ブロードウェイミュージカル『ジャニス』が、8月、日本人キャストにより初上演されることが決まった。ミュージカル初挑戦となるBiSHのアイナ・ジ・エンドが、主人公ジャニス・ジョプリン役を務める。
【写真】レスリー・キーが撮影! ジャニス・ジョプリンに挑戦するアイナ・ジ・エンド
1967年に音楽シーンに登場し、唯⼀無⼆の歌声で米音楽史を塗り替えながら27歳で急逝したジャニス・ジョプリン。本作では、“亡くなる1週間前の⼀夜のコンサート”をコンセプトに、ジャニスの半生を舞台化。ジャニスが自らの物語を語り、それにひも付く数々の名曲を熱唱していくだけでなく、彼女に大きな影響を与えたアレサ・フランクリン、エタ・ジェイムス、オデッタ、ニーナ・シモン、ベッシー・スミスらも登場し、共に圧巻のステージを披露する。ジャニスの魂を称える音楽の旅でありながら、同時に、ルーツとなるシンガーたちを祝福するトリビュートとなっている。
オリジナルのブロードウェイ版は2013~14年、ニューヨークのライシーアム・シアターで上演され、その後の北米ツアーも長きにわたって好評を博した。
このミュージカルにジャニス・ジョプリン役で挑むのは、ミュージカル作品初出演、初主演となり、BiSHのメンバーとしても活躍するアイナ・ジ・エンド。その他、アレサ・フランクリン役にUA、ニーナ・シモン役に浦嶋りんこ、オデッタ&ベッシー・スミス役に藤原さくら、緑黄色社会のボーカルを担当している長屋晴子がエタ・ジェイムス役にて出演。UA、藤原、長屋はアイナ・ジ・エンド同様にミュージカル初出演となる。総合プロデューサーには亀田誠治を迎える。
「中学生の時の夢はミュージカルスターだった」というアイナ・ジ・エンドは、本作出演について「もちろんいまBiSHとしてライブで自分を表現できているのはすごく幸せですけど、ミュージカルっていうのは小さい時の夢なので、うれしい、やってみたいって思いました」と語る。
また、ジャニスと自分の共通点について「知れば知るほどあるんですが、さみしがりやだったのかなって思っています。ドキュメンタリーとか、友達と電車で移動してツアー回っている映画を見たりすると、すごく楽しそうですけど、どっか空っぽな目をしていて…。
ブロードウェイミュージカル『ジャニス』は、東京国際フォーラム ホールAにて8月23・25・26日上演。
◆アイナ・ジ・エンド インタビュー
ー⻲⽥さん推薦の元、ミュージカル初主演。お気持ちお聞かせください。
⻲⽥さんが選んでくださったっていうのは、⾔葉にするのが難しいくらいうれしいですね。私、中学1年⽣から2年⽣くらいまで、ミュージカルスクールに⾏っていて、中学⽣の時の夢はミュージカルスターだったんですよ。ミュージカル「アニー」のオーディションとかも受けたくてオーディション紙書いたりしたんですけど、⽗に“お前は顔で落ちるからやめとけ”って⾔われて、オーディションを受けなかった過去があったり。宝塚歌劇団もその理由で受けなかったりしていて。だけどなんか⼩さい時から“⾃分は歌って踊る、それをステージでやりたいと思っていたので。もちろんいまBiSHとしてライブで⾃分を表現できているのはすごく幸せですけど、ミュージカルっていうのは⼩さい時の夢なので、うれしい、やってみたいって思いました。それこそ紅⽩歌合戦とか、すごい緊張感のあるステージの裏とか、どっかのライブの番組の裏とか。
ーベースを⻲⽥さんご⾃⾝で演奏しますし、その他豪華バンドメンバーとの共演。お気持ちは?
リアルに戦国時代を⽣き抜いた武将たちの集まりだと思うんですけど、あの⽅々は。
ージャニス・ジョブリンのイメージは如何でしょう?
27歳で亡くなったという割に名⾔がすごく多くて、⾃分もはっとするような⾔葉が多いです。⽣き⽅がかっこいいなーみたいなのを、めちゃくちゃ思います。「あなたはあなたの妥協したものになる」って、よくわからないけどいろんな意味に捉えられるじゃないですか。“⾃分を安売りするな”っていう意味にも聞こえるし、“あなたはあなたがしたことがすべてだから、すべてをあなたの思うようにしなさい”みたいな意味にも聞こえる。だから、まだジャニスの⾔葉の本⼼はわかってないんですけど、私は“⾃分を安売りするな”って受け取っています。
ージャニスとの共通点はありますか?
