日に日に感染者が増していく、新型コロナウイルスによる感染拡大。

 外出の自粛や行動範囲の制限など、普段の生活が大きく変化していく日々の中で、不安を感じる人や「コロナうつ」と呼ばれるうつ状態に陥る人も多い。


 そんな中、東京中央カウンセリングの代表で臨床心理士・公認心理師の塚越友子さんは、不安やコロナ鬱状態を回避するための方法の一つとして、「ニュースを見る時間を決めること」を挙げている。

臨床心理士が語る「ニュースを見る時間を減らすべき」理由とはの画像はこちら >>

 塚越さんによると、まず第一に、私たちにはポジティブなことよりもネガティブなことに注目する「ネガティビティバイアス」という認知の偏りがあり、一度ネガティブな情報に心が支配されると、仕事、人間関係、健康、幸福に有害な影響を及ぼしてしまうという。

 そこで、ネガティブな情報によって、混乱した気持ちから回復するためには、一定期間ネガティブな刺激のない状態が必要なのだ。

 そのための方法の1つとして、心の回復のために、ニュースで情報を得るのは朝・夜の2回など決めてしまうことが大切だという。

 そして次に、ネガティブになりすぎて、不安が高まりすぎると、その不安を抑えようと、今度は「正常性バイアス」を機能させ、たいしたことないとリスク評価を過小にするという。正常性バイアスが働くと、皆、銀座・歌舞伎町にはいかないけど、近所の商店街ならいいかと外出してしまうことに繋がっていく。

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 人は、合理的に判断できず、非合理であると証明したのは行動経済学の功績。

 今の時期、どれだけ家にいてくださいと言っても、一定数の人が甘いリスク評価で外出してしまうのにはこんなメカニズムが働いている、と塚越さんは考えるという。

 危険を察知しようとネガティビティバイアスが存在するが、危険を察知しすぎるとその不安を和らげようと正常性バイアスや楽観性バイアスが働いて、「大丈夫っしょ」と甘いリスク認知になる。

 自分で気づいている以上に、ネガティブな情報による影響を受け、ただただ感情的に行動している自分を止めるには、冷静になり、知性的な脳を取り戻す時間を持つことが大切だという。

 最後に塚越さんは、外出してはいけないといわれると、心理的リアクタンスも働く。これは禁止されればされるほど、禁止を破りたくなるという傾向である、と述べている。


 日々移り変わる状況のなかで、いち早く情報をキャッチアップしようとニュース番組をひたすらチェックしている人も多いだろう。

 しかし、情報を取り入れすぎることで自身の不安が募ったり、精神状態が追い込まれていくことにも繋がる。

 ニュースをみる頻度を1日2回にするなど、適度に情報を取り入れながら生活することも、「今、自分にできること」の一つとして自分自身や大切な人を守り抜くことだけでなく、この状況を収束させることにも繋がっていくだろう。

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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塚越 友子

臨床心理士・公認心理師・産業カウンセラー。
社会学修士号(社会心理学)、教育学修士号(臨床心理学)を持つ。


自身は、広報・PRの仕事に従事する中で過労から内蔵疾患を発症すると治療生活でうつ病を発症。その後、キャリアチェンジを余儀なくされ、身体・精神の健康とキャリアのバランスや働く人の精神的不適応と家庭のサポートについて興味を持ち、産業カウンセラーとなる。

2008年に東京中央カウンセリングを開業。
特殊なキャリアチェンジルートの経験と確かな学術的経験により、クライエントの問題状況分析と具体的な行動指針を提案。
TV、新聞、雑誌などメディアでも活躍中。