ディズニープラスにて独占配信がスタートしたオリジナルドラマシリーズ『シコふんじゃった!』。ひょんなことから廃部寸前の弱小相撲部に入部することになった大学4年生の亮太と、相撲部で孤軍奮闘する女性部員・穂香、そして個性豊かな新入部員たちが繰り広げるドラマは、笑いあり感動ありの胸アツ青春コメディに仕上がった。

本作で亮太役を務める葉山奨之と穂香役の伊原六花が、数ヵ月前からハードな練習を積んで臨んだ作品への熱い思いを語った。

【写真】撮影中も笑顔が絶えなかった葉山奨之&伊原六花 撮り下ろしショット

■オーディションで勝ち取った主役 葉山「出会うべくして出会った作品」

 1992年に周防正行監督が手掛けた映画『シコふんじゃった。』は、日本アカデミー賞最優秀作品賞をはじめ監督賞、脚本賞、主演男優賞、助演男優賞で最優秀賞を獲得するなど、高い評価を受けた。あれから30年、またもや廃部の危機に陥った教立大学相撲部を舞台に、令和の時代ならではの時事的な問題を内在しつつ、まったく新しいスポ根ドラマが世に送り出された。

――お2人ともオーディションで役を勝ち取ったとお聞きしましたが、そのときのことを振り返ってください。

葉山:オーディション用のA4の台本を読んだとき、亮太というキャラクターが頭にぱっとイメージできたんです。これまで俳優の仕事をしてきた中で、そんなことは初めてでした。そのとき「もうこれは絶対自分がやるんだ。出会うべくして出会った作品だ」という謎の自信が沸いてきたんです。

伊原:私はオーディションのとき四股を踏むというのは聞いていました。でも相撲の四股というものがどういうものかは知っていても、実際やり方はまったく意識していなかったので、いただいた動画を見て研究しました。そのとき「相撲って面白いかも」と感じたので、役として作品に関われたらいいなという思いが強くなりました。
受かったと聞いたときはとてもうれしかったです。

■ 初共演の印象 葉山「クールだと思ったら明るくてチャーミング」 伊原「みんなに愛される方」

――ドラマを観ていると、相撲のシーンは本格的で、かなりのトレーニングを積んで臨んだのではと思いました。

葉山:六花ちゃんと2人で基礎から2ヵ月間ぐらいみっちり稽古しました。四股、すり足、鉄砲、股割り…リアルに大相撲の力士さんが毎日やっていらっしゃるトレーニングばかりでした。こうした基本的なことができないと作品としてのリアリティがないし、成立しないと思ったので。どれだけ相撲の動作を自分の身体に落とし込めるかが、今回のテーマでした。

――股割りはきついと聞きますが…。

葉山:僕は身体が硬い方なのでかなりきつかったです。相撲の先生が100kgぐらいある方で、上から乗っかられるんです。僕は嫌だったので、毎日お風呂上りにかなり柔軟体操をして、何とか乗られないように頑張っていました(笑)。でもあまり股割りのシーンって作品の中にないんですよね。僕とは正反対で、六花ちゃんは赤ちゃんのときから身体が柔らかいらしく、全然平気そうだったよね(笑)。


伊原:股割りはそれほど苦労しなかったのですが、一度の稽古で四股は100回以上踏んでいたので、最初は身体がプルプルしてしまって、全然うまくできませんでした。でも稽古するとできるようになるもので、後半には割と100回とかは平気でこなせるようになりました。あと私は上半身がヒョロヒョロだったので、撮影には筋肉と脂肪をつけて臨みました。

――お2人は本作が初共演だと思いますが、どんな印象を持ちましたか?

葉山:最初六花ちゃんはクールな人かなと思っていたので、僕としては撮影の3ヵ月間で、「1日1回六花ちゃんを笑わせる」というミッションを自分に課していたんです。でも実際はとても明るくチャーミングだったので、アッという間にミッションはクリアしてしまいました(笑)。すごくエネルギッシュで、きついときにも支えになってくれました。

伊原:葉山さんは稽古から入れると丸5ヵ月ぐらいずっと一緒に過ごしましたが、最初からとても気さくで、みんなに愛されている方でした。とても真ん中が似合う方だなという印象です。この現場はアドリブが結構多かったのですが、葉山さんのフレンドリーな人柄があったからこそなんだろうなと思います。最初から最後まで変わらず、ずっと素敵な方でした。

竹中直人ら“強烈なOBたち”と競演 伊原「笑いをこらえるのが大変」

――とても個性的な相撲部のメンバーでしたが、30年前の『シコふんじゃった。』に出演していた竹中直人さん、清水美砂さんらOB・OGたちの登場も作品の見どころですね。


葉山:映画に出られていた登場人物の方と作品を共にする機会はなかなかない経験で、とても不思議でした。しかも、当時と全然変わらないテンションで、正直僕らよりもOBの皆さんの方が若い(笑)。「うわー映画のキャラクターだ!」と思いながらも、ちゃんと芝居で返さねばなりません。とんでもないエネルギーを放出されていたので、僕らも負けないようにという思いは強かったです。

――やはり竹中さんが強烈でしたか?