知れば知るほどあるんですが、さみしがりやだったのかなって思っています。ドキュメンタリーとか、友達と電⾞で移動してツアー回っている映画を⾒たりすると、すごく楽しそうですけど、どっか空っぽな⽬をしていて…。その時間があるからこそ、歌で発散する、だからあのソウルフルな歌が歌えているのかなって思ったりして。そこはちょっと似ているのかなって。
ーレスリ・キーさんとのビジュアル撮影は如何でしたか?
集中⼒が途切れたら終わりっていう緊張感のある撮影で、とても楽しかったです。あのテンポ感で、⾵がいっぱい当たる撮影とかも初めてで。緊張してないけど、緊張感があるみたいな。なんかこう⾃然体でいるんだけど集中⼒は必要、みたいな。初めての経験でした。波⻑が、おこがましいかもしれないですけど、合った気がします。レスリーさんが、私がなにげない仕草をしたときに、“そのままいこう”と⾔ってくださったおかげで、“あ、私このままでいいんだ”と思えたので…。さらけだしていけばいくほど、それを受け⽌めてくれたし、それに味付けをしてくれたんですよ。“もっとカメラのほう向いて”とか、“あっち向いて”と。その化学反応みたいなところがすごく楽しくて、“波⻑が合っている、今”って思ったりしました。
ー今回のビジュアル撮影を経てジャニスに近づいている実感はありますか?
おうちでジャニスのことを考えていたら、なんか辿り着く答えが全部悲しくなっちゃうんですよ、今はまだ。それがたぶんポジティブになる⽇が、いつかくると思って、家で向き合っています。今回の撮影で、メイクさんにメイクしてもらったり、⽻つけてもらったり、⾐装着せていただいたり、ライティングでかっこいい「J」っていう光を当ててもらったり。ジャニス・ジョップリンというのになったときに、あ、もしかしたらジャニスって、こんなに考えて考えて考え抜いてないのかもと。だからこそ、あんなソウルが歌えるのかも、と思ったり。
― アイナさんご本⼈について少しお聞かせください。
ダンスを4歳からやっていて、それこそ、私はダンサーとして⽣きていくんだと本当に思っていました。学校も⾏けない時期があったけど、ダンスだけは休まず通っていました。⾼校3年⽣の時、親友とカラオケに⾏った時に…、もうその⼦とは⻑い付き合いなのですが、ダンスもずっと⼀緒にやっていて、カラオケで私が歌ったら泣いてしまって、初めて“尊敬したわ”って⾔われて、“アイナは歌のほうがいいよ”って⾔われたんですよ。
でも思い返してみたら、いつも友達たちとバックダンサー・オーディション受けても、私だけ落ちるとか、⽴ち位置も思い返せばいつも⼀番端っこだったなとか。なんか同い年の⼦とかにも、“アメンボみたいな踊り⽅している”とか、ちょっとばかにされているところがあったなって。でもダンス⼤好きだしな、と悩んでいた時でした。
その親友の⾔葉があったので、歌やってみようかなと思いまして、歌のオーディション受けて、⾼校3年⽣の時に歌の舞台に⽴ったんですが、その時にステージで歌った時に、いままで“アメンボみたい”とか⾔ってた⼥の⼦たちが、終演後⾛って寄ってきてくれて、”めっちゃいいやん!みたいな。なんか私びっくりして。今までダンスで⼀⽣懸命頑張っても、誰も何も⾔ってくれなかったのに、歌を歌うだけでこんなに⼈が寄ってきてくれるんだって。そこで初めて、歌っていうのはもしかしたら⾃分にとって何かこれからの武器になるのかもしれないなって、⾼校3年⽣の時に思いました。そのときはまだ⽣きがいとかじゃないけど、⾃分の居場所がもしかしたら歌かもって思うようになりました。学校にちゃんと⾏けてなかったので。ダンスをやるしか⽣きていく⽅法がなくて。ダンスより歌が楽しいってなったら歌しかなくて。歌やるなら東京でやろうってなって。浅はかな考えだったんですけど。⼀応⼤学とかも決まってたんですけど、⺟を説得して。なんか、東京に⾏かせたくなかったみたいで、すでに⼊学⾦とかも払ってくれていて。でも、どうしても⾏きたいって。そうしたら⽗が“⾏かせたり”って⾔ってくれて。私もジャニスを調べていくなかで、これも1つの共通点だなって。⾒切り発⾞で動いてしまうところとか、結構似ているのかなと思ったりしました。ジャニスはすごくエネルギーがあって、ハスキーでパワフルってイメージがあるかもしれないけど、実はちょっと繊細でさみしがりやな⼥の⼦だったと思います。もちろん⼀⼈で夜を越えるのができなかった時もあったと思うし、うまく眠れない夜も絶対あった⼥の⼦だと思う。それは時代を超えて今もそういう⼈がたくさんいると思うし、私もそうだし。だから、時代関係なく、年齢関係なく、今⽣きている⼈たち皆が、どこか⼼にひっかかるものがあると思うので、⾒にきてほしいなって思います。
ー影響を受けたアーティストはいらっしゃいますか?
