新NISAによって投資を始めた人は多いと思いますが、まだやってないという人もかなりの数いるのではないでしょうか。投資を始めるのは早ければ早いほどいい、若ければ若いほどいい、という話もありますが、何もしないまま中年を迎えてしまった人はもう手遅れなのでしょうか。
早く始めた方が有利な理由
投資の成功法則として、「長期投資、積立投資、分散投資」があります。これはリスクを抑えながら安定的に資産を増やす確率を高められるため、資産運用の王道とされています。
このうちの、「積立投資」、「分散投資」は、投資商品の買い方や選び方になるので、すぐに実行できますが、「長期投資」は「時間をいかに長くかけられるか」なので、始める年齢が遅いともう手遅れと感じてしまうかもしれません。
長期投資が有利な理由は、主に二つあります。
一つ目は、株式などは短期的には大きく値動きしますが、長期的には経済成長に沿って右肩上がりになる傾向があること。二つ目は、複利効果が働くことです。利益が再投資されることで「利益が利益を生む」状態になり、時間が経つほど成長スピードが加速します。
これが「投資を始めるなら若いうちに」と言われるゆえんです。
始める年齢でどのくらい違うかシミュレーション
始める年齢によって、最終積立額にどのくらい差が出るのかシミュレーションしてみましょう。
<前提条件>
毎月3万円ずつ積み立て
65歳まで積み立てる
年利3%で試算
25歳から40年間積み立てると、最終積立額は2,778万円になります。老後資金として充分と言える金額ではないでしょうか。
グラフで増え方を見てみると、積立元本は、毎月同じ金額を追加していくため、直線的に上昇していますが、運用益部分は、値上がり益や分配金を再投資することで、後半ほどカーブが急になっていることがわかります。長期投資の重要性が見て取れると思います。
新NISAならいつから始めても手遅れにはならない
早く始めた方が有利にはなりますが、40歳、50歳だから手遅れということはありません。
遅く始めた場合は、毎月の積立金額を増やすことで目標金額を達成できます。65歳までに2,000万円を作りたいなら、40歳から毎月4万5,000円を積み立てる、50歳からなら、毎月8万8,000円を積み立てれば達成できる可能性があります。(年利3%の場合)
○65歳までに2,000万円作るための毎月の積立額
遅く始めるほど、毎月の積立額が多くなるのがデメリットですが、「2,000万円は難しくても1,000万円なら…」と目標を現実的な金額に設定すれば、達成しやすくなるでしょう。
新NISAは、投資元本1,800万円まで非課税で運用できるので、55歳から始めて月15万円の積立でも非課税枠に収まります。さらに、新NISAには期限がないので、積立をストップして、老後は運用だけするという活用もできます。そしてこの点が遅く始めてもメリットがあると言える部分になります。
運用を続けながら取り崩すと資産寿命が延びる
65歳になって年金生活に入ると、積立が難しくなるばかりか、年金が足りない場合には、NISAで積み立てた資金を取り崩して生活費に充てる必要が出てきます。
たとえば、老後資金の2,000万円を65歳から毎月10万円ずつ取り崩していった場合、何も運用をしなければ、81歳7ヵ月で資金が尽きます。NISAで年利3%の運用を続けながら取り崩していった場合は、88歳1ヵ月まで資産の寿命が延びます。
○老後資金2,000万円を取り崩した場合の資産寿命
このように、老後も運用を続けることで、資産の寿命を延ばすことが可能ですが、投資は想定どおりにはいかないことがあることは十分に認識しておきましょう。
~豆知識~
老後に年金が不足する場合、iDeCoや個人年金保険で補うと、これらの年金は雑所得となるため、所得税がかかる場合があります。さらに、所得に応じて社会保険料が計算されるため、所得額によっては保険料が上がる可能性もあります。
一方で、NISAの取り崩しは、所得にはならないので、税金はかからず、社会保険料が上がることもありません。運用益が非課税になるだけではない、このようなメリットも知っておくといいですね。
まとめ
投資をしないまま40歳、50歳になっても、手遅れになることはありません。新NISAなら、最短5年で非課税投資枠をフル活用できます。(ただし現実的ではありません)
もちろん、投資をしないという選択もあります。投資が必ず正解というわけではありません。大切なのは、自分の生活スタイルや価値観に合うかどうかです。
「投資を取り入れたい」と思ったら、今からでも遅くはありません。無理のない範囲で、自分のペースで資産形成を始めてみましょう。
石倉博子 いしくらひろこ ファイナンシャルプランナー(1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP認定者)。“お金について無知であることはリスクとなる”という私自身の経験と信念から、子育て期間中にFP資格を取得。実生活における“お金の教養”の重要性を感じ、生活者目線で、分かりやすく伝えることを目的として記事を執筆中。ブログ「ファイナンシャルプランナーみかりこのお金の勉強をするブログ」も運営中! この著者の記事一覧はこちら