葉山:もちろん竹中さんもすごかったのですが、田口浩正さんも、六平直政さんも、柄本明さんらほかの方も強烈でした(笑)。こってり系ラーメンのような感じ。僕らも、新しいこってり系ラーメンを作るんだ! みたいな気持ちで頑張っていました。

伊原:私が演じた穂香は、(竹中演じる)青木先生を崇拝している役だったので、実際に内無双を見ることができたときは、涙が出そうになりました。竹中さんも六平さんも、本当に自由にお芝居をされるので、笑いをこらえるのも大変でした。青木さんはお腹が弱いキャラクターですが、お腹をくだすシーンが少ないからと言って、いろいろなところでそのシーンを足していくんですよ(笑)。

葉山:「若手が(アドリブを)返してこないな」と思われたくないので、こちらもかなり必死でしたね。

――お2人の注目シーンを教えてください。


葉山:第1話に出てくる亮太と穂香の十番勝負ですかね。

伊原:一番時間をかけたシーンですし、穂香が圧勝するのですが、そこで亮太のギアが1つ上がるところでもあるので、とても大切に取り組みました。あのシーンで「意外と相撲のシーンもいけるじゃん」って思ってもらえないと…という思いは強かったです。

――男性を豪快に投げ飛ばすシーンは迫力がありました。

伊原:でも倒れる方が難しいと思うんです。葉山さんがとても上手に投げられてくださったので、かなり思い切りやれました。

葉山:僕だけではなくアクション部の方や指導の先生などにもいろいろ教えていただきました。本当にあれだけ思い切り投げられたら、いまここに僕はいないですから(笑)。受け身の練習は結構しました。

――合宿シーンも青春という感じで作品に彩りを添えていますね。

葉山:亮太と穂香が2人で自転車に乗るシーンがあるのですが、あそこはかなりの1カット長回しでの撮影だったんです。本当に緊張感があるなか、シーンを撮り切ることにかなり集中して必死に臨みました。


伊原:私も合宿編はとても印象に残っています。みんなでバーベキューしたり、花火をしたり、大変だった撮影のご褒美みたいな時間でもありました。でも、あの自転車のシーンは本当に緊張感がありましたね。撮影が終わったあと、やり切った感がすごかったです。

■ 若者になじみのない“スポ根”のおもしろさを伝えたい

――穂香は青木先生の著書をバイブルのように大切にしていましたが、お2人にとって心の寄りどころにしているような大切なものはありますか。

伊原:履けなくなったダンスシューズやバレエシューズは、結構長く持っていました。破れて新しいものを買うのですが、ボロボロになるまで練習した証というか、それを見ていると頑張れる気がしたので、大切にしていました。

葉山:なんだろうな、あまりそういうものはないかな。僕が大切にしているのはモノというよりは、自分の直感ですね。子どものころから何か判断するとき、結構自分の直感を大切にしています。先ほども話しましたが、この作品のオーディションも直感的に「やってみたい、やれる」と感じたんです。自分の感覚は、これからも大切にしていきたいです。


――若い人にはあまりなじみのない相撲という伝統の面白さが伝わる作品でした。自分はハマっているけれど、なかなか一般的に伝わっていないなと感じるものはありますか。

伊原:私めちゃくちゃあります! いま自分がハマっていて、なかなか友達などに伝わらないのが「丁寧な暮らし」です。例えば盆栽を育てたり、南部鉄器で沸かしたお湯で朝から豆を挽いてコーヒーを飲んだり…。そういうことで心が穏やかになれるのですが「誰だれの器見に行こう!」と言っても、友達は口がぽかんとなったりするんです。それは伝えていきたいですね。

葉山:この作品もそうなのですが、スポ根のおもしろさを伝えたいですね。それこそ30年前の『シコふんじゃった。』もとても斬新な作品だったと思うのですが、いまはスポ根という言葉自体、ピンとこない人もいると思うんです。でも観たら身体が熱くなる。そんな面白さを多くの人に伝えたいですね。(取材・文:磯部正和 写真:高野広美)

 ドラマ『シコふんじゃった!』は、ディズニープラスで独占配信中。

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