初めてCDを買ったのがYUIさんとかBUMP OF CHICKENとか。もうそれこそギター弾いて歌うみたいなバンドが好きだったり。でも4歳からダンスをやっていたので、だれがアーティストかわからないけど英語の歌で踊るっていう習慣がずっとついていて。⼤⼈になってからビョークが好きだったり、なんか、いっぱいいて…。だからその時々違うんですよね。難しいですね。
最近は、レコードが好きで、本当にお導き系かなって思うくらい、ジャニスをやるってなってから、60年代の、それこそジム・モリソンとか…。なんか知る機会が多くて、60年代の⾳楽を。本当に運命なのかなって思っちゃうくらい多くて。もちろんジャニスと同じ時期に⽣きていたバンドを聞いてみたり、そのほかにはジャケ買いしてます。だから、ジャニスが決まってから、わりとジャケットで選んでレコードを買ったりしてます。
ほんとに全然わかんないジャズのサックスの⼈とか買っちゃいます。
サム・クックとかチャック・ベリーがジョン・レノンを好きだったのかな。
60年代の⼈たちが好きだった、憧れていた⾳楽を最近はレコードで集めたいなと思って、ずっと探してます。
ー今回の共演者とパフォーマンスする意気込みは?※アレサ・フランクリン役:UA、ニーナ・シモン役:浦嶋りんこ、オデッタ&ベッシー・スミス役:藤原さくら、エタ・ジェイムス:⻑屋晴⼦(緑⻩⾊社会)
⾃分⼀⼈で夜にジャニスのことを考えていると、ぼんやりしてきちゃうんですよね。ぼんやりして体だけが熱くなっていっちゃって。不思議な感覚になっちゃうんですよね、今。たぶんそれって、⾃分で気づいていないだけで、もしかしたら、これをプレッシャーっていうのかなとか、思ったりしてて。でもその時にぱっと思いつくのがそのキャストの⽅々で。“⼤丈夫だ、UAさんがいる”とか。“⼤丈夫だ、晴ちゃんがいる”とか。なんかこう⾃分1⼈で踏ん張らなくても、すばらしいキャストの⽅々がいるから、気負わずみなさんで作り上げていこうって⾃分に⾔い聞かせてて。きっとジャニスってそんなに気負った性格してなさそうな気もするんで。楽しみにしておこうと思っています。
ジャニスに“あなたのやることがあなたのすべて” みたいに⾔われてる気がするので、精⼀杯やりきりたいと思います。
<UA コメント>
・初のミュージカル出演に対する意気込みや思い
とにかく楽しみでなりません。昨今の映画などのメジャーなシーンでは、ミュージカルや⾳楽をテーマにしたものが勢いを持っていて、⼤衆が歌を強く求めていることを感じます。
この最もパワフルなDIVA達の物語は2022年、⽇本の夏に熱いニューウェイブを巻き起こすことになると思います。
・ブロードウェイ版を⾒て感じたこと
伝説の⼥性達を描きながら、とても親近感のあるところが好きです。キャスト、スタッフともに、DIVA達への敬意と⾳楽の⼒を信じているのがダイレクトに伝わります。特にMary Bridget Davis 演じるJANISの⽣き写しのような歌唱⼒には驚愕しました。
・ご⾃⾝の役について(どのように役を演じるか、歌っていきたいか)
私が、⼈前で歌を歌いたいと思えるようになったのは、JANISとARETHAを知ったことからでした。
そしてARETHAの曲を歌っていた時にスカウトされたのがデビューのきっかけです。
今回この⼤役のお話をいただいたことに運命の不思議を感じています。ARETHAに並ぶことは不可能なので、全⾝全霊で取り組むほかないです。
<浦嶋りんこコメント>
・ブロードウェイ版を⾒て感じたこと
すごい衝撃でした!!
