた監督と27年ぶりにご一緒できるのは本当に楽しみです。観客の皆さんに心から楽しんでいただける作品になるよう、心を込めて演じたいと思います。

■瀬々敬久監督 コメント

『存在のすべてを』は原作の塩田武士さんが、まさに足で稼いだと言っていい小説です。現実の場所に足を運び、そこの空気を直に感じて書き上げられた小説。想像の産物でありながら現実を超えるようなリアリティはそこから来ている気がします。
この小説を映画化する。すこぶる難儀であり、大いなる挑戦になる仕事だと思っています。そして主演の西島秀俊さんとは約30年ぶりの映画作り。西島さんの一見柔らかでいながら一気に炸裂する精神に再び出会えることにワクワクしながらも、この間の30年が自分たちや世界にとってなんであったのか、何を失ったのか。まるで小説の主人公たちが30年前の事件に再び接していく様の写し絵のように今、感じています。『存在のすべてを』、このタイトルの重さに恥じない映画を、送り届けたいと思っています。

【編集部MEMO】

塩田武士は、1979年4月21日生まれ。46歳。兵庫県出身。新聞記者としての経験を活かし、緻密な取材と人間描写に定評のある小説家。2016年『罪の声』で第7回山田風太郎賞を受賞、同作は2020年に映画化され大きな話題を呼んだ。『騙し絵の牙』や『踊りつかれて』など、社会の闇と人間の業を描く重厚なミステリー作品を次々と発表。
2024年には『存在のすべてを』が本屋大賞ノミネート、第9回渡辺淳一文学賞を受賞した。物語の奥行きと感情の機微を巧みに描く筆致で、幅広い世代の読者を魅了している。
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