F1のハースチームを解雇されたニキータ・マゼピン(ハース提供)

 不幸な結末となった。F1に参戦するハースF1チームが5日、ロシア人ドライバーのニキータ・マゼピン(23)との契約を解消すると発表。

チームのタイトルスポンサーでマゼピンが持ち込んだロシアの肥料メーカー「ウラルカリ」との契約も打ち切ることを決めた。

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 これはロシアがウクライナに侵攻したため。国際自動車連盟は国旗や国歌などを使用しない「中立選手」の立場であれば、競技に参加できるとの方針を打ち出したが、西側諸国が経済制裁としてロシアの主要銀行との取引停止を表明。チームがスポンサー資金を調達することが難しくなったことが大きかったようだ。

 チーム側も「ハースはタイトルパートナーシップを組んでいたウラルカリとマゼピンの契約を即座に終了することを選んだ。チームはウクライナへの侵攻に衝撃を受け、悲しみに暮れている。

即座に平和的に紛争が終結することを望む」との声明を発表。シーズン開幕まで10日余りに迫っていたが、後任のドライバーと参戦資金を確保するための新たなスポンサーを探さざるを得なくなった。

 マゼピンは別の事案で既に制裁措置を受けていた。2014年のソチ五輪でロシアが組織ぐるみでドーピング隠しをしていたことが発覚。ロシアの選手は罰則として国の代表としてスポーツ競技に参加することができなくなり、マゼピンも「中立選手」となり、国旗を掲示することができなくなったのだ。チームのレーシングスーツを見てもチームメートのミック・シューマッハーは胴部に自身の名前と母国のドイツ国旗が縫い込まれているが、マゼピンの仕様は名前だけでロシア国旗はつけられていない。

ウクライナ侵攻でとばっちり ロシア人F1ドライバーのマゼピンがハースチームから解雇

フェラーリ時代のカルロス・ロイテマン(フェラーリ提供)



 マゼピンはチームの発表を受けてSNSで「自分のF1の契約が終了したと聞いて大変に落胆している。困難に陥っていることを理解はしている」などとする声明を発表。ロシアGPの中止も決まっており、ロシアのプーチン大統領の暴挙により、とばっちりを受けたことになる。

 過去にも国家間の紛争でF1シートを失ったドライバーがいる。1972~82年のF1参戦期間に通算12勝を挙げたアルゼンチン出身のカルロス・ロイテマンだ。82年に英国とアルゼンチンの間で大西洋上のフォークランド諸島の領有を巡って紛争が勃発。

その年に所属していたのは名門ウィリアムズで、アルゼンチンの英雄が紛争相手の英国のチームに所属しているわけにもいかず、開幕2戦を走った後にチームとの契約を終了してF1を去った。

 英国などではロシア人選手に対してモータースポーツイベントから排除する方針を打ち出しており、マゼピンはF1を離れた後も他のシリーズに参戦することは難しい見通しだ。プーチンを恨むしかない。

[文/中日スポーツ・鶴田真也]

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