「ジャニスを演じる?!どうやって?!」
この疑問はジャニス役メアリー・ブリジット・デイヴィスの第⼀声を聞いて吹き⾶びました。
⼥優がジャニスを演じて、歌う。これはブロードウェイにしか出来ないことでしょう。
「⽣」でオーディエンスに歌を聞かせる!これぞジャニスが貫いてきた⽣き様だと感じ、⽇本版をどのように創り上げるのか!
今から、激しく気を引き締めています!
・ご⾃⾝の役について(どのように役を演じるか、歌っていきたいか)
私は、ブルースシンガーであり、コーラスであり、ニーナ・シモン役でもあります。
舞台ならではの構成は、限られた⼈数で様々なキャラクターを「⾒せる」ことでこれは演者の⼒量が試される構成とも⾔え、腕が鳴るか、ガクブルのどちらかですが、後者にならないよう強⼒な歌い⼿の皆様と、このステージでPowerとColorそしてDeepな⼈間性が「⾒える」ようしっかり努めていきたいと思います!
<藤原さくらコメント>
・初のミュージカル出演に対する意気込みや思い
ミュージカルは初挑戦なのですが、⻲⽥さんや、スタッフさん⽅の熱意、そして素敵な共演者の皆様に、何よりもまずワクワクしています。それもレジェンド、ジャニスの物語!
わたし⾃⾝、当時の⾳楽にも影響を受けて育ったこともあって、誠⼼誠意向き合って皆さんに⾳楽の素敵な連鎖を届けられたらと思います。
・ブロードウェイ版を⾒て感じたこと
⾳楽を遡り辿っていく上で、ジャニスジョップリンは避けて通れないアーティストです。
メアリー・ブリジット・デイヴィスのソウルフルな歌声、そして観客に問いかけるラップにも通じるMC、ジャニスがステージの上でまだ⽣きている、と感じました。
今を⽣きる私たちがまたジャニスに会える夢のような経験です。
・ご⾃⾝の役について(どのように役を演じるか、歌っていきたいか)
わたしが演じるのはオデッタ、そしてベッシー・スミス。⼆⼈とも、⼀⾔では語り尽くせない壮絶な⼈⽣を⽣きたブルースシンガーであり、ジャニスジョップリンを始め、たくさんのアーティストに影響を与えてきた⽅々です。真似るのではなく、彼⼥たちがあの時代、ブルースを歌った意味と向き合いながら演じていきたいです。
<⻑屋晴⼦コメント>
・初のミュージカル出演に対する意気込みや思い
幼い頃から“歌”が⼤好きで、たくさん“歌”と向き合ってきましたが、ミュージカルにおいての“歌”というものは、まだまだ私の知らない“歌”の世界。鑑賞する側だった私がこれまで感じてきたこと、演じる側になった私がこれから感じること。きっとそれぞれが違うからこそ、⾃分の世界が広がっていく感覚を味わえると思います。初めてだからこその課題も多くあると思います。その度に向き合って⾃分らしい表現⽅法を⾒つけ出していきたいです。⾝体全体、私全体を使って、魅せられるよう精⼀杯取り組みます。
・ブロードウェイ版を⾒て感じたこと
⾃然と様々な感情を引き出されている⾃分がいました。それくらい、感情豊かな、ソウルフルなステージでした。感じたことのない迫⼒に、⽣であのステージを観ていたらどうなっていたのだろうと思うくらい。⾳楽に壁はないということ。⾳楽は、魂は、⼈の⼼を動かすということ。痛感させられました。ジャニスの魅⼒に触れながら、アメリカの⾳楽史にも触れることができるこの作品は、ジャニスの⾳楽をリアルタイムで聴いていた⽅にはもちろん、そうでない⽅にも、より多くの⽅に触れてほしい作品です。
・ご⾃⾝の役について(どのように役を演じるか、歌っていきたいか)
今回私は、エタ・ジェイムス役を演じさせていただきます。エタは、⼒強く凛とした⼥性というイメージがあります。歌っている姿も堂々として、⽿だけではなく⽬までもが奪われてしまいます。
当時の彼⼥の⾳楽への気持ちや姿勢を完全に理解することは叶いませんが、私なりに理解を深めた彼⼥の歌を届けたいと思っています。⼒強くパワフルに、芯のある歌を、胸を張って届けたいです。そして何よりも、その場で鳴る⾳楽を肌で感じ、⾝体全体で楽しみたいです。