商用車(トラック、バスなど)のカーボンニュートラル達成は実現可能なのか。いすゞ自動車は電気自動車(BEV)や燃料電池自動車(FCEV)の活用について、どのように考えているのか。
「ジャパントラックショー」はトラック業界で日本最大規模の展示会。開催は2年に1回だ。先ごろの「ジャパントラックショー2026」(2026年5月14日~16日)には、3日間で7万人近くが来場した。
いすゞは子会社のUDトラックスとともに5台のトラックを展示。ブースでは、さまざまな技術展示を展開した。さらには主催者特別講演として、常務執行役員の佐藤浩至氏が「“運ぶ”の課題解決に向けたいすゞの取り組み」というテーマで登壇。会場は早々に満席となった。当日会場に足を運ぶと大勢の聴講者が長い列を作っていて、いすゞの影響力の大きさを教えられた。
BEVとFCEV、それぞれにふさわしいシーンは
講演の内容は大きく分けて、カーボンニュートラルと自動運転についてだった。
今回はカーボンニュートラルについて紹介していくが、話を始めるにあたって佐藤氏が示したマッピングがとてもわかりやすかったことにまず感心した。
横軸は1日あたりの走行距離、縦軸は車両の総重量を示している。
「いすゞではこうしたマッピングを作りながら、それぞれのお客様の使い方に合った動力源を提案していきたいと考えています。結果的には乗用車と同じようにマルチパスウェイ、つまり電気も燃料電池も内燃機関も必要ということになります」(以下、カッコ内は佐藤常務)
BEVトラック活躍の場は身近にある
BEVについて、いすゞは2023年に小型トラックを発売しているが、この日はバッテリー交換式トラックと路線バスの説明をした。まず前者について佐藤氏は、小型トラックのユースケースごとに考えていく必要があると解説した。
例えば宅配便などの小口配送は、稼働は昼間だけだし、近場での運搬なので、バッテリー固定式のBEVで快適に使える。しかしコンビニの配送などになると、コンビニは24時間営業なので配送も24時間体制になり、充電する時間がなかなか取れない。こういった使い方にはバッテリー交換式が便利とのことだ。
「バッテリー交換式は、充電待ちがないというメリット以外にも、急速充電をしなくて済むので充電機器の導入コストを抑えられ、バッテリーの寿命を延ばせるというメリットがあると考えています」
いすゞではファミリーマート、伊藤忠商事、横浜市とともに、バッテリー交換式電気トラックを使用した実証実験を横浜市で開始した。特別仕様の「エルフEV」3台を用意して、国内で初めて、車体両側のバッテリーを一度に交換するという実証を行っている。
大型路線バスのBEV化は、エンジンやトランスミッションが不要という特徴をいかして、車体後部までフルフラットなフロアを実現できることがメリットだ。急ブレーキを掛けた際に乗客が転倒するなどの車内事故を減らすこともできる。
もちろんBEVなので、スムーズな加速や静かさというメリットもある。
水素社会と商用車の相性は?
FCEVについては大型トラックの国内における実証実験を終えていることもあって、小型トラックに関する説明となった。
「いすゞ自動車では、国内自動車メーカー5社により設立されたCJPT(コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ)を通じて、200台以上の大型燃料電池トラックの実証実験を行っています。その結果を踏まえて、トヨタ自動車と小型燃料電池トラックの共同開発を決定しました。2027年度の生産開始を目指しています」
大型路線バスのFCEVは、BEVのエルガEVをベースにする。BEVではバッテリーを積む屋根上と車体後部に水素タンクと燃料電池スタックを載せるという構造で、車内はやはりフルフラットになる。こちらは「エルガFCV」として2027年度に導入予定だ。
それでも内燃機関は生き続ける
しかしながら、大きなエネルギーを使う車両では、内燃機関が今後も続いていくことになるといすゞでは見ている。
トラックショーにも展示されていた大型トラックの新型「ギガ」では、最大限の燃料コスト削減を実現したエンジンと、伝達ロスを減らした自動変速トランスミッション「スムーサーGx」により、次世代基準の燃費性能を実現したという。
そしてカーボンニュートラル燃料については、バイオ燃料や合成燃料などがあり、開発が進んでいることを紹介。まだ価格が高めではあるものの、適切な価格で供給される時期が来ることを想定して、車両側の実証実験を進めているそうだ。
バスに関しては、いすゞの藤沢工場と近隣の駅を結ぶ通勤バスなどで、液体バイオ燃料を使った実証実験を進行中。一方、畜産糞尿由来や家庭廃棄物由来のバイオメタンをガス化して使用する実証実験も続けているとのことだ。
「燃焼のしかたは違いますので、燃焼室や燃料噴射の構造は変えなければいけないのですが、それぞれの燃料に最適化したシリンダーヘッドを作り、シリンダーブロックやオイルパンなどは共通にするという手法でマルチフューエル対応エンジンの開発を進め、コスト削減にも役立てています」
最後に佐藤氏は、カーボンニュートラルのシフティングシナリオを紹介。エネルギーの生産体制やインフラの普及状況、さらには現在も揺れ動いている国際情勢によって前後する可能性はあるものの、シーンによって適した動力源が異なるのは確かなので、どのエネルギーにもきちんと対応できるよう、マルチパスウェイで開発生産を行っていくことになると決意を述べた。
森口将之 1962年東京都出身。早稲田大学教育学部を卒業後、出版社編集部を経て、1993年にフリーランス・ジャーナリストとして独立。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員を務める。著書に『これから始まる自動運転 社会はどうなる!?』『MaaS入門 まちづくりのためのスマートモビリティ戦略』など。 この著者の記事一覧はこちら











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